1956-01-01から1年間の記事一覧

休刊

この月は休刊

十一月

▽甲府のころ柿の雨宮八重夫さんから、山梨毎日新聞に君の艶名が出てゐるから参考までに送るとお便りがあつた。堅いことで自他共に許して野暮つたいので兎角煙つたがれてゐる自分が遠い甲州にまでその艶名をほしいままにする報道とは全く意外であつた。とるも…

十一月

遠く降るは雪か敗れし眸を読ませ イヤリングはづす空虚を嘗めて来た 雲はひとつにならうとする誰も拒まず 手袋の穴去つてゆく愛の雫よ 冬木並ばせ暴言を救へない 世に負けゆく肌か松すつくと立ち その後 父の余命ふゆの流れにただよはせ 父はこの世の夢とし…

一七五号

表紙 冬日 丸山太郎 口絵 旧大分城 武藤完一 写真 桔梗ヶ腹 穂苅三寿雄 源氏物語の巻名を詠みこんだ川柳・小咄・落語 武藤禎夫 各地だより 三平・伯史・泥柳 【北海道だより=冬の此頃 高村三平 東北だより=斜視の弁 田畑伯史 九州だより=日本一の部屋 上…

十月

▽私も関係してゐる松本ペンクラブ会員の北沢喜代治さんの小説集「日之島の女」出版記念会が十月十四日に開催された。北沢さんは宇野浩二氏と永い間親しくしてをられ、この日宇野さんも見える筈だつたが、急に身体の調子が悪くなつて来られなかつた。文学を愛…

十月

この胸の底のあはれを知る酒よ おしやべりの酔ひのちからはお人好し 盃にこもれる深さただならず 友ありがたや座を立たず酔ひ給ふ さかしらに言葉の花火散る酒で 親一人ありそのゆゑの酒のしみ たましひの抜けゆく安堵あつて酒 わが齢にふれ合ふ酔ひのめでた…

一七四号

表紙 葛温泉五輪の湯 丸山太郎 口絵 山羊 武藤完一 写真 秋の白馬山麓 穂苅三寿雄 川柳時評 句集「きのこ雲」の意義 石原青龍刀 【 社会詩への道は開かれた 】 伊良子擁一氏に 川端柳風 課題「鞄」 水谷竹荘選 時事吟とは何か 雨宮八重夫 【 柳風氏の所説を…

九月

▽森雞牛子のことを本誌七月号に山本葉光さんが書き、本号でも佐藤秀太郎さんがその想ひ出を綴つてゐる。四月十七日が命日で今年は十三回忌にあたる。大阪の雞牛子と言へば、あまたある川柳雑誌のうちでも、その主宰する『三味線』の名は異色あるものであつた…

九月

老い父よ長かれ おしめ代へて老いの好日めぐるなり かばかりの寝酒の満てる五体あり 人欲しき部屋にて老いは孤独とも 遠き記憶かへらぬ舌の短かしや 呆けて寝よ口開けて寝よ老樹たり 憎しみを越えたるぞ老いは全し 臥して手を眺むる歴史ちさきよし ひととき…

一七三号

表紙 木崎湖畔の午後 丸山太郎 口絵 別府高崎山より 武藤完一 写真里山辺小学校の高楼 穂苅三寿雄 油を売る 中村幸彦 川端柳風氏に尋ねたいこと 伊良子擁一 各地だより 伊太古・葉光・白禿道人 【東京だより=六郷を渡つて 伊古田伊太古 大阪だより=新世界…

八月

▽さる人がやつて来て、旅館を開業するから旅館の名付親になつて貰ひたい、それから尚さしでがましいが、部屋の仕切りに掛けるのれんの図柄を考へて下さらぬかと慇懃に申込まれた。私にはちと重荷だし、かへつてぶちこはしになるとご迷惑だからと頭を下げると…

八月

近什 海女焚火ここに栖みつく肌がある ふんどしの塩からさ海女知り給へ 乳房ふたつ具へて海女は稼ぎ佇ち 体臭のうごめきに似て海女は病み 口笛は哀しとも海女濡れゆくよ 海女羞恥腰のくびりの見事さに うらぶれの灯と見ずに海女よこたはり 秋を知る海女の目…

一七二号

表紙 電柱のある風景 丸山太郎 口絵 百日草 武藤完一 写真 ぼんぼん 穂苅三寿雄 公孫樹―銀杏―鴨脚 比企蝉人 雅登の文体カルテ 江端良三 犬・雑草・江戸小ばなし 正岡容 各地だより 冬児・伯史・泥柳 【北海道だより=主幹交替 佐藤冬児 東北だより=貴族松島…

七月

▽週刊朝日別冊の「世界探検冒険読物号」の読者の椅子に吉野良三君の名が見える。(京美人に味噌汁を)の文中ににもあるやうに彼は信州人である。しかもしなの川柳社同人の県外唯一人のわが同志でもある。しなの川柳社では同人制といふことに経営的な意味合ひ…

七月

近什 沖縄の声の孤独を波が洗ひ 夏の灯も親しクイズに坐らされ うしの日の風もこよなきもののうち 大臣の宿題次ぎの逃げ言葉 すだれ越し小言幸兵衛すき通り 怪談へ恋のやつれの顔を寄せ ニツポンの縮図いゝこと遠慮して 遠巻きのまゝ暴力が移動する つまみ喰…

