1960-01-01から1年間の記事一覧

十二月

▽句会無用論というものもあつて句会のかもすくさ〲の弊害をあげつらう。につちもさつちもいかない慣用性に馴れきつたごく僅かなマニヤを目の仇にして、句会向上へのさまたげを指摘するのである。こうした人たちはたゞ選者の選句に採られることに汲々としてい…

十二月

たましいを磨く雪降る遠い眺め 冬将軍をなだめてからきびし 人の死もあれ雪はやむやすらげに しあわせはわが耳にこそ雪さらり いさかいにこだわろうとする雪少し 思い出の向うで雪は降り積り 爺婆を遠く眠らせいまの雪 思想持つ降る雪ならめ群がるよ かの記…

二一八号(昭和三十五年十二月号)

【表紙】トンネル風景 武藤完一 千代と京子と 江端良三 課題「水」 竹内伊佐緒 選 信濃の国の文学碑 本山桂川 伝統論 岩本具里院 課題「銀行」 遠山栄一 選 雑詠 大空 石曽根民郎 選 山彦集 同人吟 課題「嘘」 所典夫 選 句会報

十一月

▽気まゝに好きな旅の出来ぬ現在では、余程の理由でもない限り、なか〱家から放れられぬ。どうしてこう縛られているのか、どうしてこうこせ〱せねばならぬのかと、ふと一日をふりかえることもある。だが丈夫で何よりではないかと、いゝ方へ向けて自分をなぐさ…

十一月

酔えばかなしきうた聞かす老い給い 見えぬ炎人生きるとき頬を照らし 警棒のよごれひた〱時動く 代議士の目方へ国の軽からず 党と党合わない道で肩いからし 話し合い傷拭く顔に乗つてきた 東北への旅 国なまり聞きほぐす目と親しまれ 松島にまかす詩心のおの…

二一七号(昭和三十五年十一月号)

【表紙】双子山(国東半島) 武藤完一 【口絵】林檎園と爺ヶ岳 中村善策 柳誌月評 橘祐 横山さんのこと 石曽根民郎 わらぢずれ 向山雅重 直方地方における送り笠俳諧について 白石悌三 医師の服装 鈴木重雅 課題「望み」 矢幡水鏡 選 雑詠 大空 石曽根民郎 …

九、十月

▽大方の寄進を仰いで阪井久良伎筆になる初代川柳の句碑が龍宝寺に再建されたのはつい先頃のことである。私もその除幕式に出掛けたが、東京の作家のほかにも全国から大勢集まり、先進の遺業を継ぐべく期し合つたことだつた。 ▽此頃は全国あちこち現代作家の川…

九、十月

一合の名のふるきこと酔いゆけり 倚らば大樹ふつゝかな酔い許すなり 憂きことの消ぬべき暇は酒あたゝめ 酒のうたしずかに時の流れ拒まず 酔いかなしいのちの大事はなたれな ものゝふのむかしの酔いに比すべきなく 妻をいじめることとなり酔いを收め 子に継ぐ…

二一六号(昭和三十五年九・十月号)

(誤植で二一五号となっている)【表紙】別府遠望(別大国道) 武藤完一 大阪の噺会【−舌耕文芸史資料断片 二−】 中村幸彦 秋山郷 横内斎 浅間山とんだ霊宝 大村沙華 課題「腰」 長縄今郎 選 新人よ野心を持て 篠崎堅太郎 雑詠 大空 石曽根民郎 選 山彦集 同…

八月

▽広告川柳というのがある。商品名の課題につけたPR川柳だが、けなすような題材でなくて、あくまで礼讃したものである。社会諷刺、人事諷詠の域をあるところで広げた視野だから、大いに活用して、銭になる川柳への活路を見出すべきであると主張する人もあつ…

八月

プラカードわれを喪わじと歩み 従いてくる愚つかぬ愚たくみな道化 声高らかに反対々々陽は昇る 進歩文化人絶対の語をふりかざし 多数の幻影にとらわれ欠伸する 偶像の鋳型を強いる死のまこと 保守文化人臍のまがりをつんと出す 傍観にあらで平和の道を考える…

二一五号(昭和三十五年八月号)

【表紙】志高湖畔(別府市) 武藤完一 難解川柳の文体 江端良三 課題「旅路」 藤沢三春 選 ほたる 比企蝉人 課題「励む」 糟谷鼠介 選 信州の名薬 小谷方明 雑詠 大空 石曽根民郎 選 課題「元気」 豊島好英 選 物知り博士の想い出 石曽根民郎 ヘギ盆・経木本…

七月

▽暑い日がつゞく。灼熱の暑さである。でもなりわいに励まねばならない。商売に学究に、ひとそれぞれの持ち場は缺かせられない。にじむ汗を知つているし、太陽のぎらつく射光を知つているだけに生活の虫となつてうち働くのである。人間のけなげさだ。 ▽こゝ信…

七月

山彦にこゝろの救い得し人と 疑いを抱くこの酔いを憎しとか 湧きあがる望みこゝろの前をかすめ 笑いためらわずこの家に住むことぞ 二つの闘い縫うべきいのちありとする 生まれ来て遠くの山は語るなれ 鐘鳴らし傷つくひとを数えゆくか 既に過ぎ去る言葉たり涙…

二一四号(昭和三十五年七月号)

【表紙】高島にて(豊後水道) 武藤完一 「柳多留」二篇の新資料 千葉治 納涼青楼曲 市橋鐸 課題「紋章」 小宮山雅登 選 ヘギの話 穂苅三寿雄 川柳は老いぼれか 岩本具里院 雑詠 大空 石曽根民郎 選 岡田三面子先生 小山潤一郎 山彦集 同人吟 課題「眼鏡」 …

