1988-01-01から1年間の記事一覧

十二月

▼松本城のほんの近い所に住んでいるので、その堀に沿っての散歩には手頃のコースになっている。大名町という町名はたしか福岡市にもあると聞いて、隔てて遙かな地を思いやる。 ▼区画整理の名目で数年前、新町名呼称の大手三丁目に決まり、一時は大名町の宛名…

十二月

向こうから呼び水誘うまでもなく 惜しがられじわじわ齢の熟むかたち まなじりに勇を決し正邪を分かつ 顔色を変えないという羽の傷み 酬いるに足りぬ今わを鞭打たれ 願ってもない道のりを覚えとく 物欲のとりこ素直に風邪を引き 空とぼけぐっと知名度のしあが…

五四九号(昭和六十三年12月号)

題字 斎藤昌三 表紙 浮き浮きと 石曽根隆実 カット 丸山太郎信濃雑俳書解題 矢羽勝幸 (1) (二六)俳諧女かがみ(二) 柳多留二十九篇輪講(二十一) (8) 信濃の狂歌(五十二) 浅岡修一 (14) 【三、上田・小県地方の狂歌(14)】 【キ、鹿教湯…

十一月

▼好きこそものの上手なれという俗諺があるけれど、道は深いだけにそうはおろそかに問屋が下ろさない。余程の素質が傑出していない限り上等になれず、こちらはただ便々と年月を閲すばかりである。 ▼ぐんぐん追い越され、あれよあれよと呼んでも相手は振り向き…

十一月

すんなりと顔に出さない締めくくり 胸に手を当てて短かい悟りとし 誰宛に決めぬ手紙をひとつ持つ 乾き切る道のり誰もいない筈 売り込みに気取らぬ腰の手弁当 真っ直ぐな性分羽に休め合う どう読まれようとしっかり者の尾で 旧悪のどこかで傘を傾ける ぬるま…

五四八号(昭和六十三年11月号)

題字 斎藤昌三 表紙 浮き浮きと 石曽根隆実 カット 丸山太郎信濃雑俳書解題 矢羽勝幸 (1) (二六)俳諧女かがみ(一) 日川協は何をしているか 東野大八 (6) 柳多留二十九篇輪講(二〇) (10) 雑詠「大空」 石曽根民郎選 (19) 信濃の狂歌(五…

十月

▲戦災にくらべれば強制疎開の立退きは、強制とはいえ自発的で、爆弾の大被害を蒙ったわけではないから、精神面から言ってもそれほどの打撃ではなさそうだが、自分の住まいから離れることはやはり惜別の情を深くしたものである。 ▲前号でこのことを書いたとこ…

十月

見残しのやわやわ流れゆくあたり 謙譲の美を前にして相せめぎ もろもろの出会いほんとの顔になる 置かれてる立場眠っている猫だ 利潤大たたかいはまだ終わらない 姉いもと久しやここに擁すべく 下りませ父母の御霊のあきらかに 揺るるがごと若き亡弟の胸に澄…

五四七号(昭和六十三年10月号)

題字 斎藤昌三 表紙 ぱっと明るい 石曽根隆実 カット 丸山太郎秋雨還郷抄 赤羽憑通 (1) ―ある兵隊の手記より― 柳多留二十九篇輪講(十九) (5) 信濃の狂歌(五十) 浅岡修一 (10) 【三、上田・小県地方の狂歌(12)】 【イ〜エ、東上田(7)、…

九月

▲戦争が激しくなってから、印刷工員が次々と召集され、残ったものは中老、女性だけで何とか切り盛りを余儀なくされた。私もじっとしておれず、見習い手習いで印刷機を動かすことがしばしばだった。 ▲町内の商店のなかには規模を縮小し、間口を狭くして何を商…

九月

掲出句なし

五四六号(昭和六十三年9月号)

題字 斎藤昌三 表紙 思い出にふれ 石曽根隆実 カット 丸山太郎お椀の話 内山一也 (1) 柳多留二十九輪講(十八) (5) 信濃の狂歌(四十九) 浅岡修一 (10) 【三、上田・小県地方の狂歌(11) 【イ、東上田地区(6)/13,千歳亭鶴友年(その6…

八月

▼「川柳研究」の記念大会のあった帰りがけ、ひょんな出会いで道案内をしていただいた親切さが忘れられず、お手紙差し上げたのが縁だった。 ▼小柄で私より歳上の、やさしい物腰の児玉はるさんは埼玉県の団地から小林【歌の編】律の「清親考」贈ってくれて大変…

八月

掲出句なし

五四五号(昭和六十三年8月号)

題字 斎藤昌三 表紙 山国はなれて 石曽根隆実 カット 丸山太郎殉教日本二十六聖人の人びと 佐野卜占 (1) 柳多留廿九【二十九】篇輪講 (十七) (8) 雑詠「大空」 石曽根民郎選 (12) 山彦集 同人吟 (16) 七月句会 (19) 【塩尻吟行七月句会 …

七月

▼立ちん坊みたいな恰好で、街中に待ち合わせをしているんだが、なかなか時間になっても見えぬときほどいらいらすることはない。目の前を通る人で談笑してゆきく連れのあるふたりが羨ましい。 ▼ひとりでなく、連れ添っているふたりの方は頼もしく、またそうあ…

