2016-06-01から1ヶ月間の記事一覧

へぼ将棋

アララギ派の歌人土屋文明が大正十一年松本高女の校長で赴任、二年間松本にいました。一風変わった気骨のある方だったようです。気軽に職員室に顔を出しては、トランプに興じて談笑し、机に腰をおろし、足をブラブラさせているのがつねのようでした。 そのこ…

ホタル

泣かぬ蛍が 身をこがす ことさらに口に出して言わないものの方が、ほんとうはかえって深く思いつめているという諺であります。 じっとうちに秘めた想いに耐えている風情が、ほのかに浮かんでくるではありませんか。 コオロギ、松虫、鈴虫は声楽家で、よい音…

タケノコ

タケノコが私たちの食膳をにぎわすころになると、子供のときタケノコの皮を一枚、母からもらった日のことが思い出されます。 皮をひろげてそのなかに紫蘇(しそ)の葉を加えた塩漬けの梅をくるみます。とんがった先からチューチューと吸うのです。あの酸っぱ…

梅雨しきり

梅雨がしとしと降っています。あのとき植えた稲の苗が、真直ぐ立っていてくれるかなあ、と心配します。 というのは、戦争中、勤労奉仕に出かけた農家でのお手伝いに、馴れない手つきで田植えした結果をそれとなく思うからなのです。 青年会とか婦人会、そし…

父の日

松本市に住む六十歳を過ぎたオジイさん、オバアさんたちで、川柳を愛好する集まりが毎月一回顔合わせをして、作品に取り組んでいます。 題は「生き儲け」「長寿」「入歯」「敬老会」といったお年寄りにふさわしいものを選びます。「頑固爺」「梅干し婆」「鼻…

槍ヶ岳

松本市街地から北アルプスをながめると、その山々のたたずまいの威容さがよくわかります。小さく見えても槍ヶ岳の俊峰はやはり秀でています。 この槍ヶ岳開祖の播隆上人の名が知られてきたのも、古きをたずねる風潮からでしょうか。 今から二百年程前、播隆…

腹時計

「今度、関西方面に出張することになったが、途中松本に寄って行きたいから頼む」と、友人から手紙をいただきました。新潟県の税務署に勤めている同じ川柳仲間なものですから、早速承諾の返事をしました。 予定のように到着、ゆっくりよもやまの話をしたので…