六月

▽物情騒然たるなかで私たちはそれぞれの信念と思惑を持ちながらその一日を処することに汲々とせざるを得なかつた。安定したほんとうの心のやすらぎのない日がつゞいて憂鬱であつた。 ▽デモのあけくれ、赤旗の林立、署名運動、大学教授と文化人の声明、新安保…

六月

人を死なす山ならで山そこで応え 聞き分けてゆく眸を拾う向うに山 こゝにあるやすらぎなれば呟かせ 人のふところに入るいやしさをかいま見し デモを見過ごしひとりの平和さびしかり デモに参加の子の便り隔たるか ひと知れずこそ祈る日を得たるなり 朝の目覚…

二一三号(昭和三十五年六月号)

【表紙】豊後富士(由布山) 武藤完一 滑稽譚と川柳 浜田義一郎 近頃注目される評論と作品 石原青龍刀 二人句評−句会吟「嘘」 呑歩・能州 雑詠 大空 石曽根民郎 選 山彦集 同人吟 合評「道」 雅登・汗青・正光 カルメン純情す 渡辺幻魚 句会報

五月

▽川柳大会は盛んであることが望ましい。人によつて有象無象のゴツチヤでは意味がない、たゞ量だけ誇つていてはどうかと首をかしげる手合いもあろうが、それは考えようで、とにかく集る者の川柳作家の糾合であることはたしかだから、玉石混淆とか量だ質だをこ…

五月

マスコミという造形美術の花火があがり 警棒のあわれデモに浮き日本が通る 世論ひしめき気弱さを責めてくる 新聞の色分け意識してこわばり ダミ声の悲愴感日本を泳ぎ 乾き切つた闘いのマネキン歩くなり 小鹿の群吹き溜る署名強いられ 文化人政治の垢と自分の…

二一二号(昭和三十五年五月号)

【表紙】水仙 武藤完一 【口絵】八ヶ岳 中村善策 【写真】第十四回長野県川柳大会より 第十四回長野県川柳大会詠草 京都桂派【 舌耕文芸史資料断片 】 中村幸彦 雑詠 大空 石曽根民郎 選 合評「道」 雅登・汗青・正光 山彦集 同人吟 川柳長崎屋 花咲一男 ツ…

四月

▽通巻二〇〇号に達した本誌はその記念号を計画してはという同人間の意見があつたが、兎角遅刊勝ち、季節的なズレで変調子を来たしているので、儀礼的な文句を入れた記念号の体裁ではうんざりするから、二〇〇号もいつもの通り見過ごそうではないかということ…

四月

もろく美しと触れ得ぬものの前に立ち わが齢をかぞえいて山いかめしき 雨しずかに時流すすべ覚えてか 共に生きるこの溝を埋め並び給え 中年に救いの言葉散らかるよ 山ぐにに山あるたしかさと生きる 腹を減らすかたくなにこのわざに組し 黒髪は濃く遠き倖せあ…

二一一号(昭和三十五年四月号)

表紙 佐賀関灯台(豊後水道) 武藤完一 川柳における民話 浜田義一郎 課題「燃える」 神谷正司 選 山室甚句 向山雅重 前田雀郎最後の自選三十五句 阿部佐保蘭 雑詠 大空 石曽根民郎 選 合評「道」 雅登・汗青・正光 山彦集 同人吟 二人句評 高司・みのる 句…

三月

▽前田雀郎氏追善川柳大会が三月十三日にあることを知らされたので出席するべく前日上京した。一月三十一日が葬儀だつたが、何分にも月末で商売の方では身がはなせないため、せめて追善川柳大会には出掛けようと思つていた。 ▽夕方着いた。姉の家に落ち着く前…

三月

白壁のせつなく重く元くるわ つきつけるマイク日本の過去癒えてか 子の涙空に光つてのぞみ持つ 白髪美しや情熱の鎮もり来 言葉あやしくなりひら〱と鳥飛び立ち 大物の明日を倒さんとしては眠り 正直の肩敢えて濡れ灯に雨に 枯野つゞき喪にある人を描かしめ …

二一〇号(昭和三十五年三月号)

表紙 別府楽天地 武藤完一 開田高原 横内斎 課題「肌」 土田貞夫 茂乃家京子の執念 江端良三 句を求める大事 石曽根民郎 素人談義 渡辺幻魚 雑詠 大空 石曽根民郎 選 合評「道」 雅登・汗青・正光 山彦集 同人吟 摘草 比企蝉人 東京だより 伊古田伊太古 句会…

一、二月

▽割合いと突つ込んだ手紙を出せる人に前田雀郎さんがあつた。私はとき〲そうした熱つぽい手紙を強いたようなかたちになつたけれど、柳界に対する私見を率直に書いてお意見をきこうとした。よくお返事をいたゞいた。ありがたいことであつた。ものごとに親切な…

一、二月

消ゆるもの消ゆべしと思いしは昔 一人去りゆく死の言葉選ばずに 遥かなるものならでそこに息付く親しさ 道はつゞくときに水の味深かれや 人生きてたしかなる目をぶらさげゆく 言訳をふくむ墨の香冬知つて 寝に返る愚かさはあれひとりずつ 言葉の裏に縋る気弱…

二〇九号(昭和三十五年一、二月号)

表紙 佐伯神楽人形 武藤完一 柳誌月評 橘祐 お正月はおめでたい 田中緑紅 雀郎の死は川柳PR上の大損失 石原青龍刀 雑詠 大空 石曽根民郎 選 合評「道」 雅登・汗青・正光 山彦集 同人吟 雪とユーモア 所典夫 句会報