1990-01-01から1年間の記事一覧

十二月

年の瀬に追われるようになると気忙しく、何かとあわただしさが増す。仕残したことが気にかかりながら、さてどれから始めようかと思う。 さしずめ年賀状書きから手をつけようと、ちょっとした時間に机に向かう。手書きの文章、住所氏名が何よりも大切だが、つ…

十二月

人質のめぐりへめぐり着地せりひたすらに軽きいびきの甲斐性よよそながら億の戯れしげしげと回復を蜜柑酸っぱくからかってかぶりつく林檎正義の味方せよ校正の生き神様が苦笑う記事がのた打つ雪乞いと反逆と長らえて不遜の慊いおぼろげに処世感問われ放しの…

五七三号(平成二年12月号)

題字 斎藤昌三 表紙 憩い 石曽根隆実 死にそこなった話 鈴木倉之助 柳多留二十九篇輪講(四十五) 信濃の狂歌【四、飯田・伊那・諏訪地方(8)】 浅岡修一 本誌主要記事摘録(十一) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 本誌主要記事摘録(十二) 句評 す…

十一月

昭和三年に松本中学校を卒業したので、長い間昭三会という名称で同級会を開いている。変遷があって担当幹事の交替でそれでも、年に一回は必ずといってよいほど続く。 開催の通知を印刷してあげる関係で私が発送を受け持っているから、万年幹事のひとりでもあ…

十一月

たまさかにおぼえめでたき日と逢おうつぶやきか寝言か聞いたのは他人弥次喜多と作者が筋で絡む宿かがなべて揃い過ぎたる見事な負稼ぎにも句にも及んで身の冥利末枯れのもののことわり負いながら旗立てて職場に急ぐ貌もある行楽の群れ政令に準じいるこれも報…

五七二号(平成二年11月号)

題字 斎藤昌三 表紙 思い出 石曽根隆実 南木曽・田立の岡本一平【―その「漫俳」群―】 堀進 柳多留二十九篇輪講(四十四) 信濃の狂歌(七十五)【四、飯田・伊那・諏訪地方(7)】 浅岡修一 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 本誌主要記事摘録(十) 句…

十月

信州大学医学部第一外科(幕内雅敏教授)の肝移植チームは十月十六日、同大三例目の生体部分肝植手術を行ったが、そのチームの一員に石曽根新八国手がある。私と同じ石曽根(いしぞね)姓。 この姓は長野県中央部に多くあり、他県で名乗るとすれば大抵長野県…

十月

生まれつき鶏冠の粋をここに蒐め妬まれた本気見事に柘榴熟れその齢にして遅すぎた間を生かし老いぼれに違いないけどいざやいざ腸ののたうつ物の言いたげに裸の王様の幻影で歩かない逆縁の道に寄り添う手すさびよよそにして日の丸国家力づけ大国の選り抜く技…

五七一号(平成二年10月号)

題字 斎藤昌三 表紙 びっくり 石曽根隆実 木?雑記【メニエール氏の憂うつ 木鶏雑記】 東野大八 柳多留二十九篇輪講(四十三) 本誌主要記事摘録(九) 信濃の狂歌(七十四)【四、飯田、伊那、諏訪地方(6)】 浅岡修一 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人…

九月

毎年、鈴虫を孵化しつづけている友人から、いくつか頒けて貰った。偶々、ガラス張りの巣箱があった。湿った砂地に胡瓜と茄子をただ置くのではなく、楊枝を挿した方がよいと教えて下さった。 腹が減ると共食いしかねないから、たまに干した小魚を刻んでやると…

九月

硝煙の一歩手前の胴回り人質の寸時の喘ぎ思うだに手不足を嘆じるときの向こうずね巻き込もうとするひと声のうそ寒さ鳴く蟲と泣く虫の世に居合わせるお互いに遅れと気付く道を分けさよならは生きのたまゆらただ一度にらみ合い遠き谺のよい向きにとは知らず役…

五七〇号(平成二年9月号)

題字 斎藤昌三 表紙 顔と顔 石曽根隆実 信濃の狂歌(七十三)【四、飯田・伊那・諏訪地方(5)】 浅岡修一 川柳ドキュメント 走馬灯【”走馬灯”】に寄せて 浜本千寿 柳多留二十九篇輪講(四十二) 本誌主要記事摘録(八) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同…

八月

川柳ひろしまでは、表紙に、四十五年目の原爆ドームで戦争の記憶をいたましくもよみがえらす。 川柳番傘は空を衝く伸び上がった高層ビルの繁栄、川柳ひろばはカタツムリが葉の上に載っている季節感を盛る。 川柳さっぽろは北の国にふさわしい大通り公園、川…

八月

浮かばれる身のつましさの折り返し後ろから押されついでの片えくぼ同調の強み弱みの争わずありふれた風景だけにきつすぎる消えてゆくチームはぐれた友なのだ雨乞いの奇習けなしたどまん中名水の雨を得てから合点するヘリコプター山の安否にいま着地充電に避…

五六九号(平成二年8月号)

題字 斎藤昌三 表紙 並んで 石曽根隆実 お箸の話 内山一也 柳多留二十九篇輪講(四十一) 信濃の狂歌(七十二)【四、飯田・伊那・諏訪地方の狂歌(4)】 浅岡修一 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 句評 てふてふ 丸山山彦 課題「流星」 荒井美柳選 …

