八月

   知ることの深きに堪えて眠りゆく


   ころころと小石ひとつの音のゆくえ


   まぼろしの寝たきり老人笛を吹く


   蝉鳴かすいくさにくしのそのなかに


   暑い夏しがらみいくつ重たかろ


   地滑りの生の怒りと死の眠り


   悔恨が突く天災か人災か


   墜落にいとけなき名も拾う胸


   生存の一縷の救いきらめく刻


   御霊幾百樹林の精に抱かれけむ