1977-01-01から1年間の記事一覧

十二月

△ことしは暖かい冬を迎えたということで、晴れた日曜日、忙しくならないうちにと思って、お墓詣りをした。陽当りのいい小高い丘にある墓たちは、みんなそれぞれの生い立ちと終の栖のおちつきを得て、安らかに眠っている。拒んだ眼をせず、迎え入れるいとしい…

十二月

支持率の下降を弾く泳がされ 証言の重さを測るよその顔 わいせつに肩を怒らし論じ詰め 気に入った判決万歳が映り 赤字列車埋める小さな野暮用で 長老のさて知恵もなしくすぶって 窓口はただひとつなる声と聞く 良識の権化を気取るはびこらせ 考えが違う間合…

四一七号(昭和五十二年12月号)

題字 斎藤昌三 表紙 いしぞねまさかつ カット 丸山太郎信濃雑俳解題 矢羽勝幸 (1) (四)俳諧喜久合 諤庵柳話(三十二) 田畑伯史 (5) 雑詠 大空 石曽根民郎選 (9) 惜しい作家雅登 林田馬行 (14) 柳多留三篇輪講(十八) (15)

十一月

△落語の桂枝太郎さんが奥さんとご一緒にひょっこりやって来た。久し振りである。翌日ゆっくりお邪魔したいと言って、その日は美ヶ原温泉に静養とのことで、無理にお引きとめしなかった。 △きっと来るのだろうと心待ちにしていたが、夜、電話があって、神経痛…

十一月

身に覚えなきいたずらな鞭を見せ 曲りなりに静かな水と合わせたり たたかいの向こうの虹も画きいし おおよそを掴み笑いにまぎらわす ものごとの一心に触れひとりぼち ひとつの陶器のたたずまい許すなり なにもかも自然に帰りたがりだしか もろき世の聞きしに…

四一六号(昭和五十二年11月号)

題字 斎藤昌三 表紙 いしぞねまさかつ カット 丸山太郎諤庵柳話(三十一) 田畑伯史 (1) 高麗神社の将軍標 丸山太郎 (6) 信濃雑記 胡桃 胡桃沢友男 (8) 雑詠 大空 石曽根民郎選 (10) 柳多留三篇輪講(十八) (15)

十月

△ふと目を覚ますときも、どうやらみんな寝ているなと感じ、少し早い時間をさとってから、天井を眺めた気持ちで、何を考えたらよかろうと、暇なような遊びごこちのうちに自分を養ってやる風になるのである。 △いまいましいことや悩むこと、いらいらすることに…

十月

寸尺が還るショボショボ目をこすり ホームラン自力たしかな世に応え 人命か威圧か国の貌さらす 超法規これを限りの陽の祈り チャンネルのいずれか大麻くすぶって 証人喚問と避ける言葉を選び合い ツキに取り戻す手のうち見つめられ 説得力欠け部下の眸もすが…

四一五号(昭和五十二年10月号)

題字 斎藤昌三 表紙 いしぞねまさかつ カット 丸山太郎雅登の生活句 河野春三 (1) 塩の恩返し朝粥について 吉田笙人 (4) 信濃雑俳書解題 矢羽勝幸 (5) (三)誹諧うつほぶね 雑詠 大空 石曽根民郎選 (16) 柳多留三篇輪講(十七) (21)

九月

△乗鞍高原のとある旅宿で目が覚めた。夢ごこちに夜陰の雨を知ってはいたが、大したことはなく、屋根に少しの湿りが見られるほどだった。さすがあたりは山気がみなぎり、樹木の蒼さも目にさやかだった。白樺はこれから上に行くに従って高度にふさわしい容姿と…

九月

枕ぐにゃりと夢はちさく収まり どうしたもんだな ほんとうに聞き返し 笑わせて置き 自分の寝床をさがす 姿なく取りかこむ ちじかみ ふくらみ 短かい時間ぐっすりと正念場 子連れ狼だんごのしょっぱいのを買う カーテンの極彩色に取り乱し さっぱりと老いにか…

四一四号(昭和五十二年9月号)

題字 斎藤昌三 表紙 いしぞねまさかつ カット 丸山太郎山路閑古氏追悼 まえがき 比企蝉人 (1) 〈閑古さん〉を悼む 阿達義雄 (1) 閑古老と私 大村沙華 (2) 戦中戦後 浜田義一郎 (3) 古川柳界に残された偉業 佐藤秀太郎 (5) 閑古讃 宮尾しげを …

八月

△雑誌で連載していたのが、このほど単行本になったことを知って富岡多恵子「当世凡人伝」を注文したが、すぐにはなく、一ヶ月経ってから手に入った。そこらに暮らしているような人物が次ぎ次ぎに登場して来る。どれも隙だらけで、キチンと襟を正した、しかつ…

八月

もみ手してかかる暮らしを思いやり いささかの酔いにまぎれて許す気の 然るべく老いの自由につかまって まっくらな世と決めかねて顔を洗う 子と孫を前にあやまるうろ覚え もろく潰えしと気付く何か数え とどめなく過去となるいまその衒い 身代りのすたすた影…

四一三号(昭和五十二年8月号)

題字 斎藤昌三 表紙 いしぞねまさかつ カット 丸山太郎信濃雑俳書解題 矢羽勝幸 (1) 雑詠 大空 石曽根民郎選 (7) 紅花雑考 吉田笙人 (12) コガキ(信濃柿)のこと 胡桃沢友男 (14) 柳多留三篇輪講(十六) (17)

