1975-01-01から1年間の記事一覧

十二月

△気に入らないと、寝そべって、あたりかまわず書きなぐっている。初めの頃はきまった大きさの、それも色上質の紙でないと、なかなか応じなかったが、いまは広告の紙以外はどんなに小さくとも、大きくとも書く。 △小さいのは小さいなりに、人物も小じんまりし…

十二月

身勝手に田舎そのまま求められ のがれ来て過疎をば許し戻りゆく 一日滞在食べて眺めて賞めて去り ふるさとの旧さを強いるほどの智恵 暮らしまで触れてこすって夙と帰り もてなしの田舎料理で稼ぐ身の 自然とふれ合い暮らし底にしずみ さして身飾るでもなくふ…

三九三号(昭和五十年12月号)

題字・斎藤昌三 え・いしぞねまさかつ 諤庵柳話(二十七) 田畑伯史 雑詠 大空 石曽根民郎選 柳多留二篇輪講(五十四) 【句会報】

十一月

△インコ二羽を飼っている。毎朝私が餌をやることにして、餌箱に餌を入れ水も替えてやる。必ずといってよいほど、私の手を嘴で突ついて愛嬌を振りまく。少し痛いが、気持はよい。何となく鳴声をたてて、あちこち飛びつき、飛びついてはしゃいでいる。 △手乗り…

十一月

気の持ちようと後影おいて来た 一歩退く思惑がぬくめられ 立ち直る目と合うみんな立ち去って 口ほどもなくへなへなと坐らされ 倒産の名の粛として明日がつづき みにくい風景を拭く心の旅 老いを鞭打つ働く手重ねたり まだ若い気のすんなりと見せ合いし 強が…

三九二号(昭和五十年11月号)

題字・斎藤昌三 え・いしぞねまさかつ 柄井八右衛門雑記帳(承前) 東野大八 雑詠 大空 石曽根民郎選 柳多留二篇輪講(五十三) 【句会報】

十月

△丁度、農休みになったし、日曜日だから、思い立ったが吉日と、私の家内の父の米寿の祝いの宴が設けられた。とてもよく晴れた日で、お自慢の庭を背景に、家の子郎党といった面々が主賓を取りかこんで、カメラの前に勢揃いした。撮る者はこのことあると東京か…

十月

悪びれず膝に重ねた掌が語り ここからも見える灯りは小さくとも 悔やまれてならぬ身なれば横たわり うたてしや心の重荷かぞえゆく 寝に返るそのままの果て思い過ぎ 何をからめてうとましくつぶやくか どっちみち裏目を知ってから正し 聞き馴れぬ話ではなく道…

三九一号(昭和五十年10月号)

題字・斎藤昌三 え・いしぞねまさかつ 役人万歳 岩本具里院 【続・具里院巷談―役人馘りの唯一の方法―】 雑詠 大空 石曽根民郎選 柳多留二篇輪講(五十二) 【句会報】

九月

△むし暑い日がつづく。残暑が今年ほどきびしいのは記録的のようである。じりじりと汗がにじむ。でも朝夕はめっきり涼しくなったと感じる。日中、たしかに陽がやきつくが、夕方やっと開放されたほどの安堵さを覚えはする。新涼が間もないことを先き触れしてく…

九月

分別へ老いを恃んで弾いてる 敬って貰って老いにとじこもり わびしくも老いの孤独を演じたり 老人パワー寝たきり遠く眼を据える 継ぐもののために静かな老いを嘗め この辿る道はたがわず老いゆく日 なつかしい過去を還して老いの枕 老いを自負する陳述も亦ま…

三九〇号(昭和五十年9月号)

題字・斎藤昌三 え・いしぞねまさかつ 文学賞受賞落第記 節素町人 諤庵柳話(二十六) 田畑伯史 雑詠 大空 石曽根民郎選 柳多留二篇輪講(五十一) 【句会報】

八月

△赤い月が浮かんでいる。何かを考えているようで、むしろ暑い夜の空に異様な色をよどませて沈痛である。八月に見る月は、この赤さが私の胸をしずませる。一ト月おくれの田舎のお盆、汗っぽくネチャネチャする膚ざわりの実感は、逝くなった人の御霊を迎えるに…

八月

ぬるま湯につかり味方はそっちでもない 風向きが変り男を叱咤する しかすがに老いの一徹いぶるなり 誰よりも知っている筈低く低く 念を押す小さな貸しと見て戻り 満を持しから紅の血ののりよ 図に乗って首重たげな遁辞とし 向うから負けてやったというけじめ…

三八九号(昭和五十年8月号)

題字・斎藤昌三 え・いしぞねなおえ 続具里院巷談 岩本具里院 【 ハリキリ役人万歳 ―親方日の丸はこうします―】 俳句と時称 鳥羽とほる 雑詠 大空 石曽根民郎選 柳多留二篇輪講(五十) 【句会報】

