1992-01-01から1年間の記事一覧

十二月

曽根とか中曽根は聞くが、君の姓はあまり通用せぬねと言われるほど、電話帳を繙いてもごく僅かしか見当たらない。中信地方を調べたら、南安曇郡三郷村と松本にどちらも二十数軒ある。 中曽根首相 風見鶏アメリカ向けば 尾はソ連 晴美 の時事川柳があるが、ど…

十二月

貰い酒ものの見事な仁侠で正体の既にのけぞる修羅の舞い拾う齢近き静夜のいつか雪巣籠りの老いのくりごとあやにくやもろく潰えてひたすらな合掌よ年の瀬の重く軽くこだわってありていに行きつくがごとヘアの沙汰背の高い真面目な億の咳払い人は善なりと説く…

五九七号(平成四年12月号)

題字 斎藤昌三 表紙画・カット 丸山太郎 安達義雄先生の思い出 浅岡修一 川柳評明和八年万句合輪講(二十) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 本誌主要記事摘録(二十七) 課題「内容」 浅井由子選選【ママ】 「戻る」 一ノ瀬春雄選 十一月句会【宿題「…

十一月

常念岳は二八五七M、槍ヶ岳はひとつ向こうの尾根で少し離れているから、小さく見えても三一八〇Mの偉容を誇る。私の住んでいる近くの松本城を前景にした眺めはまた格別だ。 国宝松本城へのメーンストリートでもある大名町通りで、この程装いも新たに歩道を…

十一月

ふさわしい風景だけに容れておく重く軽く果ての姿の向き向きに性典に加わるエイズはにかまず妙技目に熱く敗れる日もあって税金展民意に添うた鐘鳴らす晩節をただすにちっぽけな盃愚に返る自分らしさを拾うとき過ちを謝す責めと鞭金縛り償いのいくつかぞえて…

五九六号(平成四年11月号)

題字 斎藤昌三 表紙画・カット 丸山太郎 川柳評明和八年万句合輪講(十九) 神沢杜口の墓 室山三郎 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 信濃の狂歌(九十五)【五、松本地方(11)】 浅岡修一 本誌主要記事摘録(二十七) 課題「住宅」 吉江義雄選 「ゆる…

十月

におとか、 にほとかいう聞き馴れない言葉がある。それを題にした油絵をいま事務室に架けて、気がついた来客には説明している。 遠くに常念岳を望み、安曇平が広がる。刈り取った稲藁が積み重ねられ薄陽ほんのり、晩秋風景。 淡彩をモチーフにしたと思われる…

十月

きつい坂ゆるい坂またよく読むよ検察の依怙に草の根ならずとも忌まわしき世相にせめて栗御飯複数の義憤をかもす何か在る刎頚の友を断ずる言葉遣い心霊の摩訶こだわるか拭うのかへなへなと座るでもなくまとめ役お互いに許し識るべくもみ消さじきよめ塩こころ…

五九五号(平成四年10月号)

題字 斎藤昌三 表紙画 石曽根正勝 落語に現れた川柳 下須野後爺 信濃の狂歌(九十四)【五、松本地方(10)】 浅岡修一 川柳評明和八年万句合輪講(十八) 本誌主要記事摘録(二十六) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 課題「宣伝」 小松耕吉選 「隠す…

九月

昨年に引きつづき要請があった信大人文学部非常勤講師として、七月二十七日、県歌「信濃の国」のコピーを聴講生に配布した。殆どが他県より遊学している諸君だから、尚更覚えて欲しいと言い足す。 県歌のなかで詠まれている人物地名のいくつかが、古川柳にあ…

九月

生きかたが違う小なれば熟睡す政界の腐敗朝顔ツンと咲く内憂と外患更に怒鳴ってる凡庸の及び難きを羽つくろい入歯はずし草臥れ顔の闇なるぞ天変地異生き長らえば殊更に名乗り合う老いのすさびの同じくて省察の澄む目が欲しく越えて来た一生を飾るに遅き芽を…

五九四号(平成四年9月号)

題字 斎藤昌三 表紙画 石曽根正勝 一茶の句と雑俳 多田光 信濃の狂歌(九十三)【五、松本地方(9)】 浅岡修一 川柳評明和八年万句合輪講(十七) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 課題「遠い」 所典夫選 「目」 上条義郎選 本誌主要記事摘録(二十五…

八月

毎月各地から僚誌をいただいている。ぐっと部厚いページ数の多い有力誌にはただただ頭が下がる。 表紙の数度刷りの豪華さ、きちんと特色の顔が出来ている実質さみんな一所懸命だなと敬意を表しおのれのちっぽけさが恥ずかしくなり、何とか内容に斬新味を出そ…

八月

オリンピック負託こもごも火を鎮めめぐりあうために生きてた振りをして手の内をのぞかせ仮面足り得るか償いの言質糾すいくさの忌老いに克つ瑞々しさにほど遠く向き向きにおんなじことがまた冴える自分との闘い花も色を濃く音ひそめ過ぎゆくもののことわりよ…

五九三号(平成四年8月号)

題字 斎藤昌三 表紙画 石曽根正勝 祖父直談抄 石川一郎 信濃の狂歌(九十二)【五、松本地方(8)】 浅岡修一 川柳評明和八年万句合輪講(十六) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 課題「寺」【「社」】 吉江豊選 「社」【「寺」】 寺沢なおみ選 本誌主…

