1976-01-01から1年間の記事一覧

十二月

△全面ガラス張りの南向きの部屋が、わが家のまどいに当てがわれみんなガヤガヤはしゃぎまわっている。昼だけは交代で、みんな集まるわけではないが、朝と晩は文字通り一族が顔を合わすことになっている。 △私は人に誘われて外食は滅多にしない。いや、誘いに…

十二月

相も変わらぬ顔触れと言わせ置く 華やかに年を逝かせる粋がって ガヤガヤと批判の奥で鎮座する ゆくすえのなかなかに物価手を見せず 減速の変わった型で泳がされ 賑わいのせめてもまれて年の暮れ もろく潰えたほとりぼりの語りかけ ことの結果を読んでやるい…

四〇五号(昭和五十一年12月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 現代川柳のカオスについて 福島春汀 【―句集「道草」を中心に―】 諤庵柳話(二十九) 田畑伯史 【―道草とともに―】 迷路 丸山太郎 峠(一)【信濃雑記】 胡桃沢友男 雑詠 大空 石曽根民郎選 柳多留…

十一月

△待っていてくれるというのは、全く有難いもので、その日はいたって快晴、少しくらいはわかって貰えたろうと淡い期待のうちに出掛けた。前に行って話した内容が気に入ってくれ、また話のあとで実作に誘いこんだら、初めての試みだと、みんな不安げな顔つきで…

十一月 

遠い昔がご機嫌伺い見たいな顔で 無理からぬわけにかくれてすまながり あつかましい話のなかでおちつこうと思う 傷つきながらゆっくり長い夢に賭けて 短かい言葉立ち直ろうとかまえ さびしがらせる音だほど〱に矛をおさめ 雲ふんわりと素直自分を見捨てずに …

四〇四号(昭和五十一年11月号)

◎小宮山雅登追悼 小宮山雅登のこと 河野春三 小宮山雅登君を憶う 上条義郎 烏城 八尾緑波 惜しい人 山岸きよし 有縁の人 江端良三 雅登さんの死を悼む 船木銀介 「くるしいな」 山村祐 雪のなかの人 清水汪夕 松本人の芯 岩本具里院 消えた灯 美濃部貞 むす…

十月

△十辺舎一九のことを調べたくてあさっているうちに、「滑稽旅賀羅寿」のことを思い出し、あれなら尾崎久弥さんが校訂した「信濃小説集」のなかに出ていると気づいて久し振りで繙いた。一九の著書のほかに、作者不詳の「鄙風俗真垣」と岡山鳥「ぬしにひかれて…

十月

おびえてはいない眸として克ちたがる 身に覚えある風景でまとまるか かばいゆく身のほどなれや落葉道 もろく敗れし時の間を稼ぐという 誰に明かそうとするひとり寝に縋り その想いの頂きに佇つ安らぎか 高官の疑わしきは秋に堕とし 灰色の名の冠がはまる首 …

四〇三号(昭和五十一年10月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 川柳句集「道草」と宇宙人 節素町人 新吉原郭内 磯辺鎮雄 雑詠 大空 石曽根民郎選 弱い犬 丸山太郎【カットも】 道祖神(四)【信濃雑記】 胡桃沢友男 柳多留三篇輪講(六)

九月

△還暦になったものたちで、いい記念だから自分で費用を負担し、同好者に集まって貰い、川柳大会を開いたらという話があった。それまでは還暦に近い人が一しょに合同して開いたのだったが、それ以後はきっちり還暦のものだけやって見たらというのだった。 △率…

九月 

たかが孫の絵に支えられ倚らしめる すがるものあるかたかだかと秋が来た 論評とのへだたりにいて爪立たせ 鳥音に目を覚まそうとする小さな安堵 はじらいのかなしくも身をかばってた 首筋のこのいじらしく振り向かれ 足音もひそか寝にゆくここの果て 昔よみが…

四〇二号(昭和五十一年9月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 民郎さんのうしろつき 松林尚志 【―『道草』を読んで―】 川柳句集「道草」を読んで 小川敬士 雑詠 大空 石曽根民郎選 初茸 丸山太郎【カットも】 道祖神(三)【信濃雑記】 胡桃沢友男 柳多留三篇輪…

八月

△戦後、劇団タンポポというのがあちこちに公演して評判になったが、本拠は松本市笹部ににあった。そこにしばらく所属していたということで、曽遊の地を久し振りに訪れた小池章太郎さんにお会いした。まだ見ぬ松本の地だった同伴の奥さんを案内がてらである。…

八月

自らを恃まんとする身の証し 接点をぼかして敗けを背負いながら 圧政のなかで生まれた血の騒ぎ 人のうめきひたすらにきくひとりとし すがるものへの祈りただ遠巻きに 終ったあとのさわやかさそれで足り 汚れ金口拭き合える身の飾り 外国へ邦を見にゆき金いく…

四〇一号(昭和五十一年8月号)

四〇〇号特集 その二 題字・斎藤昌三 表紙・アメリカ椰子 中村善策 (一水会) カット・丸山太郎 信州の万句合 宮尾しげを 書物捜索の終りに 横山重 雑俳語雑記 鈴木勝忠 柳多留の読者 宮田正信 松浦静山侯の川柳 中村幸彦 山中自有方外友 野間光辰 近世身分…

