1996-01-01から1年間の記事一覧

十二月

同姓同名という人はあるもので電話帳や名簿などに見つける。親戚同士でままあるようだ。他意はなく偶然同じ場合、それほど気にしたりせぬ。 呼ぶとき南何某、北何某と俗称めかして、親しみを覚えさせたりする。 太郎、次郎のように生まれ順序を示すことが多…

十二月

申しおくれ立つほどもなく闇が近づく枯れた河やがて自分にこだわってそれとなくいたわりならばかく孵る身だしなみ装う季を覚えさせ老いは祿新調句帳延ばさんや心得しエスプリ鈍く老い得たり省察と緩急からめ老い糾す簡略の奈辺が掴め老いたるぞ流通の渦ただ…

六四五号(平成八年12月号)

題字 斎藤昌三 表紙 蔵書票・カット 丸山太郎 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 大空雑感 吉野圭介 暗がりの牛(二) 美濃部貞 十二篇はいふうやなぎ【き】たる略註(十七) 川柳評明和八年万句合輪講(六十七)【六十八】 【民俗雑記】塩市から飴市…

十一月

もともと麻生路郎門下生である私だが、交友を深くするために他吟社の人たちとも仲好くした。岸本水府の直筆句集「番傘抄」を大切にし、番傘関係の食満南北も刺を通じて親交を重ねた。 色紙のほかに 引越してからの原稿 よく運び 居間に飾ってある。絵入りの…

十一月

コメントの緩急およそ刻を読み十重二十重焚火景気の話上手分限者と億の悪しきがまた並び木の肌のどれも自分を剥き出して道なれややがて男を磨かねば寄せつつも波のたわごとだってある向き合える美醜の和み許したる引き算をしては歯がゆいくり返し泣き落とし…

六四四号(平成八年11月号)

題字 斎藤昌三 表紙 蔵書票・カット 丸山太郎 暗がりの牛(一) 美濃部貞 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 大空雑感 吉野圭介 信濃の狂歌(一二三)【七、長野県(三)】 浅岡修一 川柳評明和八年万句合輪講(六十七) 十二篇はいふうやなぎ【き】…

十月

同人土田貞夫さんが九月二十九日に逝去された。行年七十九歳。惜しい人を喪い感無量である。謹んで哀悼の意を献げる。 戦争の終わったあと、町内の秋山寿三さんが先導で、川柳作句をしおうではないかと募ったところ、三枝昌人、長縄今郎、寺沢正光、豊島好英…

十月

伴奏が欲しいか落ち葉向きを替えつらつらおもんみるにこだわった肩小賢しき金の一転よごしかた相殺の語活用高く跋扈する届かないところで虫がよすぎるよ真っ直ぐな道がきよとんとむこうでもまちまちに偉がる癖の終わる頃偽写楽とは気が付かずはにかむか願っ…

六四三号(平成八年10月号)

題字 斎藤昌三 表紙 蔵書票・カット 丸山太郎 『開化柳多留』の時事川柳 武藤禎男 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 大空雑感 吉野圭介 信濃の狂歌(一二二)【七、長野地方(二)】 浅岡修一 十二篇はいふうやなぎ【き】たる略註(十六) 川柳評明…

九月

格別コレクトマニヤでないが若い時から何か蒐めたい好奇心があったせいか、はがきブックにこれはと思われるものを挿しておいた。昭和五年が始まりで御子柴修一の自分で彫った版画の年賀状である。中学校の同級生で昭和三年に卒業した仲の良い友人。在学中か…

九月

うち紅を刷けば虫たちうなずいて軸替えて父の遺品にあやかるかどこで揺れてか一筋の祈りとしさもあらばあれ一陣の風を布くかくれんぼ真に迫るは甘い金箸束に洗うとえにし顔を向く返すのは諌める言葉とんがって明日は明日役者揃いの夢紡ぐ鐘いくつ老いの道草…

六四二号(平成八年9月号)

題字 斎藤昌三 表紙 蔵書票・カット 丸山太郎 雑俳秀吟抄 石川一郎 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 大空雑感 吉野圭介 信濃の狂歌(一二一)【七、長野地方(一)】 浅岡修一 川柳評明和八年万句合輪講(六十五) 十二篇はいふうやなぎ【き】たる…

八月

居室から向日葵がいくつか伸び上がるまま伸びたい姿勢で咲き誇っているのを見る。時期に家族の者が種を蒔き、それが育ったわけだが、わたしは殆んどと言っていい位、手伝わなかった。 風が吹くたびにゆらゆら揺れる向日葵が、何だか首のようにも似て話し掛け…

八月

身代金換算してる遥か迂濶に一行に遅れてもゆく惜しがって集まりの時間に早い自分抱くほころびに似たる思いのひと雫とてもぎらつく明日とかや殊勝げに闘いの虜に近しまた遠く頭痛からもみ出すうたの楚々と積む微恙捨て難しか友に腰揉まれ見舞いには御守り札…

六四一号(平成八年8月号)

題字 斎藤昌三 表紙 蔵書票・カット 丸山太郎 七月七日の?【ろこうきょうの「ろ」の漢字】溝橋の銃声 東野大八 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 信濃の狂歌(一二〇)【六、更級・埴科地方(二六)】 浅岡修一 十二篇はいふうやなぎ【き】たる略註…