七月

掲出句なし

五四四号(昭和六十三年7月号)

題字 斎藤昌三 表紙 夢に見る 石曽根隆実 カット 丸山太郎「地方雑俳集」から 多田光 (1) 柳多留廿九【二十九】篇輪講(十六) (7) 信濃の狂歌(四八) 浅岡修一 (11) 【三、上田・小県地方の狂歌(10)】 【イ、東上田地区(5)/13、千歳亭…

六月

▼堺市の小谷方明さんから田奈部豆本第六集「粉河団扇」を送って来た。ちょこなんと掌のうえに澄ました顔でご機嫌をうかがう愛らしい本である。七輪の火にサンマを載せて、渋うちわでやんわり風をおこし、脂をこめる匂いと煙が何ともなつかしい。 ▼粉河団扇の…

六月

蟻対話天の歓喜をほしいまま むかでたち運動会がまた間近 笑い飛ばしどんびきここも仮住まい 水すましぐいと一脚見られてた 御一行様にはぐれし天道虫 ロマンポルノ休憩乳房重たげな 補償費の通訳やおら膝正す 老い出直し赤い鳥居よもっと濃く 障る老い濯ぐ…

五四三号(昭和六十三年6月号)

題字 斎藤昌三 表紙 負けないぞ 石曽根隆実 カット 丸山太郎さようなら 節秀夫 (1) 幽霊を見た話 鈴木倉之助 (3) 柳多留廿九【二十九】篇輪講(十五) (5) 信濃の狂歌(四十七) 浅岡修一 (11) 【三、上田・小県地方の狂歌(9)】 【イ、東上…

五月

▼ここから西方に日本アルプスが眺められる。晴れた日にははっきりと雪をいだく常念岳、槍ヶ岳ほか連山がずっしりと重い。すぐ近く孫の通学する開智小学校の建物が並んでいる。窓は閉めっきりだから、元気のよい生徒たちの声は聞かれない。勉学にいそしむ机に…

五月

のし上がるいまものどもの目も据わり ワイセツの平仮名だけどつらい顔 盗聴に金さん越前遅からじ 亘るべき税のしるべを手暗がり 遠い日のこんなにしたり貌でいて 弁える風呂敷ふわり何げなく 眠らせて貰う一途の救いとも 不時着陸片肺にやわらかい杖 今日が…

五四二号(昭和六十三年5月号)

題字 斎藤昌三 表紙 よいしょ 石曽根隆実 カット 丸山太郎元気が出る句 ―新子鑑賞― 江端良三 (1) 課題「合格」 塚田素文選 (6) 「親類」 岩井汗青選 (7) 雑詠 大空 石曽根民郎選 (8) 山彦集 同人吟 (12) 句評 因縁 土田貞夫 (14) 四月句…

四月

▼桜前線北上が十日ほど遅れて、当地をゆるやかに過ぎて行った。みんなで賞でるもよし、ひとりで覚めるもよし、思い思いだ。ふと満開の桜の木の木版画があった筈だと気がつき、さがしていたら昭和二十三年四月号の本誌に関野準一郎さんの木版画「弘前城の桜」…

四月

もうすんだ話に緩むわが枕 おん身大切ぬくとくも小手かざし 脱け出して生ま身にいつか気づくとき 持ちかえしなおもこの世にかかずらう 遠くない道ゆるやかに満ちくるか 熱戦のドームを叩く雨の恣意 髭を立て髪の手入れの意志は問う ステッキと杖との違い修羅…

五四一号(昭和六十三年4月号)

題字 斎藤昌三 表紙 笑顔で 石曽根隆実 カット 丸山太郎医者・患者など 多田光 (1) 地蔵娘 花咲一也【花咲一男】 (8) 柳多留二十九篇輪講(十四) (10) 信濃の狂歌(四十六) 浅岡修一 (14) 【イ、東上田地区】 【13 千歳亭鶴友年(その3)…

三月

▼南と西に窓がある。とても明るい二階。昼間は先ず暖房器はいらないですみ。陽を採って温かさに備えるのだが、いくらかでも足しになっているのだろう。 ▼余程のことがあればだが滅多に昼日中ここでお茶は呑んだ覚えがない。妻も私も常に動いているせいである…

二月

ぐるり山々四季の歌世過ぎうた 低き山高き山その処を得 山連ね馴染み貌なる松本城 暮れなずむ山の麓の灯はたしか 山に育ち倦かず栖むべき日の慣い 友一人ふたり微恙が絡みゆく 心おきなく湯たんぽで洗う顔 刃のおもて鱗いちまいへばりつく ぬばたまの夜より…

五四〇号(昭和六十三年3月号)

題字 斎藤昌三 表紙 待ってたわ 石曽根隆実 カット 丸山太郎山の温泉の髪結床 阿達義雄 (1) 信濃の狂歌(四十五) 浅岡修一 (5) イ、東上田地区(2) 【13、千歳亭鶴友年(その2)】 柳多留二十九篇輪講(十三) (9) 雑詠 大空 石曽根民郎選 (…