1963-01-01から1年間の記事一覧
▽わが愛犬は従順である。前の晩開放されていた自由に感謝したおももちで、私が鎖の音をさせるとしおしおと近付いて来て首うなだれる。そしていつものように自分の朝の出発に観念してくれるのである。首に拘束の時間をゆだねるときのしおらしさよ。 ▽そのとき…
ちちははの齢に思いつき朝の寝覚め ハンケチのくしやくしやひと知れぬ賭 掛軸にこころの隅を見せてしまう 犬が仔を生む夜のしじま自分に来る 犬の鼻湿つてやすらぎをととのえ 人のとが見過ごし小鳥籠明るく 酒にがく氷雨は罪をあかしゆけ みにくさの向うに吹…
題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 柳多留初篇輪講(十三) 不及外伝読後 大木笛我 さぞや濡れつら 向山雅重 課題「孫」 森山静園選 「閉じる」 竹内伊左緒選 「告白」 矢幡水鏡選 川柳と美 岩本具里院 【‐川柳は定義されないか‐】 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦…
▽青森市にこの九月出掛けた折、津軽凧の下絵が欲しくて民芸店に寄つた。そのままの大きさのものそれに模した色紙や絵はがきがあつたが、どうもけばけばし過ぎて気に入らず、骨董屋にあつた妖艶な女の顔みたいな武者絵に惚れこんで買つて来た。部厚い額縁のな…
流されまいとひたぶるな耳を揃え あぶらぎるちからなし日を重ねおく 大き子の静かに眠るわれは眠らず 齢を意識するときなかなかに克ちたくて 冬に育つ花の黄胸にうめる ここに生きてはためく肌を忘じゆく 酒は姿をひそめわれを可愛がる 子は大きく追う言葉も…
題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 バラは海でない 山本芳伸 【‐句は思想でもあるためにも‐】 課題「丸い」 高嶋盛人選 「好き日」 遠山栄一選 柳多留初篇輪講(一四) 伊太古の死 横山三星子 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 星華集(自選) 山岸実茶 合…
▽わが愛犬は従順である。前の晩開放されていた自由に感謝したおももちで、私が鎖の音をさせるとしおしおと近付いて来て首うなだれる。そしていつものように自分の朝の出発に観念してくれるのである。首に拘束の時間をゆだねるときのしおらしさよ。 ▽そのとき…
ちちははの齢に思いつき朝の寝覚め ハンケチのくしやくしやひと知れぬ賭 掛軸にこころの隅を見せてしまう 犬が仔を生む夜のしじま自分に来る 犬の鼻湿つてやすらぎをととのえ 人のとが見過ごし小鳥籠明るく 酒にがく氷雨は罪をあかしゆけ みにくさの向うに吹…
題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 柳多留初篇輪講(十三) 不及外伝読後 大木笛我 さぞや濡れつら 向山雅重 課題「孫」 森山静園選 「閉じる」 竹内伊左緒選 「告白」 矢幡水鏡選 川柳と美 岩本具里院 【‐川柳は定義されないか‐】 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦…
▽頼まれるときに、さて自分でこれを引受けて果してうまくやれそうかという判断がつかないままに先方で早呑み込みをしてしまうことがある。つまり向うできつとやつてくれるのだろうという計画があつてのことだからだ。それだけ目指してくれたのを好意に持つて…
髪うすくなる安堵並んだ友と 妻を置き酔いにまぎれている卑怯 齢のなかで肌の疲れを噛んでおく 隠れ来て分別顔の子に向い 子は片付けずそれには触れず林檎むかせ 蜻蛉朱に染まり信濃をあなどらず 人並に苦労を語らんとしておかし ほころびを見やる静かなわが…
題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 川柳も屁であり得るか 岡田甫 柳多留初篇輪講(一二) 鹿の子餅(川柳江戸名物志5【6】) 花咲一男 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 星華集(自選) 岩井汗青 古川柳信濃めぐり(一〇) 石曽根民郎 【‐一日一話風に‐ …
▽徐行しながら列車が青森駅の終着を告げるとき、プラツトホームに手を振りながら会釈してくれる人を見付けた。工藤甲吉さんだと思つた。迎えてくれたのである。聞いてはいたが成程長いプラツトホーム。でも東京駅の拡張でつい先頃その長さを越されたそうな。…
旅とわれは 縋る身がみちのくの夜の秋にしずめ 津軽と下北の間の海を渡る星 果てと思い来てなつかしや顔並ぶ 石中先生と会いたし旅は気散じな ねぶた幻想土のぬめりの人くさし 雨ぞ降る十和田湖の名を求めゆく せせらぎの名札目に入る旅愁なり 裸婦像のほど…
題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 吉田一保 中村幸彦 【大阪講談中興之祖・舌耕文芸史資料断片五】 東海道風傾けて 高木統他郎 【‐定期便川柳同乗記‐】 課題「開く」 糟谷鼠介選 柳多留初篇輪講(一一) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 合評【「道」】 …
