1985-01-01から1年間の記事一覧

十二月

▼朝飯前に朝散歩することにしていて、大抵近くの松本城の回りが目当てである。町内の歩道に沿うように、しなののき、ナナカマドが植えてあり、秋から冬にかけて赤いつぶらのナナカマドが素晴らしく、通る人の目を奪う。北海道にもこのナナカマドがあり、雪に…

十二月

仕組まれた罠はらはらと首吹かれ 老いを見舞ういずれはめぐりくる枷で ありていに鎮守の森で打つ太鼓 実年を貰い危うさはくすぐり 航跡の記憶返して普通の子 宙釣りという体罰の形相図 古都税の諾否忝なさ垂らし こっそりと入れてやる慈悲蒔いておく 冬児君…

五一三号(昭和六十年12月号)

題字 斎藤昌三 表紙 石曽根正勝 カット 丸山太郎伊良子清白と秋和の里 石川一郎 (1) 柳多留廿七篇輪講(五十) (6) ふぐ漫筆(二) 小野真孝 (11) へそくり ――嫁と姑―― 向山雅重 (14) 信濃の狂歌(十九) 浅岡修一 (16) 句評 騙される 土…

十一月

▼足元の暗くならないような時間で会合を閉じたいという希望が、ちょいちょい耳に入るので、思い切って昼間開会することに決めたし、またウイークデーの方が何かと好都合だという者もいて、或る日を選んで集まった。 ▼土曜日とか日曜日とか、週末の休みを考え…

十一月

群雄割拠更に熟して明日を漕ぐ 雄叫びの定かに鎧う音立てて ひんやりと寝首に安堵する目覚め 後れとる一太刀虫を鳴き鎮め 夜霧這う弱者見据えて滔々と 耳打ちの策は扇の半開き 取り乱す悲憤慷慨孤雁立つ 吟ずれば仮寝の風呂の焚き返し 人の訃の恩讐越ゆる机…

五一二号(昭和六十年11月号)

題字・斎藤昌三 表紙・石曽根正勝 カット・丸山太郎川柳コーエン体験記 東野大八 (1) 信濃の狂歌(十八) 浅岡修一 (4) ア―ウ 芦田、茂田中【茂田井】、望月地区 12―21 藤廼屋花丸、望月駒彦 他 柳多留廿七篇輪講(四十九) (9) ふぐ漫筆(一)…

十月

▼旅に出る機会が殆どない身分でも、先方からわざわざ訪ねて下さると、ついお好意が嬉しく話に夢中になる。先日、羽曳野市の塩満敏さんがやってきて、信濃路に憧れるがあまり、つい松本に寄ったといって、しばし語り合った。 ▼勿論、お互い川柳の道にいそしん…

十月

灯を消して虫のたわごととは違う マスコミがわざとのがした育てかた 支持率のなかの危ぶむ声を漉し 一瞬の事故風景を噛んで哭く いらいらと異国の檻のコアラの死 ロス疑惑人権のぞく白と黒 日の丸と君が代熟睡いつ覚める 子の嗜虐見つめる知恵をいじめぬく …

五一一号(昭和六十年10月号)

題字・斎藤昌三 表紙・石曽根正勝 カット・丸山太郎蕎麦・戸隠・信濃者 江端良三 (1) ―三題噺風に― 柳多留廿七篇輪講(四十八) (5) 信濃の狂歌(十七) 浅岡修一 (10) 11 森謌亭胴成 焼け跡で 節秀夫 (14) 川柳誌史礎稿(7) 奥津啓一朗 …

九月

▼何の気なしにスイッチを入れたら「元気な陽気な百歳人生」という番組に出会った。百歳にはまだ間があるわけだが、先輩達の動静を映像で見るいい機会と思ってしけじけ見やった。 ▼カクシャクたるのもあれば、耳が遠くてインタビューに戸惑わせるのもあって、…

九月

写されし老いのたしかなほとぼりよ たはやすき思いに過ぎぬもたいなし 身の上の挨拶となる殊更に 浅からぬ世に生き通す身をゆだね 近き山遠き山みなわがいのち 故もなく齢の痛みにくるまるか 祭り笛俗世を洗う耳を洗う かかる世にして明るさを気付き合う 秋…

五一〇号(昭和六十年9月号)

題字・斎藤昌三 表紙・石曽根正勝 カット・丸山太郎信濃雑俳書解題 矢羽勝幸 (1) (二一)丸子町岩谷堂奉納雑俳集 柳多留廿七篇輪講(四七) (7) 信濃の狂歌(十六) 浅岡修一 (13) 10 森顕亭加多知 川柳誌史礎稿(6) 奥津啓一朗 (17) お…

八月

▼市民菜園のくじを引いたら、ひとつ余分になったから分けてもよいという。殊勝な人があるものでその余沢にあずかった。伜や孫たちが整地して、いくばくかの種を蒔いた。 ▼素人だが、何かが出てくることを期待して、せっせと手入れに通った甲斐があって、トウ…

八月

知ることの深きに堪えて眠りゆく ころころと小石ひとつの音のゆくえ まぼろしの寝たきり老人笛を吹く 蝉鳴かすいくさにくしのそのなかに 暑い夏しがらみいくつ重たかろ 地滑りの生の怒りと死の眠り 悔恨が突く天災か人災か 墜落にいとけなき名も拾う胸 生存…

五〇九号(昭和六十年8月号)

