1970-01-01から1年間の記事一覧

十二月

▽ドーランを塗るということでもなかった。髪を殊更直すという配慮もなかった。いきなり素顔のままでテレビは映像をかまえていった。信越放送から「ことしを振返る」−長野県スナップ70−に出てくれないかという電話があって、いそがしい時期でやれるかなと思っ…

十二月

裁かれる前の気強がり取材する 気に入らぬ判決公器腕を組み 舞台劇ここに政治の釘の音 拵えた筋書顔は見もしない 抵抗という新聞の大見出し 中国のスマッシュ当ったとは言わず 論説のひととこ民をはぐらかし いい湯だな猿も前向きして見せる わが首のずしり…

三三三号(昭和四十五年12月号)

題字・斎藤昌三 静かに醒めている山々の顔 【−句集「山彦」に関わる感慨−】 佐藤冬児 顎庵柳話(六) 田畑伯史 雑詠 大空 石曽根民郎 選 柳多留初篇輪講(九〇) 句会報

十一月

▽寒くなると億劫になって家に閉じこもりがちになる。事務所と工場を往復することで、ちょっとした運動をしているから、からだを全然うごかさないわけではない。でも外の風に逢うのも健康的によいことは百も承知で、朝の散歩はこちらで遠慮してしまい、仕事が…

十一月

僥倖のすりぬけてゆく霧のゆくえ 弔花ひたすらな媚びお前も生きてる 脱ぎすてしぬくみ目にある夜の終り 冬のビールのわがままな眸がわらう いとおしくわれより先きの吐息して 肌を遠くに忘れ白き夜の果て 欲望を涸らし手錠も従いてゆく なまめかんとして恥じ…

三三二号(昭和四十五年11月号)

題字・斎藤昌三 「山彦」評 詩人の寂しさを歌う 江端良三 信州うそくらぶ設立顚末記 所典夫 雑詠 大空 石曽根民郎 選 柳多留初篇輪講(八九) 句会報

十月

▽マイクに向う。アナウンサーと対談しているうちに電話が掛ってくる。それをアシスタントがいていち早くメモに取り、アナウンサーが復唱し、私に問いかける。 ▽あまりいままでやったことのないラジオ川柳番組である。とにかく情報時代の名にふさわしく、スピ…

十月

掲出句なし

三三一号(昭和四十五年10月号)

題字・斎藤昌三 戦後、定着した川柳を発見 石曽根民郎句集「山彦」を読む まつもと・かずや 顎庵柳話(五) 田畑伯史 雑詠 大空 石曽根民郎 選 柳多留初篇輪講(八八) 句会報

九月

▽物臭のせいか、それとも厄介のせいか、同級会を久しく開かないでいる。いつのまにか当番みたいなものを引受けてしまって、オイと声を掛けられると、早速会場をきめて通知を出す。ただそれだけのことなのに、大層みんなに重宝がられる。 ▽かしこまって、ここ…

九月

一浴の安堵を憎しとも思い 濡れていささかな人情にふれて戻り 言葉を押さえようとしない首の重さ 聞いたふうなせりふそちらも生きてゆく 弁舌のかげで傷つく人をえがき 齢をみな持ち立ちどまりまばたかず 物価高の波にもたげた顔のふれ合い ひそかな酔いのな…

三三〇号(昭和四十五年9月号)

題字・斎藤昌三 柳俳接点大集会の川柳だんぎ 東野大八 低唱の確かさ、暖かさ 藤沢三春 雑詠 大空 石曽根民郎 選 柳多留初篇輪講(八七) 句会報

八月

▽赤いチャンチンャコを着て赤い頭巾を冠った還暦祝いがあちこちでそれとなく開かれる。自分もその齢になったのに、こちらからそうした催しを考えずにいるので、この一年も半ばを過ぎてしまった ▽長野県川柳作家連盟では還暦句会の肝入りを毎年してくれる。還…

八月

またたいてくれるいのちに応えつつ 原稿料家族の贅を埋めてやる かきたてる灯のきびしさにある願い 道のりを聞かずあたたかそうな石 目覚めふと妻の寝息に触れてゆく うきあがる言葉のぞかれまいとして 静かなまなざしがある黙っていよう 握り飯頬張る老いの…

三二九号(昭和四十五年8月号)

題字・斎藤昌三 句の管理と姿勢 山本芳伸 顎庵柳話(四) 田畑伯史 雑詠 大空 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 柳多留初篇輪講(八六) 句会報

七月

▽南側の障壁にすがるようにしてうちの庭がある。細長く、ひっそりとしている。わざわざこしらえた小さな池も、工場を奥に移すことで、通り路が狭い関係で、とりつぶしてしまった。可愛い金魚や鯉はそれぞれ知人に分けてあげたが、みんな丈夫でいることだろう…