七月

金沢の安川久留美を知っていた阪田風谷は、数年松本に滞在したことがあり、交友関係の深いところから、井上剣花坊もちょいちょい訪ねて来た。 早速川柳座談会を催す筈だったが雨天で集まる者も少なく、まだ当地に川柳作家がいなかったため講演では川柳と狂歌…

七月

名を惜しみときの刻みは正しくてさがす手とすがる手が合う世の隅で向き向きにおんなじことを言いも得てこと金によごれの深さ伏せて去に悪の華着崩れもろく時を負うこつこつと民意にかなう歩みこそ長寿値におもねる首を少し振り生きの間の本気なにやら吾なり…

五九二号(平成四年7月号)

題字 斎藤昌三 表紙 顔 石曽根隆実 地獄の戦場沖縄を想う 東野大八 柳多留二十九篇輪講(六十三)【最終回 あとがき】 本誌主要記事摘録(二十二) 信濃の狂歌(九十一)【五、松本地方(7)】 浅岡修一 川柳評明和八年万句合輪講(十五) 雑詠 大空 石曽根…

六月

四季の子供をコマ絵にして、私製はがきに印刷してあるのをお便りにいただくが、佐藤米次郎さんらしく、津軽弁とでもいうのか、 夏になれば水コぬくまって どじょうッコだの ふなッコだの 湯コさ入ッたと 思うべな が添えられ、虫捕りの網袋を肩に、犬が戯れ…

六月

かばかりの先立つ思い鎮むとき人の遅れをさげすまず細い雨ほどほどに雌伏の翼洗うのか疲れてる寝顔は闇に吸わせたく開かんと言葉をひとつずつさがす通暁の一面ひとのよさ軽くみな愛に通ずる挿話かくまでにずっこけて仕事半分暇半分それとなく老いの障りの憩…

五九一号(平成四年6月号)

題字 斎藤昌三 表紙 撃つ 石曽根隆実 洒落について 福井杏子 川柳の魅力 宮坂明子 吉原瞥見 本田友紀子 信濃の狂歌(九十)【五、松本地方(6)】 浅岡修一 柳多留二十九篇輪講(六十二) 川柳評明和八年万句合輪講(十四) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 …

五月

戦争の終わる一ヶ月前に強制疎開の憂き目に遭い、期限ぎりぎりやっと説得して、母親をリヤカーに乗せてわが家と別れた。家族たちはとぼとぼ歩いて連れ添った。 それから立ち直るまで、しばらく僅かに取り壊しをまぬがれた三階建ての土蔵で過ごす。 家をぶっ…

五月

ほんとうの顔をさらしにゆく極意なぐさめが欲しく頑丈な人に会う仲よくて鶴と亀との譲り合いいのち抱く小さき湖のひとり言ぼた餅が笑っているぞまたも留守山国にトロの振る舞いいさぎよしあやにくや問い足らずして寝入りゆくいつかある潰えのうたを耳底にた…

五九〇号(平成四年5月号)

題字 斎藤昌三 表紙 猛進 石曽根隆実 川柳が持つ味 鈴木優子 ひとつの鑑賞 真脇咲 信濃の狂歌(八十九)【五、松本地方(5)】 浅岡修一 柳多留二十九篇輪講(六十一) 川柳評明和八年万句合輪講(十三) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 岩井汗青さん…

四月

「江戸名所張交(はりまぜ)図絵」の版木が五十三枚もアメリカで見つかった。安藤広重の描いた浮世絵であるが、その一部と思われるけれど、伊場屋仙次郎版という十二枚は、東海銀行貨幣資料館蔵の図録のなかにあるのを見たことがある。 図柄の違った数種が一…

四月

温情を示すひと言怠らじ埒外に触れ同病を篤くする差し合える一期一会のきざみとや念願の砦にいつか光る苔真夜を覚めこなれゆくたしかな動きねぎらいの生きてくうえに日が暮れるいつかくる潰えのうたのひとすじに善処する大悟明るい陽となるかひたすらに語彙…

五八九号(平成四年4月号)

題字 斎藤昌三 表紙 勢い 石曽根隆実 川柳の特殊性 曽美恵 十返舎一九と「東海道中膝栗毛」の主人公たち 三輪桂子 信濃の狂歌(八十八)【五、松本地方(4)】 浅岡修一 本誌主要記事摘録(二十一) 柳多留二十九篇輪講(六十) 川柳評明和八年万句合輪講(…

三月

日曜日毎に発行されるタプロイド倍判二つ折りの新聞がある。お正月号に(わたしの年賀状)の特集で、私も頼まれ、年賀状に生きて思いつのらせる そう墨書したのが載った。 春陽会の画家とか、史談会会長とか、お寺の住職とか、留学生とか、みんな上手で、自…

三月

氷雪に粋のいざない高鳴るうた墨痕臨書の静思たりまつりごと相好を崩すゆとりか羞らいかいなせの肩へふわり豆しぼり動く画だ沙汰あってさびしがりやの冬帽子ここだけの話負い目はまだ軽く一管の笛究極を告げに佇つかく弱きなお強きこの世に見せる少な目に収…

五八八号(平成四年3月号)

題字 斎藤昌三 表紙 顔 石曽根隆実 古川柳における笑いについて 菅野由佳子 川柳のたしかさ 清水京子 柳多留二十九篇輪講(五十九) 信濃の狂歌(八十七)【五、松本地方(3)】 浅岡修一 川柳評明和八年万句合輪講(十一) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 …