七月

△一昨年の夏、うちの前の店「百趣」で、信濃山岳画協会展を開催中のとある日、浴衣がけで藁帽子を冠った人がのっしのっしと「石曽根いるか、呼んで来給え」と言いながら這入って来た。私が奥から出て行って、どなたかなといぶかりながら会って見ると、まぎれ…

七月

わがことに及ぶ黙して歩き出し 涙ぐむそのひたすらな瞬時とし なぜか気のゆるみにも似て矛をおさめ 呼び捨ての名と化す活字こわばらせ 小さくとも金にまつわる話して つぐないの仕方捉えて賑わし 捨てるもの吐き出させ 月がこっそり 暗躍の場を選ばない時の…

四〇〇号(昭和五十一年7月号)

四〇〇号特集 その一 題字・斎藤昌三 表紙・小樽海岸祝津 中村善策 (一水会) カット・丸山太郎 珍題名噺本四種【かわっただいをつけたこばなし】 武藤禎夫 明治の時事吟 浜田義一郎 川柳相撲風俗史 小島貞二 吉原への通い路 磯辺鎮雄 道祖神(二)【信濃雑…

六月

△梅雨の晴れ間になつてくれれば有難いがなと案じていた空は、からりっとあかるく、先ず雨の心配がないので、松本駅に勇んだ。誘い合わせたように、明科駅への乗車を待つ同志の顔が集まって来て賑やかだ。 △明科鱒釣り吟行会というわけで地元の竹内伊佐緒さん…

六月

横たわり仮りの姿に思い過ぎ 老いを知るというたしかな口惜しさ 生き儲けの顔ながら月を見ていて 首なし地蔵遠き想いは同じとか すげ替えの地蔵の首は少しかしげ つつしみに耐えるうなじはほんとだな 早き目覚めのおかしさに支えられ もろもろの夢淡き忘れて…

三九九号(昭和五十一年6月号)

題字・斎藤昌三 え・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 知事と空港 岩本具里院 清里高原行 丸山太郎(絵も) 道祖神(一)【信濃雑記】 胡桃沢友男 雑詠 大空 石曽根民郎選 柳多留三篇輪講(二)

五月

△狂言を楽しむ会が人間国宝野村万蔵氏を招いて、五月二十五日に松本市厚生文化会館で開かれるということを聞き、早速肝入りの知人の与曽井湧司さんに入場券を交付して貰うよう申し入れた。 △この公演が実現したのは、東京で医師をしている与曽井さんの娘むこ…

五月 

なぜか静かな道としてまた踏まえ 小さな夢なりし忘れずに見たがって 黙ってかえす笑顔中途半端かな 許されるぬ膝で見事な逃げを打ち 身にしみる語りのこわく遠き日よ いつか姿を変えていじめに立ちあがり 生き儲けの顔をしながら月へうそぶく 見る側に億とい…

三九八号(昭和五十一年5月号)

題字・斎藤昌三 え・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 諤庵柳話(二十八) 田畑伯史 善光寺のふるさと 小谷方明 四十年前の句会 岩井汗青 雑詠 大空 石曽根民郎選 柳多留三篇輪講(一)

四月

△おやっと思った。こんな夜中に玄関から出てゆく人がいる。誰だろう、でも家の者だ、じきに戻るに違いない。家内が気がついて起きていった。パッと電灯がついてさがしているらしい。寝床に戻って来たので聞いたら、伜の嫁が産院に行ったという。二分ほどの先…

四月

四畳半むかし妓の膝愛らしく 戯作者の生き生きと駆る四畳半 擬古文にのがれしっぽり四畳半 わいせつの断四畳半めくられる 四畳半の脛に落下すいかめしく 四畳半いかがわしくもゆりおこし 売文の濡れは秘とする四畳半 公刊にうめきを聞かす四畳半 筺底に眠り…

三九七号(昭和五十一年4月号)

題字・斎藤昌三 え・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎三誌創刊と川柳年鑑一九七六年版 石原青竜刀 スミレ夜話 横内斎 雑詠 大空 石曽根民郎選 柳多留二篇輪講(五十八)

三月

△創立何十年になったから、その事業記念として募金を集めたいという趣旨書が来た。卒業の回数ごとに委員があって、特に力添えを懇請する委嘱状が別についているが、いつの間にか相当な顔触れと一しょに私の名もまじる。 △委員だけの小集のとき、これからバッ…

三月

専らの噂他人として去るか 伸びる芽は小さく素直にうたをうたう 人格の渋さのなかの色好み 敵陣の耳を休める笛にたとえ 結び目に高官名が仮眠する ほんとうの寝言けろりっと覚める 譲れない考えいまゆるやかな曲だ 風向きが変わり男を叱咤する 喪を持つひと…

三九六号(昭和五十一年3月号)

題字・斉藤昌三 え・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎街道下り 向山雅重 土手の柳は風まかせ 東野大八 雑詠 大空 石曽根民郎選 柳多留二篇輪講(五十七)