八月

▼「川柳研究」の記念大会のあった帰りがけ、ひょんな出会いで道案内をしていただいた親切さが忘れられず、お手紙差し上げたのが縁だった。
▼小柄で私より歳上の、やさしい物腰の児玉はるさんは埼玉県の団地から小林【歌の編】律の「清親考」贈ってくれて大変参考になった。松本は小林清親にとって曽遊の地で、作品を遺しているのだから。
▼水系麗しくとはこういう筆蹟だろうと思うほどの書翰が私の手元にある。山本俊一さん、奥昭二さん、杉本葉津絵さん、竹内寿美子さんのお骨折で句集「むらさきの衿」が出来、その出版記念句会が昭和五十九年一月二十九日に深川清澄庭園で開催されたとき招かれたが出席かなわず、西来みわさんを通じて出席の皆様へ心許りの品を送ったがそのお返事である。
▼句集「むらさきの衿」を是非見たいという文章を読んだ。俳誌の「りんどう」七月号、渡辺映子さんの(或る川柳作家のこと)である。はるさんの作品に感動し、直接入院中のご本人に句集希望のお便りをしたのだった。
▼映子さんは昭和六十一年秋「パシナ」誌上、初めてはるさんの自句自解を聞き取るという形の紹介文で知ったらしく、この三月二十一日に逝去されたことがもたらされ、その前、二月二十五日にお見舞いの方に映子さんのお手紙の話が出たということだった。
▼未知だが、それほど見たいと願う映子さんに句集を貸してあげたら喜んで下さった。六月二十六日の追悼会に出席されたという。
    もう一度つぶやいてみた
         ひとりごと
 ちょっと ひとりごと言っちゃって、自分で聞くんですね、ひとりごとを。そいで、ああこういうふうに言ったなあ、ほんとに独りになっている、ということなんです。そうですね、自分がやったことをもう一度他人の目でみようとしている、そうでしょうか。「パシナ昭和六十二年秋」より
▼渡辺蓮夫さんは「NHK春秋」一〇号で名句鑑賞に
    会えるともとても思えない
         とも思う   はる
を採り上げておられる。
【難読字】