一七一号

表紙 河岸 丸山太郎 口絵 暑中御伺 武藤完一 写真 郷原の宿 穂苅三寿雄 麦酒のむ頃 山路閑古 鉛と金の識別について 石原青龍刀 【 平井一雄氏にむくいる 】 本町の句について 飄々子 各地だより 伊太古・葉光・白禿道人 【東京だより=○丸さん 伊古田伊太古 …

六月

▽週刊読売の臨時増刊の「現代奇人怪物読本」といふのがこの五月に出た。そのなかに三重県に住んでゐる西田武雄さんが、街の奇人・村の変人のひとりとして紹介された。西田さんは毎月一回必ず時局を諷刺した狂歌を書いてよこす。終戦の年に東京の生活を主張す…

六月

近什 蝶はおし黙らねばならぬ夕やけ雲 羽ばたきの音ある蝶の恋のしづく 蝶の羽の粉の憂ひの散りゆく日 毒舌をふさぎに蝶は大きい羽 蝶はわが影のいとしさから狂ひ 下手くその舞踊の蝶も克たんとし 蝶の夢彩を重ねて沈みゆく 羽たゝむ羞恥の蝶の病みはじめ 蝶…

一七〇号

表紙 梅雨 丸山太郎 口絵 高崎山の猿 武藤完一 写真 蝶ヶ岳 穂苅三寿雄 「柳多留」146篇と安南吟(上) 阿達義雄 「田舎樽」の環境とその周囲8 石曽根民郎 各地だより としを・伯史・泥柳 【北海道だより=柳談あれこれ 長沢としを 東北だより=砂漠 田…

五月

▽松本地方ではまだ〱テレビが普及して居ない。高価といふこともあるがよく写らないせゐもある。土曜日のNHKテレビのプロを見るとまんがくらぶといふのがあつて、宮尾しげをさんの名が見える。 ▽私が宮尾さんと知つたのは昭和九年頃、江戸小咄に興味を覚え…

五月

近什 ベレー帽智恵の孤独の暗き部屋 白壁の梅雨のしめりに置く別れ うすい鞄税吏は出世へと急ぐ ネクタイが首を巻く風そんな恋 のがれゆく紙幣の羽くろずむばかり 下手な横好きへな〱と坐らされ 習性に甘へる花もこちを向く 健やかである退屈さ雨が漏り こそ…

一六九号

表紙 地獄谷温泉 丸山太郎 口絵 深田石仏(臼杵市) 武藤完一 写真 藍がめ 穂苅三寿雄 感情の解放 佐藤冬児 【《涼子さんと雪子さんの作品評》】 神田祭(上) 正岡容 柳誌月評 橘祐 雑詠 大空 石曽根民郎選 各地だより 伊太古・葉光・白禿道人 【東京だより…

四月

▽しなの川柳社句会では研究互選を一題出す。初めは席題だつたが、此頃では慎重を期すべく自信ある作品への過程を与へようと宿題として時間を呉れてやつてゐる。一句。番号をつけて全作品を張り出す。ゆつくり出句者は目を通す。佳句に選んだもの一句、平抜に…

四月

近什 毛並とも書かれ人物論で足り 越ゆべきを越えてをとこに棲んでやる いぎたなく坐り指環に想ひなし 閨怨のまさぐる指を仕舞ふなり 滅びゆくものゝ祈りにおちこんで 死はやすからず青空と子の顔へ 誰も其処には居ない生きてくる言葉 夜のためのからだにも…

一六八号

表紙 春祭 丸山太郎 口絵 なまず 武藤完一 写真 ギシ鬼の岩窟 穂苅三寿雄 春ひらく 山路閑古 あんころ餅 向山雅重 柳誌月評 橘祐 各地だより 冬児・伯史・泥柳 【北海道だより=柳誌の多角性 佐藤冬児 東北だより=ねぶた 田畑伯史 九州だより=熊本点情 上…

三月

▽自分の句をこなされてムキになるやうでは、自分の句だけをよしとして人の句をよく見てゐない小心翼々型である。しつかりと心にかまへたものがあればあるまいし、また気にかけるほどのことでもない。また一方、これを素直に受け入れて自分の句の狭い視野に反…

三月

近什 老父微恙の三月 八十二全きほどに横たはり 寝て叱咤する老来の気を許し 老いの手のなほ指揮するやみな負かし 子を随へ孫を並べて病んでゆく かばかりの老いのひがみの夜半の酒 酒欲しと言ふ老いの瞳と合せゐし 一升瓶眺め安堵の老いに落ち 老い呆けの見…

一六七号

表紙 春めく 丸山太郎 口絵 春 武藤完一 写真 田代橋 穂苅三寿雄 信濃のサクラ 横内斎 雑詠 大空 石曽根民郎選 各地だより 伊太古・葉光・白禿道人 【東京だより=作句しない句会 伊古田伊太古 大阪だより=春待つ喜寿 山本葉光 四国だより=句会について 白…

二月

▽前号宮尾しげをさんの「お好み江戸小ばなし」のことを書いたら宮尾さんから、本人の著者には本が来て居ないといふお便りをもらつたが、これは早速小ばなしの材料になるんぢやないかと思つてひとり笑止がつた。 ▽それからまもなく古川久さんから「昔の笑ひば…

二月

近什 冬将軍山肌にふれ遠きを見る 年寄りの涙よごれて泣くにあらず 週刊誌蒼白き夢そして寝る 女の手ながらふ水に灯がはひり ゴムバンド手首に忘れ春よ来い のしかゝる習ひづつしり米俵 時を知る膝で疲れもたのしまれ 拾ひゆく齢のかそけき雪が降り 振返る道…