冬至

 同じ昔話でも農村の人からじかに聞けばまたひと味違うだろう、その機会がほしいものだと思っていました。ある日、友だちが「うちのおばあさんが乗り気だから」とさそわれました。
 郊外に住む友だちの家に出向いて、そのおばあさんから昔話を聞いたのですが、私の母から聞いたものもあり、またいままで耳にしないいくつかの話が出て大変参考になりました。
 話のなかばで「ひと休みしてはいかが」と、南瓜【かぼちゃ】の煮物が出ました。「きょうは冬至ですよ」というのです。一年中で昼が最も短く、そのかわり夜が長いわけですが、話好きなおばあさんは「こんな冬の寒い日に、珍しい野菜を神様にお供えする習わしがあったものだが、それにあやかってこうしていただくのだ」といわれ、いろいろ興味深い話題を披露してくれました。
 小豆にまぜた南瓜の甘さを賞味することもありますが、冬至の日のせいか煮える音もまことにゴキゲンです。
  大鍋の冬至南瓜や煮えたちぬ   犀州
 南瓜は年越しをさせるものではなく、この日までに食べてしまうと聞いたことがあります。また冬至の日を「南瓜の年取り」といい、それだから南瓜を食べるところもあるようです。
 冬至の神様は犬が嫌いで、戌【いぬ】の日が来ると帰ってしまうかわりに、冬至から戌の日までの間が長いと、家の穀物をみんな食いつくす――といわれたものでした。
 冬至には柚子【ゆず】の実を切り、風呂に散らせて入浴する習俗があります。五月節句と同じようにみそぎの名残りではないか、ということです。
  柚子の香のほのかにありぬ仕舞風呂   蒼鬼
 寒い日、気品の高い旅人がとぼとぼ村々を訪れるものだと信じていた時がありました。外国のサンタクロースが訪れる話にも何か結びつくような気がします。現に美濃から尾張にかけて、冬至の夜に弘法大師が村々をめぐった、という伝説が残っています。
  老牧師に扶【たす】けれクリスマス   雉子郎