1987-01-01から1年間の記事一覧

十二月

▼交通事情にもよることだろうが運送馬車がよく通った時代とは違い、馬の顔はこのところ見ない。観光客のために一定距離を往復する馬車が喜ばれている土地のことを、ちょっと小耳にはさんだくらいである。 ▼何に驚いたか、運送車をつけたままで走って来る馬の…

十二月

幾条の時雨帳幄に夢興す 狼煙継ぐ山の屯の息使い 色好みむんずととらえたる灯り なりふりは群を抜くべく鞘払う 莞爾たり濡れ手拭を現るる 女武者震い南瓜どっかと座り 神祇仏事宿らばいつか安まり来 抜け穴をぬっと雑兵童顔か 掌握は成らで颯々垣めぐらせ も…

五三七号(昭和六十二年12月号)

題字 斎藤昌三 表紙 いい子たちよ 石曽根隆実 カット 丸山太郎建碑始末記 吉江義雄 (1) 柳多留二十九篇(十) (4) 信濃の狂歌(四十三)【四十二】 浅岡修一 (9) 1.楽魚亭水哉(その4) 課題「片道」 小泉友義選 (14) 「ゆるい」 上条義郎選…

十一月

▼大凡、松本駅の乗り降りは東口が多いが、この頃西口を利用する人も出て来た。北アルプスが眼前にひろがる地帯、いち早く四季のうつろいの彩りを伝えてくれる。このところ高速道路改修で目覚ましい様相転移をつづけつつある。 ▼ほど近く長野県松本合同庁舎を…

十一月

ビニール袋の空き缶たちのうめき声 わくら葉の濃い黄まざまざひろがり来 盃の薬のうたを聴いてやる 頬冠り隠士折々くしやみして 一生一木小さきものの囁きよ 辛抱の強さと擬せし老来で 老少不定くせ球 見えぬ手にまかせ 限りある際にどよめくのは味方 有終の…

五三六号(昭和六十二年11月号)

題字 斎藤昌三 表紙 めでたしめでたし 石曽根隆実 カット 丸山太郎郷愁の街角 下平満 (1) 〜中信演劇連盟〜 柳多留二十九篇輪講(九) (5) 信濃の狂歌(四十一) 浅岡修一 (10) 【1.楽魚亭水哉(その3)】 雑詠 大空 石曽根民郎選 (15) 山…

十月

▼公民館運動の一翼として、川柳句会を毎月開催し八年有余になるが、川柳山ぐにグループの面々は高校の先生、元警察署長、元小学校長、女性は殆んど未亡人、なかには再婚し別世帯の人もある。 ▼十月二十一日、今夜はいつもの松本市中央公民館の会場と様子が違…

十月

とき長けてひと癖ふた癖は消える 諺のいくつ湧かせて身のこなし 山秀で小なるわれを相容れる 高い山低い山かくも劣らず 名月を拾い得て老いに漬かるや 散りしきる枯葉まともに生きて来た ためらわず秋は濃きものみな本気 冠雪の山に向くひしと磨くか 夜の雨…

五三五号(昭和六十二年10月号)

題字 斎藤昌三 表紙 これはうまいぞ 石曽根隆実 カット 丸山太郎信濃雑俳書解題 矢羽勝幸 (1) (二五)石尊奉納雑俳集 雑詠 大空 石曽根民郎選 (12) 山彦集 同人吟 (19) 柳多留廿七篇【二十九篇】輪講(八) (21) 課題「酔」 岩井汗青選 (2…

九月

▼床屋はあまり行かない。頭髪がうすくなり、必要がなくなったせいである。それをいいことに無精しているといった方が正直か。 ▼幼いとき行き付けの床屋があり頭を刈ったあと頬や顎を剃ってゆくうち、喉のところへ来ると決まったようにくすぐる。ご機嫌とりか…

九月

誰遅れまいとその顔並べたか 考えの違う流れが時を孕み 太り過ぎ食欲はまだ黙らない うっすらと伸びた髭だがどう見てる ぶよぶよな害虫昼寝きょうも倒し 事ここに到るけじめの性懲りな 昏れてゆく自分摑めてどっこいしょ 切り捨てるべきを心得余生たり 生き…

五三四号(昭和六十二年9月号)

題字 斎藤昌三 表紙 みんな一緒 石曽根隆実 カット 丸山太郎「兎・猿」など 多田光 (1) 柳多留二十九篇輪講(七) (7) 信濃の狂歌(三十九) 浅岡修一 (12) 【(三)上田・小県地方の狂歌】 【1.楽魚亭水哉】 句評 証 土田貞夫 (18) 課題「…

八月

▼去年蒔き残した種袋を見つけて何となく鉢いくつかに分け育てようと考えた。ひょろひょろ細長い蔓が延び、安定の支え棒に巻きつくようにしてやったら、機嫌よく身をくねらせた。 ▼古い鉢にあるものへも、万遍なく水をやることが好きだから、一しょになってす…

八月

末よかれしと譲る気淡かれや 底抜けの明るさのみで終わらせぬ 凛として凧合戦の夏を占め 何食わぬ顔のほてりに蚊がためす 戦こそイケマセン語尾はねた問い 核廃絶ふたつ分かれて暑い最中 世の動き名札たしかな揺れとなる 好き好きに試行錯誤の毛臑なれ 老熟…

五三三号(昭和六十二年8月号)

題字 斎藤昌三 表紙 実りいっぱい 石曽根隆実 カット 丸山太郎銭形平次の投げ銭 阿達義雄 (1) 柳多留二十九篇輪講(六) (5) 信濃の狂歌(三十八) 浅岡修一 (10) (ヘ)長土呂地区 【216〜218 純辺館紀長人】 雑詠 大空 石曽根民郎選 (1…

