八月

     近什
   海女焚火ここに栖みつく肌がある


   ふんどしの塩からさ海女知り給へ


   乳房ふたつ具へて海女は稼ぎ佇ち


   体臭のうごめきに似て海女は病み


   口笛は哀しとも海女濡れゆくよ


   海女羞恥腰のくびりの見事さに


   うらぶれの灯と見ずに海女よこたはり


   秋を知る海女の目方をかろんぜず


   墓も夕暮海女の背は親譲り


   海女笑ふ果ては旅の身強ひるなり