1995-01-01から1年間の記事一覧

十二月

松本市老人クラブ川柳まつもとの指導といっても、十幾年か道連れになっていると、対向の立場を離れて同輩の集いという睦みになる。月一回のめぐり逢いを楽しみに遠路をいとわず寄り合う。腰はみんなピンとして杖のたよりを敬遠の頼もしさ。 会場で座るところ…

十二月

身を尽くすまでひたすらな色を溶くまぎれなくほそほそと知るぼけの証望むらく福の朱拓にあやかるや林檎丸かじり仕事に精一杯持ちにくい金がふところ正直であどけなき遺言弘く強く問う重くにも軽くにも言葉ちらかる実直なお布施に足りて小浄土山ぐにの灯の揃…

六三三号(平成七年12月号)

題字 斎藤昌三 表紙 蔵書票・カット 丸山太郎 尾崎久弥先生と三代豊国のこと 石川一郎 信濃の狂歌(一一七)【六、更級・埴科地方(二三)】 浅岡修一 十二篇はいふうやなきたる略註(六) 川柳評明和八年万句合輪講(五十六) 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山…

十一月

平静を装って毅然たる抱負をいだいているわけでなく、このままの情勢から脱する気持ちより、自分を守ろうという段階にあるようだ。一エポックから次のエポックに進展する真摯な積極性とはほど遠い。 それでいて好奇心はある。その夢の描くまぼろしに縋ろうと…

十一月

黙らせた向こうの闇の息遣いいぎたなく億にしびれてゆく狂い陸続と言葉の嵐ゆるぎなく遭難の寄り添う雪がきつすぎる不埒とも埒とも聞かずいそしむ眸一片の小舟明るき揺れを持つ受ける者受けざるものの血を湧かし孜々として倦まず諾否も名を負うよけなし合い…

六三二号(平成七年11月号)

題字 斎藤昌三 表紙 蔵書票・カット 丸山太郎 御詠歌と正信偈、そして「あなかしこ」 室山三柳 信濃の狂歌(一一六)【六、更級・埴科地方(二二)】 浅岡修一 川柳評明和八年万句合輪講(五十五) 十二篇はいふうやなぎ【き】たる略註(五) 雑詠「大空」 …

十月

お気づきの人は多かろうが、拙誌表紙のカットは蔵書票である。蔵書印と同じくその所有者の標識で、エキス・リブリスの名称がラテン語だが、弘く流通したため、世界語になっている。 本誌昭和初期に断続的だが、その筋の専門家に執筆していただいたことがある…

十月

長い道言葉とことば連れ添って有無通じ合ういただきが見えてきた浅からぬ縁みちびく齢の妙連想の今更ながら呼び合ってうらぶれの小唄ひとつも覚えとこ寝たきりの枕に宿る恵みの芽足腰を鍛える知恵ぞどんと来い朴念人出で逢う月に問われかけ葛藤のほころびを…

六三一号(平成七年10月号)

題字 斎藤昌三 表紙 蔵書票・カット 丸山太郎 イソップ寓話と咄本 武藤禎男 信濃の狂歌(一一五)【六、更科・埴科地方(二一)】 浅岡修一 十二篇はいふうやなきたる略註(四) 川柳評明和八年万句合輪講(五十四) 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人…

九月

父の代からごく懇意にしていた西堀栄寿さんが、めでたく白寿の日を迎えるにあたって 名は栄寿 齢は白寿の 誇り顔 民郎 色紙に揮毫し、徳利と盃の画を添えた。 出来栄えを越えて、ただただ平素の心易さに応えたかった。平均寿命が上昇の傾向にあるから、お互…

九月

景気失速見る見る秋気取り巻いて忌ましき巷の芥重たがる安からぬ思いは同じ だが前へ濡れやすき肩をかばいて語らばや老いていま私淑のひとを胸に収め見遥かすいたずらを越え篤く篤くしくじりの悔いを流して湧くか泉人生きて錯誤の渕を洗ういま音低く高く名残…

六三〇号(平成七年9月号)

題字 斎藤昌三 表紙絵・カット 丸山太郎 一ツ星の隻腕戦記【―新山胤一著「隻腕」を読んで】 東野大八 川柳評明和八年万句合輪講(五十三) 十二篇はいふうやなぎ【き】たる略註(三) 信濃の狂歌(一一四)【六、更級・埴科地方(二〇)】 浅岡修一 トキその…

