2016-11-01から1ヶ月間の記事一覧

焼き芋

近所に青果屋さんがあって、出回る頃になると忘れずにサツマ芋を一俵届けてくれました。どこの家庭でもそうですが、ご多分にもれず私の母も大好物でした。すぐに蒸して今年の出来はどうかな、とみんなで賞味しました。 「氷」と藍地に白抜きの幟【のぼり】を…

落ち葉

「いま松本駅に着いたばかりだが、君と逢って話したいことがある」―そういう電話がY君からありました。何だろうか、たしか岐阜県にいるはずだが、その後の動静を聞こうということもあって、早速出かけました。 道々歩きながら話すところによると、せっかく…

義民を偲ぶ

松本城の一番上の屋根に街灯くらいの電灯が立てられたことが、むかしありました。毎晩点灯するわけでなく、何かの慶事があるときに限って灯りがつきました。遠くから眺めると城の頭にローソクを立てたような情景で、たしかにあたりを明るくしました。まだ、…

郷土玩具

小林朝治は須坂町(現須坂市)で眼科医院を開きながら、かたわら版画家として全国に知られていました。私は月刊雑誌『川柳しなの』を創刊して間もなく、郷土玩具を模した版画で表紙を飾らせていただき、好評を得たものです。 まず昭和十二年八月号が「七夕雛…

えびす講

七福神のなかの恵比寿さまは、鯛を小脇に抱え、釣竿を持っています。いつの頃からか、これを信仰する商家が商売繁昌の神さまとしてお祭りし、十一月二十日えびす講が行われるようになりました。 松本では本町一丁目が所有する深志神社境内のえびす殿の例祭日…

案山子

街なかに住んでいたから、遠足などで郊外に出るのがどれほど楽しかったことか、少年の頃を思い出します。肥料になるレンゲ草の咲き揃った田圃に寝転がったり、ニョロニョロしたオタマジャクシを捕ったり、人さし指でぐるぐる円をかきながらトンボをつかんだ…

七五三

子供たちの集まる場所を知っていていつもの時間に来る飴細工のおじさんが、街の片隅でせっせと飴の技芸品をこしらえてゆきます。それを見るのがとても楽しみでした。 炭火で温められ、やわらかくなった飴をヨシの軸につけて、息でふくらましたり、伸したり、…

二十六夜神

松本城の二十六夜神の例祭は十一月三日。三石三斗三升の餅を献上する餅つきの神事は、古式にならって行われます。二十六夜神は松本城の安泰、加護の守り神で六階の梁の上にまつられていますが、御神体は煙草の根であるとか。 全国にはいくつかのお城がありま…

白菊黄菊

松本市民祭は回を重ねるごとに華々しく行われます。市民みんなの生活の豊かさを象徴するような恒例のお祭りです。 文化の日をはさんで、十一月の秋の澄んだ空の下、芸術文化祭、商工観光まつりなど部門別の催しものは、市民それぞれの活気でみち溢れることで…