七月

やっと頭痛がよくなってゆく気持ちではあるが、全快とはならないでいる。頭がどうも重くて仕方がない。 服薬はきちんと守って容態を説明するたびに、自分でいい加減に治らないものかなと溜息をつく。俳人の鳥羽とほるさんが雑誌を届けられ、そのとき頭痛の話…

七月

気弱さの頭脳を洗う世に習い警める言葉拾って一夜ふた夜老い同志小さきは旅いま掴み行き違い交わるまでの時を持し越えるみち痩せの気負いの見るまでに志半ばか深き渕とせん人間の声卓見に結ばせよいぎたなく二重奏してはばからず枯れてゆく具わればみじめさ…

六四〇号(平成八年7月号)

題字 斎藤昌三 表紙 蔵書票・カット 丸山太郎 飯島花月翁と漢文笑話 武藤禎男 信濃の狂歌(一一九)【六、更級・埴科地方(二五)】 浅岡修一 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 川柳評明和八年万句合輪講(六十三) 十二篇はいふうやなぎ【き】たる…

六月

医師といつも仲良くなっているのが健康上何かと注意してくれ、助言を与えて貰えるから安心だという。処方箋に記録して体質や性格など確認してある。 看護婦さんと顔馴染みで、診察券を忘れても顔パスで効く。医療費では毎年老人が独占して威勢がいいが、兎角…

六月

もののためしのかくばかり血のぬくさ平つたく寝くらべがいま始まったさにあらずひとのまことのゆれ合って凡人の安けさ拾う一呼吸いまわしき億のからくりぎっちらこすんなりと暮らしは違う踏ん張って通院の待つ人の靴揃う日も酒離れやむなき砦つくるがごと頭…

六三九号(平成八年6月号)

題字 斎藤昌三 表紙 蔵書票・カット 丸山太郎 蕪村の娘 石川一郎 信濃の狂歌(一一八)【六、更級・埴科地方(24)】 浅岡修一 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 十二篇はいふうやなぎ【き】たる略註(十二) 川柳評明和八年万句合輪講(六十二) 【…

五月

ときどきバスに乗るときがあって、席が空いていると具合がよいが、どうも立っている人を見かけると、こちらも同じように立っていなければならない。 あらかじめ身障者とか老人とかに許用される席があるのだが、それもご本人がその席の使用範囲を知らずに腰掛…

五月

傷つけばひとり寝床に甘えてくいく曲がりこらえ性なくただ堕ちるそれとなく遅れをとって回り舞台幌馬車は人を拾いつ星ちりばめ自らを打てば響きの閨深くあげつらうひとりぼっちのまだ覚めずこらしめのこそぐり何か虫がある遠去かる風景仲よしだったのに癒す…

六三八号(平成八年5月号)

題字 斎藤昌三 表紙 蔵書票・カット 丸山太郎 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 川柳評明和八年万句合輪講(六十一) 十二篇はいふうやなぎ【き】たる略註(十一) わたしのシベリヤ【ア】ものがたり(三) 浜【濱】本千寿 【民俗雑記】八十八夜のこ…

四月

屋根から雪を下ろすほど多くは積もったことがないが、寒さの方は負けまいとしてきびしい。北に行くに従って雪が降り易く大町あたりから多くなる状況だ。 ことしの冬で雪をかいた経験はない。しきりに県内の雪かきのニュースが伝わってくるとき、松本地方では…

四月

要校正スタンプは濃く仕事始め初校再校励ましの声背を押して見過ごしと手抜かりの字がまた躍り憶測の外なき伏せ字効きすぎる責任校正千慮一失への睨み執拗に舊字削字加点のいかめしく下駄履きの喚起うながす符の温さ神代種亮の名手を胸に今日も闘う校了を冷…

六三七号(平成八年4月号)

題字 斎藤昌三 表紙 蔵書票・カット 丸山太郎 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 十二篇はいふうやなぎ【き】たる略註(十) 川柳評明和八年万句合輪講(六十) わたしのシベリヤ【ア】ものがたり(二) 浜【濱】本千寿 【民俗雑記】卯月八日と釈迦誕…

三月

近所に犬を飼っており、誰か来るとしきりに吠える。鎖にしばられているときから滅多のことはない。放し飼いをすると顔馴染みだから嬉しがり、跳びついて私を面食らわせる。無邪気そのものでこっちも楽しくなる。 縛られているとき、急に自由になりたい時期が…

三月

てのひらに載る豆本の意気軒昂大辞典と遊び豆本のいのち豆本の瀟洒の粋を拾い出すエッチング孔版豆本更に孤独艶笑をちりばめ豆本低い腰幽玄の浮遊豆本棹さして麗しき天地豆本離さない気休めの滴り豆本につかまってまぼろしの鍵は豆本合点するてのひらにさっ…

六三六号(平成八年3月号)

題字 斎藤昌三 表紙 蔵書票・カット 丸山太郎 【川柳随想】わたしのシベリヤ【ア】ものがたり(一) 浜【濱】本千寿 川柳評明和八年万句合輪講(五十九) 十二篇はいふうやなきたる略註(九) 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 【民俗雑記】庶民の心…