1968-01-01から1年間の記事一覧

十二月

▽病院から屡々便りを寄こした。来年はまた孫が生まれるというたのしさを伝えてくれた。その阿部佐保蘭君が十二月十六日に逝くなつた。惜しい友人である。四つ歳上の兄貴であつた。 ▽娘の主人が大町市の昭和電工に勤められていた頃、録音機を持つて孫の声をテ…

十二月

掲出句なし

三〇九号(昭和四十三年12月号)

題字 斎藤昌三 表紙 丸山太郎 【”現代派”の難解と伝達性の問題について】柳誌十一月号評 東野大八 三月号資料紹介「滑稽集」訂正 英訳川柳名句選研究(10) 雑詠 大空 石曽根民郎 柳多留初篇輪講(六九) 句会報【やまなみ八月句会】

十一月

▽中央西線といつてもピンと来ないが、木曽路と聞くと、あああの檜笠かとすぐ思い当る。木曽節の歌詞にふれたがるのである。旅情とあわれさが先きに立つが、ここを流れる小さな川のせせらぎだつて、ほんとうにこころを洗つてくれる。黙つて腰をおちつけて眺め…

十一月

物音におびえるまことらしさが自分気がついたとき水ひたすらに流れ打てば響く言葉によきひとの姿身の上に降るこまやかさ雪と知りなだらかな道ありあたりを見廻し挿し変えてやる花もまた思いあり冬の花華やいでわれをひきしめ語らんとする友の瞳の祈るごと時…

三〇八号(昭和四十三年11月号)

題字 斎藤昌三 表紙 丸山太郎 川柳の「王政復古」【―朝日新聞「標的」の川柳談義について】 石原青龍刀 【エリート派とスカタン川柳】柳誌十月号評 東野大八 課題「親子」 吉江義雄選 英訳川柳名句選研究(9) 柳多留初篇輪講(六八) 課題「別れ」 矢幡水…

十月

▽いつの間にこんなになつたのかと、さてあやしんて見ても、たしかにそうなのだからどうしようもない。ただ黙つて見守つてくれるあたたかい眼のあることがわかつていて、それにすがりたい気持にもなる。そうかといつて、すがつてばかりいても、一向に進んでは…

十月

掲出句なし

三〇七号(昭和四十三年10月号)

題字 斎藤昌三 丸山太郎 【川柳と俳句の接点】柳誌九月号評 東野大八 英訳川柳名句選研究(8)【ママ】 窪田正寿氏追悼【本文なし】 雑詠 大空 石曽根民郎選 柳多留初篇輪講(六七) 句会報【九月句会・やまなみ七月句会・しおじり句会】

九月

▽何か考えごとをしなければならないような、追われた自分を早くおちつかせたく、誰よりも早くわがねぐらに急ぐ。ひつそりと、だが柱時計が調子よく振子を響かせている。私が生まれる前からある時計らしい。父が傍ら保険会社の代理店をして当時、挙績優秀で報…

九月

掲出句なし

三〇六号(昭和四十三年9月号)

題字 斎藤昌三 表紙 丸山太郎 川柳時評【賞というものについて―「川柳塔」の二賞に感じたこと―】 石原青龍刀 【変わりダネの味覚】柳誌七月号評 東野大八 窪田正寿氏追悼 遠い人=石曽根民郎 三度呼名を更えて=小松耕吉 我儘=三沢惣治 トンチ=一ノ瀬春雄 …

八月

▽工場を別に新しく建てて、郊外かなんかからそこへ毎日通う身分でも。細長い敷地、強制疎開で終戦一ヶ月前にぶつこわされた跡にバラツク建て。工場が主で寝るだけの狭い住家、だんだん継ぎ足して体裁をつくつていたまではよかつたが、近代化のスローガンが押…

八月

とざされた想いを撫ぜて雨降らす道ここにありすべてを賭けんとするか昔語らせ花たちの静かな瞳譲れない意地おちてゆく陽をとらえ道草のほどよき暇のいとけなや子の夢を抱え黙つて背伸びもすしよぼつかせながら雑音にも傾け負わされた荷をおろしまた歩き出す…

三〇五号(昭和四十三年8月号)

題字 斎藤昌三 表紙 丸山太郎 江戸川柳辞典漫評 大村沙華 課題「盗む」 高島盛人選 英訳川柳名句選研究(7) 川柳の歴史と展望 奥津啓一郎【朗】 課題「詫びる」 太田いわお選 柳誌七月号評【句がいいことは、いいことだ】 東野大八 雑詠 大空 石曽根民郎選…

七月

▽新潟県の出身であるけれど、山ノ内町湯田中に若くして医業を起し、地元の者に慈父のごとく親われ、誰にも笑顔を持つて接してくれた中島紫痴郎さんがこの六月の終り三十日に逝くなつた。八十七才である。 ▽長野県川柳大会には毎回出席せられ、川柳の野郎ども…