七月

夢の果てありと思いしふつつかな いくつ丘越えゆくあたり目に浮べ 蚊が飛んでくるたのしみも齢と知り なだらかでなかった道に置くひとり ひとりゆくこの生きの間を知り給え 公害へ人間の名を呼びさまし 若さについてゆこうとする言い聞かし わが枕よごれの底…

三二八号(昭和四十五年7月号)

題字・斎藤昌三 「山彦」を読んで考えたこと 石原青龍刀 顎庵柳話(三) 田畑伯史 雑詠 大空 石曽根民郎 選 柳多留初篇輪講(八五) 句会報

六月

▽日曜日になると新聞の柳壇の選句を午前中にすませることにしている。すらすらと書けるときがあるが、どうも筆が進まないで思うようにならぬ時もある。しばらく落着いた気分になってから、机に向う。筆も運んでくる。 ▽封をして速達だ。自転車に乗ったり、テ…

六月

こともなげに造花の美しさは余り ほんものとにせものが触れ合う言葉 裸が歩いてゆくくずれそうもない 肌の疲れを思いやる老いの陽だ 青春讃歌むらがる藪蚊叩くなり かさかさと音し手を置く長い旅 糧をぶらさげてゆくほんとうの話 時計は居眠らず反対も叫ばな…

三二七号(昭和四十五年6月号)

題字・斎藤昌三 【目次に欠:谺いろいろ−山彦の奥に 岩本具里院】 「山彦」を読んで考えたこと 石原青龍刀【目次のみ、本文なし】 顎庵柳話(二) 田畑伯史 雑詠 大空 石曽根民郎 選 柳多留初篇輪講(八四) 句会報

五月

▽あまり早い時間のでは大変だから、七時過ぎのにしょうと、予め打ち合わせておいて、駅に出掛けた。バスの都合でちよっと遅れたので、心配げに改札口の向うで待っていてくれた。各駅停車という鈍行だが、どの駅にも花壇を設けて旅の目をたのしませるようにし…

五月

不器用に生まれつきひとりたかぶり はしたなき夢を碎く生きに合わせ ゆれつつも世にいくつかの想い噴く 辿るこの道に堪えまた励ますか 一発に賭けるすべてを見失い 激動を貫ぬくほどのしじま欲し 狂おしき世に長らえて見届けず おかしな結末見くらべる頭揃っ…

三二六号(昭和四十五年5月号)

題字・斎藤昌三 第二回誌上川柳親睦の集い 老人 中川てい 選 上の空 石川富司 選 祖国 池口呑歩 選 これからの祖国 藤井比呂夢 選 雪国 山田止水 選 川柳への願いと祈りの結晶 【―川柳句集「山彦」石曽根民郎著を読んで】 東野大八 顎庵柳話(一) 田畑伯史 …

四月

▽地方にいると文通をすることで近付くより道はない。わざわざ会いに行く方法もあるが、引っ込み思案の方だったから、それはなるべく避けた。たまに大きな会合で行く機会があったりすると、じかに顔を合わせることが出来て嬉しい思いをした。教えを乞うという…

四月

パッと咲く花に余生を見て貰う 孫がある顔して語り合いながら 愚かしくやっと行き着く道とする 春の宵きめた話を持って来た 孫が病む寝にくい闇を手さぐりに よくなった孫のぬくみが歩くとき 哀調に酔いのこころがふるえるよ 傷つく日枕のよごれ明日洗う ひ…

三二五号(昭和四十五年4月号)

題字・斎藤昌三 批評と鑑賞【―現代川柳について】 松本芳味 川柳私論(三) 八坂俊生 雑詠 大空 石曽根民郎 選 柳多留初篇輪講(八二) 句会報

三月

▽どこの雑誌にもカラーはある。ペラペラなものでも、部厚なものでも、たしかにカラーが上向きか、維持かの違いはあって、とかく見る眼もいろいろだ。 ▽大きな理念に執拗な追求を試みるもの、流れのままに静かな想いをひたすもの、あきたらぬ感慨がひとつの壁…

三月

人は夢の甘さにふれる哀しとも 傷つくまいとする多弁とりまかれ もとめゆくこころの底をたたく雨 果てをとらえ得ぬままうしろ姿よ 何分のはからい遠く近くの風 一片の花びら誰を追い求め 胸にひろがる美しきそがいのち 値上りの怒濤にひとは枕して 行き着く…

三二四号(昭和四十五年3月号)

題字・斎藤昌三 「山村短詩」休刊におもう 石原青龍刀 本格川柳のナゾ【‐柴田午朗B雑選によせて−】 東野大八 川柳私論(二) 八坂俊生 雑詠 大空 石曽根民郎 選 山彦集 同人吟 柳多留初篇輪講(八一) 句会報