七月

待っていてわるい気がして、でも七月になると東京から朝顔が毎年届けられる。亡き甥の連れ合いのご好意で感謝している。 入谷の朝顔市で、きちんとはまる包装箱に入れられ、なつかしい贈り物。 日盛りの最中、葉のぐったりした時に充分水をやってくださいと…

七月

声明の未必の故意は誰が撃つサミットの呉越同舟沈まない筆頭の首のすげ替え冷房下あわよくば瞼に濡らす蛍の灯根源を辿る小さきものの名はゲラ刷りの手づくりをこそふところにうらぶれの風にもたれて呼ぶ声よ変革のうようよおのれ失わず心のゆくえ静かな夢か…

五六八号(平成二年7月号)

題字 斎藤昌三 表紙 打つ 石曽根隆実 桐原牧その他 多田光 柳多留二十九篇輪講(四十) 川柳しなの・川柳まつもと・川柳やまぐに 親睦合同句会【宿題「植える」所 典夫選・「掘る」土田貞夫選・「温」上条義郎選・「走る」飯沼 忠選・「川」牛越鶴甲選・「和…

六月

梅雨期に何も合同句会を開催することはあるまいと思っていたが冬から覚めた四、五月は入学だの連休日だとせかせかする月だから六月あたりが差し当たりよさそうだ、みんな言い合って決まった。 昨年の第一回も六月、運良く雨に会わなかった。ことしの天気予報…

六月

しがみつく段々畑叫んでいるゴルフ権 保護派の風は知ってても強奪の噂騒ぎの鈍い落ち家出して大人社会をわし掴む【旧字】む熟れる語に君もうっかり逃げられた見えぬ手にかしずかれたり あやにくや強気にて炭焼く小屋のなた煙草数ならぬ身に安けくも光る苔株…

五六七号(平成二年6月号)

題字 斎藤昌三 表紙 なんとなく 石曽根隆実 雑俳が面白い(下)【岡谷市川岸新倉・毘沙門堂の献額など】 浜 森十 柳多留二十九篇輪講(三十九) 信濃の狂歌【(四)飯田・伊那・諏訪地方の狂歌(2)】 浅岡修一 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 本誌…

五月

雨が降るとどうも日本アルプスは煙って見えない。折角遠くから来たひとで残念がる人もいよう。麻生路郎師もそのひとりで、松本駅に迎えた日、雨だった。 雨の松本にて 遠く来て信濃に山のない 日なり を旅中吟とした。 またかと言われそうだが 名所にもなら…

五月

挿しはさむ言葉の埒のほどよさに芋の煮っころがしに話乗っかる飾ることなしに仕末は自分ともへたへたと座り大愚を量る刻一枚ずつ老いを纏って見たがるかあの世この世のしきたりの濃くうすく何不足なき旅発ちのかかりあい有り難きものをねだって胸の際行き逢…

五六六号(平成二年5月号)

題字 斎藤昌三 表紙 元気に 石曽根隆実 雑俳が面白い(上) 【岡谷市川岸新倉・毘沙門堂の献額など】 浜 森十 柳多留二十九篇輪講(三十八) 信濃の狂歌(六十九)【(四)飯田・伊那地方の狂歌(1)】 浅岡修一 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 本誌…

四月

一区切れと思えばこそ、こんどの川柳しなのの挿絵回顧展は私らしさの意義があった筈。そして出品させていただいた表紙絵、口絵、挿絵のいくつかが、ひとつずつ想いをたぎらせ、なつかしい回顧をつながらせて貰えた。 初日早々と遠くから花生け鉢が届いた。こ…

四月

よき事と物容れておく壷がある飯うましこのたしかさを享けて見んどの名にもさだめの近い手が伸びるどすんと落とす逃げの一手見えないか乳房ゆさぶるたたかいの庭を持ち禿びた靴萎びた乳房語らせよ自分が出てきて気負いとも支えともともらいのこころやがての…

五六五号(平成二年4月号)

題字 斎藤昌三 表紙 ふっとして 石曽根隆実 ウッソォ!! 節 秀夫 信濃の狂歌(六十八)【三、上田・小県地方の狂歌(30)】 浅岡修一 柳多留二十九篇輪講(三十七) 本誌主要記事摘録(三) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 句評 ひこばえ 丸山山彦 課…

三月

なんともし、大屋さん。夜ばいにいったやっを、まめどろぼうといふハ、どふいふゐんねんで御ざりやしょうね。いへ主ハテ、きさま。女のかくし所をさしてまめというハサ 忠ヘヱ、わっちらんかかアなんざア、なんだろうね いへ主 ハテ、素人じゃから白まめサ …

三月

元号の伝習を秘め 折りたたむ括弧ない西暦が嗅ぐ二十一世紀名乗り出る血縁 国の春を生む党略を矯めて烽火のあきらかにもろもろのさだめのほかの たわむれかなまけものめいて独りの祈りとも去りがてに頬のほてりの あやにくやおだやかな噴煙 旅へ逃れ来て青春…

五六四号(平成二年3月号)

題字 斎藤昌三 表紙 晴れ晴れと 石曽根隆実 なみのつぶやき ―川柳随想 浜本千寿 柳多留二十九篇輪講(三十六) 信濃の狂歌(六十七)【三、上田・小県地方の狂歌(29)】 浅岡修一 本誌主要記事摘録(二) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 句評 らくが…