1967-01-01から1年間の記事一覧

十二月

▽いつまで経つても困つたものだね、歯がゆいと思われないのかね、そう言われそうで、去つてゆく年にたしなめられるのである。なるほど年甲斐もなく取り乱し、すぐ向きになつてあらぬことを口走りあとになつてあれこれ悔やんで、寝床のなかで自分を叱るのだ。…

十二月

ほどほどに別れの雪のしるきこと求むべき齢ならで坐つてくれるたしかな齢にすがらんと夕陽ひろがるいのち短かきを誰か言う齢の思いよ雪のかなしみに割箸のいとなけや山は語りかける小さな帽子が歩く口説のもどかしさつららとんがるよ身の証し立てる星たち顔…

二九七号(昭和四十二年12月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 川柳は何をしているか【川柳誌十一月評】 東野大八 江戸万句合と上方句との交渉【明石人丸大明神三万句集について】 阿達義雄 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 課題「聞く」 田内創造選 柳多留初篇輪講(五八) 句会報…

十一月

▽菊の花がいくつも顔を並べて咲き誇つている。あまり手入れもしないのに、毎年秋の季節を知つていて、どれもこれも美しい色で匂うのである。裏の庭のあちこちに野菊のような置かれかたで、ひつそりと、咲くからには華やいだ顔つきをしてくれる。いとしい。 ▽…

十一月

だんご口を少しよごして晴れぬ日の味のある水ほしいという笑いながらいさぎよく裏切られては風生むよ長き道短かき道をいまも胸に無理からぬ話静かに夜を支え時の流れにひとりうなずく黙つて黙つて酒の肴がその顔をしてさからわず甘さのいきにえにみずからを…

二九六号(昭和四十二年11月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 柳多留初篇輪講(五七) 特集二題と「河童」創刊【柳誌十月号を見て】 東野大八 課題「笑う」 寺沢正光選 「枕」 岩井汗青選 句会報【七月句会・八月句会・やまなみ七月句会二・九月句会・しおじり句会】

十月

▽土蔵の入口に犬の小屋がある。南向きで、そこに鎖につながれた愛犬がうずくまつている。大抵、くるりと自分のからだを巻くようにしてまるく抱えた恰好である。ときどき出て来て、身ぶるいをする。払いのけたいものがあるせいだろうし、退屈をまぎらわす気分…

十月

朝の鐘寝足らぬ夢をまた拾う残党の焚火ひとりは女を想い蒼い湖死の美しさ少女は唾る英雄は死す大いなる炎たり血の気のない尻尾でじやらし飯にありつき妻の名を忘れてはいずしかと書く過去拭いてきらめくものを求めずにままならぬ思い落葉の音にこそみちくさ…

二九五号(昭和四十二年10月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 栄養失調の柳界【柳誌九月号を読んで】 東野大八 英訳川柳名句選研究1【輪講掲載に当つて】 阿部佐保蘭 西島○丸川柳年表(十一)【柳誌・柳書】 奥津啓一朗 課題「意地」 三枝昌人選

九月

▽息子夫婦が母屋の方におちついて、私たちは土蔵のなかを改造した部屋で暮している。もともと父が始めた事業のために、商品を貯蔵の目的で建てた土蔵だが、威風堂々とはいかないまでも、このごろ近代化に伴つて兎角姿を消してゆく松本の土蔵風景の典型のひと…

九月

掲出句なし

二九四号(昭和四十二年9月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 詩人の孤独 山村祐 くだらない時事川柳論争 東野大八 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟

八月

▽自分だけが苦しんでいるような気がして、はつと寝覚めが早いのである。負いかぶさる何かがあつてこうなのか、自分が殊更にそうするのか、それはわからない。どうにか暮している筈なのに、追われるみたいにこせこせする。 ▽遥かな希望を夢見ることはもう失せ…

八月

許し合う道こそ選びひとりずつ語らいをまかせ寝にゆくわびしさが眼鏡拭く齢のたそがれよかれしと物想う腹這い夕陽残るなり月と歩む人の弱さを抱かされつつましく遠くの山も応えたり物言わぬ犬のねぐらの屋根の雨果し得ぬわざそこそこに眠りゆくことわざの古…

二九三号(昭和四十二年8月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 現代詩話(五) 高橋玄一郎 さまよえる川柳【柳誌七月号を通読して】 東野大八 課題「のぞく」 藤沢三春選 何も無かつた温泉場 丸山太郎 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 柳多留初篇輪講(五六) 句会報【六月句会・や…