七月

△長野県では北の方が川柳大会を開催する企画が多い。陣容が整っているせいもあるが、それだけ熱心ということになる。松本は位置として真ん中にあって、集まるのに好都合だから、開催してもいいわけなのに、どうも億劫がさきで機会が少ない。そこで率先、多く…

七月

つとめて慎しみの底にいる弱気 夏草の勁き願いをみなぎらせ このひと握りの嘆きを打ち払い 求めゆく道なり老いの醜くとも 齢のすがたのおかしくもなだめたり 夢を見違えしと生まの身をゆだね 気にしない素振りできょうの敵に遭い 黙秘権過去への鞭を耳にする…

四一二号(昭和五十二年7月号)

題字 斎藤昌三 表紙 いしぞねまさかつ カット 丸山太郎諤庵柳話(三十) 田畑伯史 (1) 雑詠 大空 石曽根民郎選 (7) レンゲ草の花 胡桃沢友男 (12) 遠山・上町の盆踊り 向山雅重 (14) 柳多留三篇輪講(十五) (17)

六月

△今から丁度十一年前、米寿祝いの席上でわが伯母は、自ら編んだ腰紐を列席した人たちに配った。又とないこの佳日のために幾日かを費やして、こころを凝めた贈物をしたのだった。そして丁寧にキチンと謝辞を述べてから、嬉しそうにニッコリ笑った声が今も耳に…

六月

灰色の名の冠がはまった首 代案の玉手箱ともなる暗示 一抹の不安しらけが点となる 様変わり果たして時と火花する 来し方のはしたなさ見え口にせず 間を置くという描写あり居据わった ちぐはぐな寿命じじばば目をつぶる 当落スレスレこちらいまホームラン 当…

四一一号(昭和五十二年6月号)

題字 斎藤昌三 表紙 いしぞねまさかつ カット 丸山太郎信濃雑俳書解題 矢羽勝幸 (1) 杏の思い出 胡桃沢友男 (8) 雑詠 大空 石曽根民郎選 (11) 柳多留三篇輪講(十四) (15)

五月

△こどもの日には都合でとても子供にサービスしてやれぬからと、少しさきがけてうちの伜は五月二日に針ノ木岳に小学校四年生の女の子と、幼稚園にいっている男の子を連れて出掛けた。 △全国的に快晴だったからすごくたのしかったようである。夕飯のときにそれ…

五月

ゆれ動くほどのしじまに身を置いて いつとなく去る身のあかし口にせず あきらかに負けた顔して水をひねり つながらぬ至らなさいま生まの身に 確執にまぎれるひとりだけのこと 伯仲下悲憤昂奮して読めず すれずれに暗中模索声を呑み 予想図へ逆転の目が熱くな…

四一〇号(昭和五十二年5月号)

題字 斎藤昌三 表紙 いしぞねまさかつ カット 丸山太郎今昔時事川柳ノート(下) 東野大八 (1) 量見の狭い近江砂人の「川柳ノート」 石原青龍刀 (6) “げんこじさま”の由来 二木千兵 (10) 真の道草がほしい まつもと・かずや (12) 雑詠 大空 石…

四月

△みんなで出掛けようと、案外早く言い合わせの出来たことは何よりだった。長野市安茂里はずっと前から知られていたが、更埴市の森・倉科・生萱地区五キロ四方に亘って、薄いピンクのあんずの花が咲き揃う風景は、このところいろんな報道で知られるようになり…

四月

望むべくその手その目をとぎすまし 侮らず求めてやまぬ道のりよ 色付けて俗世にまぎれまた放ち ひとは生享けて巧みを願われる そのときの目覚め発止とたがわざる 魂を入れる技おのずと興り 闇にひらめかんか古きものをぬくめ 心との遍路の静かなるひとすじ …

四〇九号(昭和五十二年4月号)

題字 斎藤昌三 表紙 いしぞねまさかつ カット 丸山太郎今昔時事川柳ノート(上) 東野大八 (1) わが道を行く句集「道草」 和田遠矢太 (6) 情詩山水経 堀口塊人 (8) 雑詠 大空 石曽根民郎選 (10) 私のアルプス初登山 丸山太郎 (16) 柳多留三…

三月

△齢だなあと述懐することがあっても、さてすごすごと立ち去るような気持ちにもなれない。ここまで来たからには、遮二無二見ておかなくてどうするものぞ、そんな大それた野望があるわけではないけれど、あるがままに、たまにはしくじりをおかして見ても、いい…

三月

ためらいの言葉をえらぶ 雲が流れ 妻の寝息のいみじくもわれに触れ 一休みやがてなすべき避けもせで とぼとぼと軽き荷を負う坂なりしや 気乗りせぬ夢も やわやわ引っかかり 晩酌のひとりまぎれてかかる奢り 酔いのおかしき人の世と思いしに 一碗の酬いのごと…

四〇八号(昭和五十二年3月号)

題字 斎藤昌三 表紙 いしぞねまさかつ カット 丸山太郎愛すべき蛇たち(二) 石曽根民郎 (1) 雑詠 大空 石曽根民郎選 (12) 峠(四) 胡桃沢友男 (18) 柳多留三篇輪講(十一) (21)