七月

▼また部屋を変えて、三階から二階に移った。小さなビルをこしらえてから、テナントに入ってもらったり、空いている部屋を展覧会に貸したりしてやり繰りに供した。 ▼ここに住居をかまえてから八十有余年になる。もともと武家屋敷だったこの町筋は、維新のとき…

七月

衰えを口に休まる思いとか さりげなくいのち拾いを得て つつましく齢の祭りの宥め合い 笹舟のほどよさ泛ぶ目にしるく 生きてればこその記憶を大事がる 沈静化民意の彩のひたぶるに 呼び覚ます疼きふつふつ意を糾し 婉曲に咎められての綱渡り 杳かなる加害直…

五三二号(昭和六十二年7月号)

題字 斎藤昌三 表紙 夏の夜の彩り 石曽根隆実 カット 丸山太郎幡隆上人の槍ヶ岳開山 古藤義雄 (1) 信濃の狂歌(三十七) 浅岡修一 (10) 【(フ)小諸地区(その3)】 【207〜215 森稲亭守人、君舟亭水臣、他】 柳多留二十九篇【輪講】(五) …

六月

▼初めは修那羅峠を案内して貰って、その近くの旅籠屋に一泊しようという話が出た。小県郡青木村と東筑摩郡坂井村の境にあるこの峠は幾百という石神や石仏が立ち並んでいるところで名高い。 ▼それがどういう風の吹き回しか秋の行楽に繰り延べして、鹿教湯(か…

六月

朝まだき目覚めを得ての問わず語り とどめたき想いの底のいぶし銀 ツンとする出会い頭のほんの芸 凛々しかり一幕物と添寝する よしそれで通じなくとも並び合い 大樹小樹調べ相享け熾んなる お互いに死のひらめきの真正直 鶴の子よ亀の子よ汝が持つゆくえ 足…

五三一号(昭和六十二年6月号)

題字 斎藤昌三 表紙 履きごここち 石曽根隆実 カット 丸山太郎みかの原 乞食の下駄 花咲一男 (1) 一句観賞 節秀夫 (3) 信濃の狂歌(三十六) 浅岡修一 (6) 【(フ)小諸地区(その2)】 【200〜206 森倉亭里住、遊人亭永居、他】 柳多留二十…

五月

▼大相撲夏場所の話となった。私はせいぜい夜七時ニュースのスポーツ時間で披露される、一番か二番の取組みの健闘振りをやっと観るだけだが、相手は午後三時放映に始まって結びまで大いに娯しむと言う。 ▼どうもこうなると処置なしで、ただ黙っているより仕方…

五月

ねんごろの言葉が返る痛みとか 気まぐれの域を出たがる腕まくり 助かろうとはしないかかる道筋 そそくさとめしの時間との絡み 得たる知己この齢にして目覚めゆく 盗聴のいやしき狎れを厚くする 死刑囚仆れ未完画は遺すべく 射つむごさ閉ざされし世の憤り こ…

五三〇号(昭和六十二年5月号)

題字 斎藤昌三 表紙 笑ませ給え 石曽根隆実 カット 丸山太郎郷愁の街角 下平満 (1) 鷺沢次郎と戦後の社会【教育】活動 信濃の狂歌(三十五) 浅岡修一 (10) (ハ)―(フ)御代田、小原、小諸地区 【185〜199 牧涼居滝近、糖塚亭倉人、他】 柳多…

四月

▼間違いはあるまいと思っていたが、さすが人望の高い噂そのまま悠々と県議会議員に当選されたので、早々ご母堂に祝意を表したら、お蔭でまた四年間県政のため尽くすことになり、大方のお声援を頼むとお電話があった。 ▼句会吟は毎月投稿しているが、ご子息の…

四月

わが胸にまた戻るべき筋ながら 接点の行方を生かしたく火花 見せたくはない弱まりの影拾う 老春のもやもやめ摑めない淡さ ニセ札の共犯の顔修正せず からっきし喫えないだけに尖んがらず 愛玩のパイプ煙管のノスタルジー 意識して紫煙が伸びる世とぞなり お…

五二九号(昭和六十二年4月号)

題字 斎藤昌三 表紙 いっしょの道 石曽根隆実 カット 丸山太郎柳多留二十九篇輪講(二) (1) 信濃の狂歌(三十四) 浅岡修一 (6) 【(ノ)安原地区】 【179〜184 佐久唯仲、筑理常豊、他】 竹内伊佐緒追悼 (11) 九五郎、典夫、由子、鶴甲、…

三月

▼横浜の馴染みの誌友からお便りがあり、デパートの古書展で、私の「川柳の話」(五十円)を千円で求めたと言う。初心者向けで気軽に書いた小冊子だが、昭和二十二年発行、その後版を重ねること幾たび、よく捌けた。気を好くして昭和二十八年「川柳手ほどき」…

三月

眼福を肥やす残んの日照り雨 ぶきっちょの拍手あたり誰もいず ゆるやかな真夜のいばりにもたれかけ 身に覚えあってぽとぽと濡れ初め 泥まみれ得意のわざをいつ出すか 混迷の度に乗っかって鞭揮う 懊悩のゆさぶり水のひと味に 覚束な思いのたけのなかばする …

五二八号(昭和六十二年3月号)

題字 斎藤昌三 表紙 二人にっこり 石曽根隆実 カット 丸山太郎信濃雑俳解題 矢羽勝幸 (1) (二四)蚕影山奉納前句高点集 信濃の狂歌(三十三) 浅岡修一 (5) (ト)―(ネ)竹田、沓沢、野沢、高野、耳取地区 165―178 竹林亭節成、盛盈亭木数、他…