七月

▽ことしも向日葵がいくつも咲いた。天に摩すようにして、おのれの存在の黄いろを誇つている。たいした施しもしないから、大輪というわけにはいかぬ。細つぽく、それでも私の背丈より高く咲いているのを見上げると、夏のじりじりした暑さがほんとうのものであ…

七月

蚊帳の中きちんと心休ませて押して押してなおのがれ得ぬ汗を拭く酔い少し残る月光ひとりの死時に呑まれまいと髭剃るいとま政治のいたずらをよそながら眺めやる人の名のそれぞれに生きをあかし濡れてゆく女こだわりのこす夜話ひと去るとき短かい言葉で足り山…

二九二号(昭和四十二年7月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 現代詩話(四) 高橋玄一郎 川柳よ、どこへ行く【柳誌六月号評】 東野大八 課題「臍」 下畑辰二郎選 ミズバシヨウ・サクラ 横内斎 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 柳多留初篇輪講(五六)【五五の間違いか?】 課題「…

六月

▽たばこは喫わない。ほしいと思つたこともなく過ぎた。うまそうに喫うひとの横顔に見とれるほどでもなく、いくつもの輪になるのをたのしんでいる屈託のないひとときをそれほどうらやましいともつい考えなかった。 ▽たばこを喫うことで、ハツとするような思い…

六月

掲出句なし

二九一号(昭和四十二年6月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 第二十一回長野県川柳大会【川上三太郎氏を迎えて】 現代詩話(三) 高橋玄一郎 ハダカの柳人とハダカの柳論【柳誌五月号評】 東野大八 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 柳多留初篇輪講(五四)

五月

▽雨戸が締まつており、犬がしきりに吠えているので、不審に思つた近所の人が裏口から入つたところ、長谷川春子さんはあおむけに倒れていた。そばのテーブルの上には、洋酒のビンと果物があつたという。五月七日午後のこと。 ▽ひとりさびしく、誰からもみとめ…

五月

水そそぐ花のいのちも燃えるならみずからをいためひそかな雨がある老いのてれくささやがて疲れのやわやわとワイシヤツのよごれは義理を思うときわがままな顔を残して酔うてやるいたずらに生きる証しをたずねゆく衆愚のめでたさ貨幣裏も見せたぞ静かに静かに…

二九〇号(昭和四十二年5月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 現代詩話(二) 高橋玄一郎 いろいろのことを想うこと【柳誌四月号をみて】 東野大八 叫びとつぶやき【或いは饒舌ということ】 山本芳伸 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 柳多留初篇輪講(五三) 句会報【四月句会・や…

四月

▽おととし米寿の祝にお礼の言葉をキチンと述べて、その元気さをたたえられた伯母は健在である。白髪は年を重ねて美しく、こじんまりと坐つている。応待には如才なく、ほかの家族より率先して、茶をそそぎ、馳走をすすめる。話題はせまいが、長寿者の風格はお…

四月

【10頁掲載】 流れゆく世とし稼ぎの顔をするやわやわと許すほどなる齢のまこと快き疲れそのまま人生きよ忘じ難し星の憂いに置いて見たわが齢におよぶ静かな目を伏せて貰われてゆく猫のこころよき眠り書と花にもたれ見事な大人たちいずれともなく訪れの人ほし…

二八九号(昭和四十二年4月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 現代詩話(一) 高橋玄一郎 愚論と英語とカネ【柳誌三月号評】 東野大八 建国記念日と川柳【具里院巷談への一つの答え】 石原青龍刀 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 柳多留初篇輪講(五二) 句会報【三月句会・やまな…

三月

▽書斎といつた独立の部屋があるではなく、少しだだつ広いがここで結構、句を考えたり、何か書いたりしている。南向きに当る陽の光が射しこんで明るいのも頼もしいのである。 ▽まんなかあたりに電気コタツが置かれている。コードが長いから移動は出来る。炬燵…

三月

【17頁掲載】 告白の痛み黒髪くしけずりうまい物が並べられ小さくなつてゆく眺めにもならぬ風景で陥ちてくひとりねぎらいの言葉寝に戻る不思議中小企業の名を与えられ雨しきり競争に従いてゆく影倒れるものか物体に従いてゆく影倒れるものか物体に押され見廻…

二八八号(昭和四十二年3月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 具里院巷談【建国記念日制定に思う】 岩本具里院 歌人派川柳人の抒情なるもの【柳誌二月号評】 東野大八 課題「車」 高島盛人 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 柳多留初篇輪講(五一) 句会報【二月十八日本社・やまな…