1989-01-01から1年間の記事一覧

十二月

▼作家の幸田文さんはたいへん動物好きな方で、ときどき上野動物園にも出掛けられる。ある日、その幸田文さんから「助けて」という電話がかかってきた。かけつけてみると、エントツに小鳥が巣をつくっているらしい。火をつけたら死んでしまうから助けてやって…

平成元年十二月

わが胸に滅びのうたを少しずつこなれゆく動きゆるやかなる目覚め凡庸の肌のたるみを痛がって子を遠く近くに派した気のもたれ観ずれば男だらけの粉々と子育てと亭主育てで終わらせずその辺で知ったかぶりの手筈する構造のいやらしさいま膨れ出す危うさを振る…

五六二【五六一?】号(平成元年12月号)

題字 斎藤昌三 表紙 髪 石曽根隆実 「改元」をめぐって 多田光 柳多留二十九篇輪講(三十三) 信濃の狂歌(六十四) 【三、上田・小県地方の狂歌(26)】チ、上田地区(1) 浅岡修一 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 句評 けんえん 丸山山彦 課題「手…

十一月

▼豚(とん)競争というのは、並んだらすかさず号砲を鳴らし、勢いよく尻を叩いて走らせる。何をされるかわからないとばかり、右往左往、ゴール何か目に入らぬままに迷走。中には一目散、直走してゴールを突破、まだ目的標識を睨んでの突進となり、人間どもが…

平成元年11月

わが町のたわわに富めるナナカマド城近く旅人という打ち合わせうそ寒い話炬燵でキチンと聴く為にする気負い明るいときだって気がつくとないもの尽くしで性が合う身に合ったしごき思い出だけはあるさりげなく鈍い頭を泣かせない大に小に咎かばい合い振れ太鼓…

五六〇号(平成元年11月号)

題字 斎藤昌三 表紙 表情 石曽根隆実 演歌と川柳【―見えないものを書く―】 江端良三 柳多留二十九篇輪講(三十二) 信濃の狂歌(六十三)【三、上田・小県地方(25)】 浅岡修一 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 句評 わがみち 丸山山彦 課題「味方」 …

十月

▼腰が痛いとも言わず、年寄りだけの川柳句会を続けてもう十年を越えた。一番上は米寿を数えるがなかなか達者、耳が少し遠い。 余興の座意外な人が裏を見せ 呆仙人 余興だと思えずしんみり涙して 照子 それぞれが創意をのぞかせる。 なつかしいセピアの写真色…

平成元年10月

わが齢を光らす願いこそ大事歳測りつつそのうえの磨きかたつらい日がまた来ていても負うべくもすすき穂のやさしさいのちふと思う駅弁の見る味だけで過ぎてゆく見残した古きがいくつわが胸に足伸ばし寝心地いまも貰ってた政治参加度合いの勘に悔いなきや見直…

五五九号(平成元年10月号)

題字 斎藤昌三 表紙 おっとりと 石曽根隆実 信濃雑俳書解題 (二七)俳諧菖蒲草 矢羽勝幸 信濃の狂歌(六十二) 三、上田・小県地方の狂歌(24) 浅岡修一 柳多留二十九篇輪講(三十一) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 句評 やまどり 丸山山彦 課題…

九月

▼数少ない私の蔵書票のなかの前川千帆版画「雲雀」は二度摺り、本誌題字の斎藤昌三主宰「書物展望」に気に入られ、表紙を飾って貰ったことがある。尤も私だけでなく毎号諸氏のリブリスが紹介されていたが。 ▼「白と黒」の題簽も表紙版画も棟方志功。版画題名…

平成元年9月

試歩らしい人に後れて朝風よ目を覚ます尿意おのれがいとしいか人の為世の為ほどの腰弁当蔵書票青春の気を啓いてく風の便り友の痴呆のねんごろにどの箱も罪の償い相容れる真夜一句ここに生まれて新しや党是ややゆるめた顔を整える選良の背に課されたる経綸度…

五五八号(平成元年9月号)

題字 斎藤昌三 表紙 お澄まし 石曽根隆実 古川柳は人間の実性である【―初代川柳翁二百年忌に想うこと―】 東野大八 柳多留二十九篇輪講(三〇) 信濃の狂歌(六十一) 三、上田、小県地方の狂歌【(23)】 浅岡修一 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 句…

八月

▼何々太鼓と称する各地独特の撥さばきの競演が行われるようになってことしで三回目。八月初め、真夏の夜の祭典は国宝松本城中央公園広場で響きわたる。 ▼北海道倶知安町の羊蹄太鼓、山口県豊浦町の青竜太鼓が遠くからやって来、いくつかの趣向を凝らしての出…

平成元年8月

おとろえの自分らしさにくるまってどんでん返し傷つくだけに鞭とするほとぼりの醒めた冷やかさを貰う伯仲のここに極まる根を生やしゆるすぎた箍が見事に打擲す失言と苦言が絡むパントマイム動じない未来図ゆめを引き戻し摑むもの持てりさすがに諍わず躍り出…

五五七号(平成元年8月号)

題字 斎藤昌三 表紙 活気 石曽根隆実 停年以後(二) 節秀夫 信濃の狂歌(六十) 三、上田・小県地方の狂歌(22) 浅岡修一 柳多留二十九篇輪講(二十九) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 句評 しんじん 丸山山彦 課題「進む」 玉井玲翠選 「沈黙」 …

