十月

   髪うすくなる安堵並んだ友と


   妻を置き酔いにまぎれている卑怯


   齢のなかで肌の疲れを噛んでおく


   隠れ来て分別顔の子に向い


   子は片付けずそれには触れず林檎むかせ


   蜻蛉朱に染まり信濃をあなどらず


   人並に苦労を語らんとしておかし


   ほころびを見やる静かなわが習い


   かゝわりもなし山は雪ひと稼ぐ


   冬の花敗れし翳を忘れゆく