九月

   一浴の安堵を憎しとも思い


   濡れていささかな人情にふれて戻り


   言葉を押さえようとしない首の重さ


   聞いたふうなせりふそちらも生きてゆく


   弁舌のかげで傷つく人をえがき


   齢をみな持ち立ちどまりまばたかず


   物価高の波にもたげた顔のふれ合い


   ひそかな酔いのなか自分を抱いて


   控え目の対話のうちに生まれ生まれ


   眼鏡を拭くもどかしさ落ちてはならず