七月

▼つい億劫になったりして、このところさっぱり旅はしていない。旅中吟などという気の利いた収穫は縁がうすく、あまり自慢にもならず、ひとりすましをしている始末である。 ▼寸暇を埋めるべく、すすんで旧跡を訪ねた旅便りいただくことが割合多く、ふと羨んだ…

平成元年7月

人の振り見てから怯るややしばし足萎えのことわりさすが蔵めおく若き喪がつらくて骨のぽくり鳴るまだ稼ぎ助くおのれが可愛いかするすると挑む奈落の谺して低落へ手を貸すドンか砂時計もたもたとじりじりとさて絵にならずたかくくるいよいよ喜劇への繋ぎ攻防…

五五六号(平成元年7月号)

題字 斎藤昌三 表紙 明るく 石曽根隆実 停年以後(一) 節秀夫 柳多留二十九篇輪講(二十八)信濃の狂歌(五十九) 三、上田・小県地方の狂歌(21) 浅岡修一 合同句会【川柳しなの、川柳まつもと、川柳山ぐに 合同句会 六月十一日 松本市中央公民館 宿題「…

六月

▼山路閑古さんが昭和五十二年四月十日に他界された。その追悼号を出そうと思い立ち、三高時代の同級生で莫逆の友人である比企修さんに相談を持ちかけ、多くの執筆者の快諾を得て、拙誌九月号に間に合った。 ▼何かの折、まだ戸山町におられた頃の比企さんを訪…

平成元年6月

裏道に擁し大魚をまた遁す追究の逸れ矢は悔いに雪くべく大凡の落ち絡まんと雄蕊雌蕊お粗末に終始ジンクス眠くなる一本がのたうつどこかの風景で即妙を生む酒のゆたかさ矩越えずやさしかり遠出の露の花ながら生々流転ひたすら思い止まざり数ならぬ身の程辿る…

五五五号(平成元年6月号)

題字 斎藤昌三 表紙 今日も元気 石曽根隆実 雷電為右衛門探求 小島貞二 信濃の狂歌(五十八) 三、上田・小県地方の狂歌(20) 浅岡修一 柳多留二十九篇輪講(二十七) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 句評 かんれき 丸山山彦 課題「郊外」 所典夫選 …

五月

▼ためらうことなく、町民が挙って火難除けの祈願に出掛ける。ほど近い山の中腹にある場所まで、ハイヤーを降りて一段々々と昇ってゆくと、一望見晴らしのよい市街地が展開して見える。 ▼待ちかねていた神官が招じ入れやがて祝詞が始まり、みんな頭を垂れて恭…

平成元年5月

技ありと大方の目もしたたかに安眠につながるいちまいの稼ぎ身に覚えあっての問いの誘い水おのれを知るべくいくつかの橋を縫うまどろみの淡く世過ぎの姿持つ帰りなん寄る辺の花をかんざしに週明けにもたれ赤い鬼青い鬼まじまじと色付いて来ぬ貪政は内にして…

五五四号(平成元年5月号)

題字 斎藤昌三 表紙 無邪気 石曽根隆実 「雨譚註万句会」より抄 鈴木倉之助 信濃の狂歌(五十七) 三、上田、小県地方の狂歌(19) 浅岡修一 柳多留二十九篇輪講(二十六) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 句評 せんせい 丸山山彦 課題「一本立ち」 …

四月

▼二月九日付朝日新聞の天声人語の最後に「人と野生動物は(非常の時以外は)すれちがい共存が望ましい」の読後感として三月十五日付声欄に清水雪枝さんの「タヌキ君たち少し残してね」の投書があった。小諸在住のわが誌友だから馴染み深い。 ▼千曲川の河原に…

平成元年4月

囁きは春でうなずく胸のうち群れをなす鳥の痛みも同じくて叱られた年寄りぬるい茶を前に運と根残り少なもそれがある退陣の轍惜別とも違う栄光の座を去る濁り捨て残し不倫後ずさり倫理はしかめ面受け皿の白いちまいの見せ返し天誅の一撃を俟つ根の深さ旗はま…

五五三号(平成元年4月号)

題字 斎藤昌三 表紙 春先 石曽根隆実 中川の宿 帚木・空蝉の巻 花咲一男 柳多留二十九篇輪講(二十五) 信濃の狂歌(五十六)【三、上田・小県地方の狂歌(18)】 浅岡修一 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 句評 にせもの 丸山山彦 課題「雑魚」 深沢…

三月

▼雪をいただいたままで、あたりの山々は近頃の暖冬をキョトンとしたまなざしを向けているようである。冬は冬らしく、朝の寒気の身のしまる思いをするきびしさに馴れて来たせいか、少し場違いの季節の気まぐれがもどかしい。 ▼どっと暖かい日がつづいたあと、…

平成元年3月

読み切りで露悪に下が戻らない褒めといて自分を少し見つけ出す闇が好きだから緩める自浄力握り飯たしかに逃げる日がつづく弔問外交思いの丈を道すがら黙祷のキャンプ選手の画になって考えるデモと弔旗の熟れ合える野辺送り個のいくつかを数えんと慎しく内の…

五五二号(平成元年3月号)

題字 斎藤昌三 表紙 芽生え 石曽根隆実 明治後期川柳より 多田光 信濃の狂歌(五十五) 三、上田・小県地方の狂歌(17) 浅岡修一 柳多留二十九篇輪講(二十四) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 句評 ともだち 丸山山彦 課題「本」 永田きみお選 「熱…