七月

△花を愛する運動の発祥の地らしく、松本界隈はあちこちで美しい花の咲き誇っている花壇が街頭で見られる。コンクリートの鉢、荷造りの木箱を利用した鉢が、小綺麗よく思い思いに花のかんばせが息付くのである。 △種子が入った小さい袋をゴム風船につるして、…

七月

愛すべき保護動物の裸ン坊 裸でもいられる未開へ移住せず 夏バテや値上げビールを呑みに昇る 夏狂うエリート自滅遺書いちまい 夏凄く呪文は膚に棲んでやる 二億円貢女のユートピヤ 女権いざ性の深さをあぶりだし 二千年のミイラ長々と足を伸ばす 掘り起す民…

三八八号(昭和五十年7月号)

題字・斎藤昌三 え・いしぞねなおえ 諤庵柳話(二十五) 田畑伯史 死生を共にした吉相印 岩井汗青 「川柳しなの」と僕 節素町人 「熟さない木の実について」 市川為雄 【書評 山本良吉著 川柳句集】 柄井八右衛門雑記帳 東野大八 雑詠「大空」 石曽根民郎選 …

六月

△東北線に乗るべく上野で乗り換えて隣りのひとはと見ると、私くらいの年輩の男性で、一ノ関まで行くという。戦争のとき、随分世話になった方が逝くなって、その弔問だという。非常に丁寧で、話がほんとうに聞きとれ、うなずくと、向うからも話をつづけてくれ…

六月

手のうらをかえすわざなく戻りくる 曝し出したくて気のよさを見て貰い 下手な生きかただと思うゆるい坂 すごすごと寝にかえる身のゆくりなく 押し返すことも知らずや流るるまま 夢は小さくなれどまた峠を数え ここにいまべったりとする気をはかり つたなくて…

三八七号(昭和五十年6月号)

題字・斎藤昌三 え・いしぞねなおえ 続具里院巷談 国鉄万歳 岩本具里院 【 国民を舐めるな 】 諤庵柳話(二十四) 田畑伯史 雑詠 大空 石曽根民郎選 柳多留二篇輪講(四十八)

五月

△ちっぽけな印刷所だから代表取締役なんて、大それた肩書を誇示するどころか、毎日事務所にかじりついて電話の応待にかしこまっている。訪問者はまさかこんなのが代表取締役とも思わず、こちらも思われるつもりもなく、ヘイコラ低頭という仕草で接する。 △そ…

五月

眼の前にひとつの事実息をこらし 買い控え暮らしの穴に眼を据えて 客車にビラ貼り廻し間引き馴らしてく 攻防の決着シラけ読まされる 舞台裏ものの見方がゆがめられ ときに愛想笑いの生きざまの逞しく 世渡りの掌のうら見せずうなずくか 誰ででもないという自…

三八六号(昭和五十年5月号) 

題字・斎藤昌三 え・いしぞねなおえ 惜しまれる柳誌の廃終刊 石原青竜刀 【 川柳ジャーナル・川柳春秋・武玉川 】 続柄井八右衛門調べ書 東野大八 雑詠 大空 石曽根民郎選 柳多留二篇輪講(四十七) 【句会報】

四月

△遠いところは至極このままで見られるので便宜だが、新聞や雑誌など近くで見るものに不便を感じて何年か経った。眼鏡を耳にかけたまま、額の方へずり上げて引き寄せる。老眼鏡をかけないで、こうした工夫でまだ見えるのが嬉しい。おでこに眼鏡の跡がつく。 △…

四月

よだれかけ遍路の連れをあきらめる 何処からも掛け取りは来ずよだれかけ よだれかけ銭が物言うそれも小さし 何となく縁は異なものよだれかけ よだれかけ朱さ執念まだ消えで なにも今更よだれかけあがらわず よだれかけ足下すずめに気を置いて 言い切ったかお…

三八五号(昭和五十年4月号)

題字・斎藤昌三 え・いしぞねまさかつ 諤庵柳話(二十三) 田畑伯史 雑詠 大空 石曽根民郎選 柳多留二篇輪講(四十六) 【句会報】

三月

△からりと晴れたよい天気で、これなら気持よく出掛けられそうだと、早速飯山市の石田一郎君へ、約束した汽車で行くべきだったのに、動労の順法闘争で一列車遅れてゆくが、よろしく頼みますと電話で申し入れた。 △こちらは盛んに雪が降っているから、長靴で来…

三月

野に下るかの頬冠りまだ取らず 華やかに去ったのでない指ざされ 前首相らしい貫禄とも言わず 泣き泣きも狸寝入りをゆり起し 収税の大と小とが耳打ちし 賑やかに新聞ダネの春が来た 一介の庶民に落ちて節聞かず してやった満足感がわびしいな ガタの来た新幹…

三八四号(昭和五十年3月号)

題字・斎藤昌三 え・いしぞねまさかつ 諤庵柳話(二十二) 田畑伯史 想夢庵さん雀童さんを悼む 石曽根民郎 雑詠 大空 石曽根民郎選 柳多留二篇輪講(四十五) 【句会報】