題字・斎藤昌三 表紙・石曽根正勝 カット・丸山太郎輪講落ち穂拾い(六) 鈴木倉之助 (1) 信濃の狂歌(十五) 浅岡修一 (4) 9.山中舎真猿 柳多留廿七篇輪講(四十六) (11) コント半生記 所典夫 (16) 初めての軽井沢 津村淳 (21) 課題「…

七月

▼松本市中央公民館は家から二、三分のところにある。四柱神社の隣で、一般に神道境内と言っている。ここで川柳山ぐにサークルの句会を開催、午後六時にみんな集まって、私の来るのを待っており早速席題を出す。六月二十八日、毎週金曜日で、それぞれ都合がよ…

七月

折あらば訪ねたき君のびのびと 患いのひとつふたつを通じ合い 老い一途気休めながら手入れして 有終の美を思いやるいたわりや 減るダムにまだしがみつく水スマシ ここに来て見上げる樹々の打ち揃い うきしずみやさしかるべく目に逢える 松本城山に応える男っ…

五〇八号(昭和六十年7月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 カット・丸山太郎「古今川柳一万集」より(2) 多田光 (1) 信濃の狂歌(十四) 浅岡修一 (7) 8.二世牧亭駒人(その2) 柳多留廿七篇輪講(四十五) (12) 夏みかんに逢えた日 柴秀満 (17) 課題「ドラマ」 中…

六月

▼年に一回、古川柳ゆかりの探訪ということで二三度お邪魔した。浅草雷門前に集まった愛好家の面々、今戸焼の窯元、吉原大門、廓外のけとばし屋で昼食、生まれては苦界死しては浄閑寺(可酔)をお詣りしたりし、あとは時代を越え、ひと息いれて一葉記念館を観…

六月

足の萎え朝の散歩に引き合わせ 闇ながら女のふくみ笑いめく 愁嘆のそこから走る稲妻 屈辱のさまで反省磨くとき 思い入れきしきしと鳴るねばり腰 森林浴老いのはざまにつかまって 名水に身をくねらせている酒よ サケマスのしびれきらしてまぎれ込み 気の荒い…

五〇七号(昭和六十年6月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 カット・丸山太郎あれから四十年 節秀夫 (1) 信濃の狂歌(十三) 浅岡修一 (4) 8.二世牧亭駒人(その1) 柳多留廿七篇輪講(四十四) (8) めぐり来るもの 岩井汗青 (13) 川柳誌史礎稿(4) 奥津啓一朗 (1…

五月

▼よちよち歩きの、あちら向いてもこちら向いても知らない尽くしの揺籃期に、現在作っている川柳の濫觴を探りたくて、先ず手にしたのは宮武外骨の「川柳語彙」であった。表紙を開けた題字は川柳久良岐の書。あいうえお順に古川柳に関する語彙が並び、浅黄裏の…

五月

やんぬるかな数ならぬ身にとじこもり ぎっしりと山の声ある暮らし向き 稚魚放つ銀鱗の日のいざやいざ 光る苔旅のおごりが濃くなって 安らかに貰った蒲団落ちてゆく カーネーション二本こころが挿してある 病む将軍時の隅から顔を出し 憧れの国に指紋の呻き声…

五〇六号(昭和六十年5月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 カット・丸山太郎柳川の檀一雄墓参記 東野大八 (1) 信濃の狂歌(十二) 浅岡修一 (5) 7.牧亭駒人(その2)【その3】 柳多留廿七篇輪講(四十三) (11) 川柳誌史礎稿(3) 奥津啓一朗 (17) 課題「財布」 大…

四月

▼北は北海道から南は沖縄にいたるまで、各地を旅する見聞記を拙誌に連載した読みものが一本になって「旅の鞄」を上梓した。丸山太郎さんはありふれた田舎の風景や朽ちかけた建物に愛情を感じ、土地のありあわせの食べものに興じた。滅多に旅に出ない私にとっ…

四月

目立たない顔も拾って春が来た 小暗きなかにそっと置く病みつき 見えてくる世の中果てにを信じれば なんと聴く鐘のゆくえに横たわり 如才なく時の刻みに乗かって 生きかたと死にかた尽くし絵をこすり 御開帳万博の扉もまた未来 天下り花より先に打ち揃い 脱…

五〇五号(昭和六十年4月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 カット・丸山太郎尻取り川柳考 小島貞二 (1) 信濃の狂歌(十一) 浅岡修一 (4) 7.牧亭駒人(その2) 柳多留廿七篇輪講(四十二) (8) 月と蟇蛙 小松耕吉 (13) 川柳誌史礎稿(2) 奥津啓一朗 (16) 課題「…

三月

▼書棚といっても大した数ではないけれど、愛蔵の気持ちで手離したくない本もある。若い頃、大切にしていた思い出を寄せるかのように、蔵書票を貼ってあるのに出会って、懐かしく頁を繰る。 ▼大阪市に中田一男という版画家と知った。親しくなるにつれ、先ず蔵…

三月

老いを養うそのなかの納めかた 感情の動物という差し向かい 病い得て積んどく昔ちりちりと 衰えを自分で抱いてやるかろさ 果汁むさぼりつく餓鬼のまどろみ ぐるり山々おつきあいまだつづく 雪消えぬ山ありここも大所帯 お早ようさん山はご機嫌稼がねば 景観…

五〇四号(昭和六十年3月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 カット・丸山太郎信濃雑俳書解題 矢羽勝幸 (1) (二十)廻文俳諧華美集 信濃の狂歌(十) 浅岡修一 (6) 7.牧亭駒人(その1) 柳多留廿七篇輪講(四十一) (10) 句評 春の淡雪 土田貞夫 (16) 課題「岐路」 松…