1978-01-01から1年間の記事一覧

十二月

△記念番組だったと思うが、ゲームのやりとりがあって、舞踊家だとか組合の役員とか婦人会の幹部が入り乱れて競い合う。他愛のないようでいて、さて不真面目でも本気でもないのもいけないから、ほんとうは冷汗をかきながら出演した。民間放送のテレビで、私は…

十二月

結論の出ぬうち逃げの手を加え もんどり打って見せて気がつくうすっぺら 混迷の見出し筆者も顔を出す 紛争に年賀の束の重たさよ 気が抜けて年賀が届くゆきわたり 根っからの正直でもなし見つめられ 民情にうすく今度の軽い風邪 灰色へ全く馬齢重ねたり ぬる…

四二九号(昭和五十三年12月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 続・明治の時事吟 浜田義一郎 大都会の市営住宅に住んで 柳君子 ふるさと信州を憶う 近藤とおる 一茶と八代 佐藤卜占 諤庵柳話(二十五) 田畑伯史 雑詠 大空 石曽根民郎 選 昭和五十三年長野県に於…

十一月

△そんなに早く目が覚める方でもない。友達に聞くと五時に何となく夜明けを感じるようになって、少し早すぎるではないかと、日中は頭がぼんやりしているという。それでも困ると思う。 △寝つきはいい。家内が今日あったことを話すべく、頃合いを見て話し掛けた…

十一月

ほんとうの姿だと知る短かり 出直しのおくれに失す飾らない 目立たないありよう意識して座る うたがいを知らぬその目を負うて来た とどめゆく果てあり仮りの身と思い 望まれたその日だったと通り過ぎ 順応に向けておちつく自分なら 生き生きと物のためしをく…

四二八号(昭和五十三年11月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 信濃雑俳書解題 (十)はいかい霜の床 (十一)誹諧千載秋 (十二)はいかい浜のまさご 矢羽勝幸 川柳と道祖神 山岸竜清 佐渡のつれづれ 浜本千寿 雑詠 大空 石曽根民郎 選 柳多留三篇輪講(三十)

十月

△「頭掻いた、憎い、ニクイ」と囃し立てる。三人で揃って声を挙げるので賑やかだ。五年女と一年男ははっきりするが、三歳女の方は二人の声を真似るのが精々で、どうもあやしい。 △いなごを畳に這わせて面白がる恰好は、いなごばかりが景物のようでもなくなる…

十月

ひとりして雨もたいなし妻と聞き 打ち寄せる波呼んでいる波すぐそこに 留守と知る秋草ただに目に残し 友恙ありや昔を思い過ぐ そそくさと散歩わが足馴染みたし 定命に行き着く契りよこたわる 乱れありわがはしたなさ叱り置く 無下にことわるまでもなし弱き身…

四二七号(昭和五十三年10月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 「信州の祭りと行事」と 「古川柳信濃めぐり」 江端良三 「夜明け前」より 多田光 郷愁の街かど 電気館の大活動写真 下平満 雑詠 大空 石曽根民郎 選 近江盆地 美濃部貞 柳多留三篇輪講(二十九)

九月

△本誌七月号に吉田笙人さんが書いた「永代橋惨事とその手紙」では、その情況をしたためた江戸からの手紙を紹介していたが、たまたま杉本苑子氏の「風ぐるま」を読むと、文化四年八月十九日、警備に当たった渡辺の目の前で、橋板の惨害が起り、最愛の妹といと…

九月

追っかけてゆくひと秋を知らないな いつか見た夢遠いとも近いとも あたたかい気持ちいのちを抱いたのだ 儲かったとは銭かねのこと避けて おのろけになって静かに垂れる幕 右を見てうるさい顔が左にも 何故かうたいたくてははっきりする自分 ちょっぴり涙もろ…

四二六号(昭和五十三年9月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 諤庵柳話(二十四) 田畑伯史 いなご 向山雅重 雑詠大空 石曽根民郎 選 平井蒼太のこと(三) 石曽根民郎 柳多留三篇輪講(二十八)

八月

△ことしは思いのほかに劇的な試合が多くて、甲子園高校野球フアンを大いに湧かせた。ハッとする場面に出っ喰わすと、すぐに奇声を昂げる私は、しばしば家族たちを驚かせ、それにつられたみんなを合歓にうながした。野球では私にも想い出がある。 △松本中学五…

八月

道連れのいつか別れを思いやり ほんとうの姿の際にからまって 寄り添いのほどほど離れゆく雲よ ことわりのたしかなさだめ背負いながら 閉じる目の思いなしただ安けきや 消されゆく果てはしなくもおもい過ぐ 愚かにもさがさんとするもうひとつ 自分の影を拾い…

四二五号(昭和五十三年8月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 小宮山雅登句集「昏れて」評 自らの詩を詠う 江端良三 信濃雑俳書解題 (八)俳諧華の笠 (九)はいかい桜もみぢ 矢羽勝幸 雑詠 大空 石曽根民郎 選 柳多留三篇輪講(二十七)