▽うちの犬も年寄りになつたと思う。十歳をはるかに越している。人間ならさしむき老齢である。皺くちや婆さんというところ、寄る年波のまにまに腰が曲つて杖を突きたいだろうが、あの風采ではそうもならない。 ▽飼主に自重をうながす世評が手伝つて、このとこ…
みにくい音がかすめるこの小さな善意 よどみなく偽りの舌長く赤かれ くずれくるからだ静かに鎖となる 下着ひそかに払いのけたい記憶 背景を整え野望燃えてくる 自分が可愛くてよごれあれど目をつぶる 軽き疲れ悔いに似てこの齢を思え よごれた影をふり払い若…
題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 柳多留初篇輪講(一〇) 前句附と遊女 阿達義雄 老残二柳人の記 東野大八 高山の湖水 横内斎 課題「尖る」 豊島好英選 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 古川柳関係記事掲載目録3 古川柳信濃めぐり(八) 【−一日一話風…
▽大阪へ行くのである。せかせかと松本駅を発つとき、きようは日本アルプスが曇つていた。木曽路を過ぎるとき、しみじみとしたおももちで雨が煙つて来た。ひとりの旅人を感じた。 ▽車中、「番傘」七月号を読む。「苦楽帖」で岸本水府さんが(私の肉筆句集)の…
旅人として濡れ給いどじよう汁 どじよう汁名あるひと名をかくし得て ゆくすえをゆだねる膝かどじよう汁 やすらぎのひと知れずこそどじよう汁 どじよう汁遠くに雨を煙らせる 小娘の帳場にしずむどじよう汁 どじよう汁ふるき名残りをくぐりゆく のぞみ持つ顔て…
題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 古川柳の構成 山村祐 柳多留初篇輪講(九) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 江戸(柳語雑考) 花咲一男 【木村捨三先生の霊前に】 古川柳関係記事掲載目録2 古川柳信濃めぐり(七) 石曽根民郎 【−一日一話風に−八月…
▽親睦という意味もあつて第十四回新潟県下川柳大会にぶらりと出掛けた。六月九日が大会当日だがその前日の夕方、新津に着いた。 ▽昭和二十五年にその第一回と目される大会に長岡市へ行つたことがあつた。山田凡楽さんや深田白扇さんの肝入りだつたと思う。お…
しめやかに葬る人かず山へ向い ここに住む想いしずめて山近し 言葉足りず山肌の蒼深まさり 山の見える町駅辨の声をさがし トンネルいくつ果てある旅も嬉しかり 電柱は山に消え生き当てるべく 高山植物そのまま雨は頬を濡らし 山を愛す人生もまたそこにあるか…
題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 柳多留初篇輪講(八) 日本橋の鬼(川柳江戸名物志5) 花咲一男 続・常識に還れ 江端良三 古川柳関係記事掲載目録1 雑詠 大空 石曽根民郎 山彦集 同人吟 古川柳信濃めぐり(六) 石曽根民郎 【−一日一話風に−七月の巻】 句…
▽小諸といえば島崎藤村を感動させた町である。懐古園には有名な「小諸なる古城のほとり」の詩碑がある。ことしは長野県川柳大会会場に当つている。松本から小諸へ行くには下り列車で篠ノ井駅乗換え、信越線を上つて利用するのが普通である。趣きを変えて小海…
ひとの善意の底にある酒のしずく 一枚の絵は強いることいま忘れ 蝋燭の灯のゆれにさえ目を覚ます 子が大きくわが胸うちをとらえゆく いたずらにこころの角をぶつつけ合う 厨の音の正しくて子を並べ この闘いの向う鳥に草に名はありき 親ちぢこまる歳にあり笑…
題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 山積する柳界の問題 岩本具里院 【−川柳PRは時期尚早−】 課題「スルメ」 太田いはを選 柳多留初篇輪講(七) 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 長縄今郎君追悼 【寄稿者 石曽根民郎・岩井汗青・上条義郎・木戸岡由湖・…
▽こんな田舎にいても友だちは訪ねてくれる。都会の匂いを持つて話しかける。ありがたいことだ。東京の高木能州君につづいて渡辺蓮夫君がやつて来た。 ▽その友だちから私は殊更吸収しようと、ムキになつて対応するのではない。雑談のうちに私は私なりに求める…
掲出句なし
題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 柳多留初篇輪講(六) 現代俳句と川柳との限界について 福島春汀 【河野春三作品集『無限階段』にふれて】 平沢左内(川柳江戸名物志(五)) 花咲一男 課題「名物」 土田貞夫選 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 古川柳…