九、十月

   一合の名のふるきこと酔いゆけり


   倚らば大樹ふつゝかな酔い許すなり


   憂きことの消ぬべき暇は酒あたゝめ


   酒のうたしずかに時の流れ拒まず


   酔いかなしいのちの大事はなたれな


   ものゝふのむかしの酔いに比すべきなく


   妻をいじめることとなり酔いを收め


   子に継ぐべき酔いめでたかりいまだ若しと


   小心の愚かさ酒に敢えて克たん


   いさゝか盃をふゝみ生きの間を縫う