七月

△どうもうまく連絡がつかず、帰れそうもないとあきらめた連中だけが居残ることにきめた。駅前の旅館に交渉して、素泊りというわけで、ドヤドヤと狭い部屋に案内されたが、むし暑さがこもっていたのだから、何かかき分ける恰好になって腰を下した。 △長岡で会…

七月

試験管いのちの神秘寄る辺あれ 避暑に来てあつかましくも世を嘆く 大物の名に草臥れて夏の暑さ 沈むもの沈めてひとり語るのみ 頑なの解けぬ愚かさ目の前に 消えてゆく人ありやがておちつくか 言い分を聞くともなしによりかかり 仕合せとあとから気付く日の甘…

四二四号(昭和五十三年7月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 「平安」を惜しむ・新聞柳壇の問題 石原青竜刀 いなごと聖書と古川柳雑俳 多田光 雑詠 大空 石曽根民郎 選 永代橋惨事とその手紙 吉田笙人 柳多留三篇輪講(二十六)

六月

△自分の顔はこんな恰好だなあというくらいで、しげしげ見るまでもないから、そんなに気に掛けない。時にちょっと会わなかったばっかりに、白髪がふえた友達と話しながら、自分もこんなにふけているのだろうかと思って、たまには鏡と向かい合い、対面のうえで…

六月

お互いに宥す気でいて声を待つ 落ちこぼれ実の小さくてはずみきり 数えない齢だが向うから知って 波は打ち返しいま叱咤と聞くか 苦労しに生まれたというひとつ覚え 収まった話に揚がっている花火 けだるさにのめる妖しきひとの眉 子育てのまだ終わらない夏を…

四二三号(昭和五十三年6月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 信濃雑俳書解題 (七)俳諧桔梗ヶ原 矢羽勝幸 真山青果と川柳 東野大八 雑詠 大空 石曽根民郎 選 柳多留三篇輪講(二十五)

五月

△松本駅改築にともなって、周辺の商店街も建築ブームがつづいている。今秋、やまびこ国体を目指しての意気がみなぎる。わがしなの川柳社の句会場の市田屋はこのほど落成を見て、新装成った雰囲気もこまやかに、五月句会を二十日夜行った。 △みんな晴れ晴れし…

五月

いみじくも解き得て齢を気付かせる しくじりの老いにかぶせてさびしがり いたわりに甘え逃げようとする育ち そこまでは気のつかぬ振りからかわれ 忘れてはいない顔して出会うなり こだわりの消えない人と笑い合う 冴えぬ日の机の上を拭き終り まっすぐな道だ…

四二二号(昭和五十三年5月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 諤庵柳話(三十三)【二十三?】 田畑伯史 雑詠 大空 石曽根民郎 選 ブーツ・エレジー 所典夫 土佐日記 堀口塊人 柳多留三篇輪講(二十四)

四月

△部屋に油絵が飾ってある。石井柏亭のサムホールで、春先きにふさわしい画題。戦後、浅間温泉に疎開しておられたご一家と知遇を得、お願いしておいたところ、製作したから来いという。「君は画商かね」といぶかったが、大事にしますと答えた。知多半島を隔て…

四月

人の身を思う地変はよそながら 抵抗の真意の底で傷め合い 一介の職こだわらず長い道 四つ子五つ子並び長生きテレかくす やがて来るものの気に自分をためし 長寿いま静かな夢として遠し 齢かさねゆくおもさ持ちおこたらず 誰にもさからわずひとりのみちのり …

四二一号(昭和五十三年4月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 信濃雑俳解題 (六)佐久地方雑俳集五種 矢羽勝幸 雑詠 大空 石曽根民郎 選 民芸と旅のこころのすばらしさ 丸山太郎「雞肋集」に感銘して 東野大八 柳多留三篇輪講(二十三)

三月

△いまの林家正楽でなくて、この前の林家正楽さんに上野鈴本でお会いしたことがある。その頃、田中野狐禅さんが「紙と鋏の芸術」を本誌に連載中で、毎号正楽さんに送っていた関係もあって、刺を通じたらすぐに楽屋から出て来られた。信州飯田出身ということも…

三月

ブーツ族おそまきながら何か追い イルカの血怨念もなく弱者たり バックミラーこだわらぬ髭乗り合わせ 嫌煙権ちがった意志がまた生まれ 平穏を破る記事から今日の目覚め 今さら聞いた風なせりふもならず会釈する 天下の形勢のおかしさがじりじりっと 間違った…

四二〇号(昭和五十三年3月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 平井蒼太のこと(二) 石曽根民郎 絶望の月 句集「昏れて」をよむ 山村祐 「笈も太刀も」と大江丸について 吉田笙人 南房州白浜の海辺に 丸山太郎 雑詠 大空 石曽根民郎 選 柳多留三篇輪講(二十二)