三月

   ためらいの言葉をえらぶ 雲が流れ


   妻の寝息のいみじくもわれに触れ


   一休みやがてなすべき避けもせで


   とぼとぼと軽き荷を負う坂なりしや


   気乗りせぬ夢も やわやわ引っかかり


   晩酌のひとりまぎれてかかる奢り


   酔いのおかしき人の世と思いしに


   一碗の酬いのごとし灯のもとに


   草餅の歯応え 知った人の訃よ


   身のほどを知るばかりなる雪降り来