七月

世にいどむけなげな雫ひとつずつ巻き込まれまいぞ騒然と流れゆくおちつけおちつけ騒然と道つゞかせ涙置き忘れ騒然と働き蜂何もかも騒然とこの月の物憂くほんとうに言葉をしまい眠りにゆく貰う齢がうるさくなり寝て見せる虫を鳴かせ意味ありげな季節ひろがる…

三〇四号(昭和四十三年7月号)

題字 斎藤昌三 表紙 丸山太郎 暑中放談 西野小六 【気まま柳談】柳誌六月号評 東野大八 課題「働く」 田多井公平選 現代短詩に於ける文学的精神について 福島春汀 課題「快活」 所典夫選 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 英訳川柳名句選研究(6) 柳…

六月

▽戦争中の頃、民謡というものがしりぞけられ、買い求めてあつたいくつかのレコードをときどき土蔵のなかで、古ぼけたビクターの犬の画の入つた蓄音器のハンドルを廻しながら掛けて聴いた想い出がある。何かしら遠い幻のようなまたなつかしい自分だけの時間で…

六月

蚊帳の色あせその中に自分を置く飛び立つ想い地に浮く脚のその細さいつか行き着く道なるぞ踏まえし土向日葵の黄の限りの歌を聞くか黄の鮮烈に向日葵のいのち集り黄が倒れ合い向日葵の全き死友を弔う掌のたしかなるまこと求むべき道親しかれわれに長くやがて…

三〇三号(昭和四十三年6月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 川柳時評「明治百年と川柳」 石原青龍刀 課題「米」 小松耕吉選 柳誌五月号評【かぜひき柳だん】 東野大八 英訳川柳名句選研究(5) 不退翁のシヨート詩話【ほんとうの遊びの精神への小考察】 谷太刀良 雑詠 大空 石曽根民郎…

五月

▽どの提灯にも電灯が点いて、ずらりと屋上の四囲を飾つている。スカイビヤガーデンと銘打つて、夏の夜空を仰ぎながら渇を慰やす人たちを呼ぶのである。松本城に近いところにも、また繁華街のまんなかにも、それらしいビルが人恋しい顔つきをして黙つて立つて…

五月

なだらかな道はこころの隅に置く物情騒然と弱き身にくりかえししかはあれどめくるめく日を避けも得でひとの憂いがわかつて来て藤垂れ下がり決断を迫られ物欲しげなる眉よ緑濃し別れのにがさとは別に叱つてくれるものがない酒ひとり野の仏持ち運ばれた同じ貌…

三〇二号(昭和四十三年5月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 柳誌四月号評【川柳は乱世のときである】 東野大八 堀豊次論・抵抗主義の破綻(2) 江端良三 課題「神馬」 山岸きよし選 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人 英訳川柳名句選研究(4) 柳多留初篇輪講(六三) 輪講の<大滝…

四月

▽何か好きな言葉を聞かせてくれといわれたら、気取つたつもりではないが(夜目遠目傘のうち)をあげる。古い言葉だが、人情つぽいものが含まれ、ツンとしていないのがよい。色つぽさがあり、つつましさもある。五、五と並んで調子が揃うので、口のなかでうま…

四月

革命の前夜のうたげ散つてゆく革命の夜明けとならざりし君等よこの子持てる親昂ぶる念ずるかぎりぎりと言う若者の持てる石楯に音するともがらの怒りかな傍観者ひたに繋がらんと求め角材をおさめ戻りのたそがれよしおらしく選ばせる幕垂れ下がり暗殺のあわれ…

三〇一号(昭和四十三年4月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 堀豊次論・抵抗主義の破綻(一) 江端良三 柳誌三月号評【本格川柳のトリビアリズムの正体】 東野大八 英訳川柳名句選研究(三) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人【吟】 酒粕汁 向山雅重 柳多留初篇輪講(六二) 句会報【…

三月

▽仕事がすんだあと、仕事といつても川柳の仕事ではなく、生ききるうえの仕事のことだが、ようやく春めいた庭におりたつて、草木の芽生えをたのしむのである。犬はやつぱり鎖につながれて、土蔵のわきにやすらいの蔵のわきにやすらいの棲家のなかからめぐり来…

三月

掲出句なし

三〇〇号(昭和四十三年3月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 資料紹介「滑稽集」【文化のネタ帳】 延広真治 【翻刻「滑稽集」】 アタマとシツポ【柳誌二月号評】 東野大八 課題「ねたみ」【ねたむ】 上条義郎選 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 柳多留初篇輪講(六一) 句会報【一…