八月

終戦の日、田舎住まいの蝉がしきりに鳴くとても暑い夏だった。当時気象情報は公表されなかったが、記録では最高気温三三度。連続十九日目の真夏日と言う。 松本では空爆が殆んど無く、敵機が飛来しても、ただぼんやり高く仰いで見るに過ぎなく、無防備にも傍…

八月

注射針人をあやめて祈りありや理を尽くす話で囀りがいっぱい千載一隅かてて加えて身を整え句三昧別れは今と決めないで墓掃除心の底にまで届く思い出し笑いに重ね健忘症口開けて寝てる見事なのがれかたしがらみにからむ小世話を惜しげなく時☆に遅しや齢をかぞ…

六二九号(平成七年8月号)

題字 斎藤昌三 表紙絵・カット 丸山太郎 初物 室山三柳 五十年ぶりの旧満州【(中国東北)】散見 輪湖嘗次 川柳評明和八年万句合輪講(五十二) 十二篇はいふうやなきたる略註(二) 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 【民俗雑記】七夕と水浴び 胡桃…

七月

松本というとサリンと結び付けたがるのが世間だから、オウム教に翻弄されて、怖いと感じる人がいたかも知れないが、全日本川柳長野大会が盛会だったことを陰ながら喜んで下さったようだ。 新聞で報道される地籍以前、松本道場の土地問題で係争中の判決の当日…

七月

天然の無常ゆめゆめたくまざる騒がないで果てを知る刻の静けさぶんぶん唸る蜂と蜂それ見たことか節ぶしの痛み素直に素直にまた貰う句を選ぶ枕の鞘を洗つたから足弱をためらわずこころ乗せてくはずれない徽章ぐらいの心遣り欠けてゆくすべてことわりに据わる…

六二八号(平成七年7月号)

題字 斎藤昌三 表紙絵・カット丸山太郎 琵琶湖便り 美濃部貞 本誌主要記事摘録(三十三) 十二篇はいふうやなきたる略註(一) 川柳評明和八年万句合輪講(五十一) 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 【民俗雑記】怨霊を鎮める夏祭り 胡桃沢友男 課…

六月

全日本川柳長野県大会の前夜祭は浅間温泉のウエストンホテルで行われたが、隣席の町田尚友さんは遥々高知市から来られ、大会が済んだら善光寺をお詣りするとおっしゃった。 私とおないどしで、長く教員生活を続けられ、松本に同級生が住んでおられるらしく、…

六月

わが土地に視聴をあつめサリン憎し遺族日々祈りの丈を鎮め給い日が暮れて小なるものの人恋い坂頬に飯粒それとなく生真面目さかそけくもちいさき死ひとり祈らばハイジャック救出さだか北を指しこの辺で憩うおのれの拾い読み齢を知れかばいながらも叱ってる 全…

六二七号(平成七年6月号)

題字 斎藤昌三 表紙絵・カット 丸山太郎 川柳評明和八年万句合輪講(五十) 誹風柳樽拾壱編略註(二十二) 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 【民俗雑記】デイラボッチャの足跡 胡桃沢友男 本誌主要記事摘録(三十二) 挑戦 猪爪公二 連休の京都へ …

五月

四月某日、見ず知らずの人が訪ねて来て、この句集に署名してくれと言う。それは昭和十六年発行の私の処女句集「大空」である。どこで入手したのかと聞こうとしたら、その前にかしこまって経緯を打ち明けられた。 この人は東京都葛飾区に住んでおられ、遠く札…

五月

雲隠れさしもに秘めし重いつづら神を従う武器掌握の埒潰え信仰の曲がり過ぎてのはね返り才に長け科学化学の刺し違え瞑想の途端宙に浮き断末魔社会復帰手を添え心また篤くひき出しを数え別れもそのひとつ夭折の弟が呉れし蔵に愧じ短かくも短きいのち全うしち…

六二六号(平成七年5月号)

題字 斎藤昌三 表紙絵・カット 丸山太郎 長柄もち(持)について 帯刀俊文 忍ぶ恋 室山三郎 川柳評明和八年万句合輪講(四十九) 誹風柳樽拾壱編略註(二十一) 川柳の醍醐味 小林節子 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 【民俗雑記】山が教える農事…

四月

事務室にいま鳥羽宗雄画伯の油絵「校庭」を架けてある。時季だから桜の下で学生たちが屯するのがいいと思い、気がつく人だけに購入したいきさつを話し掛ける。もうひとつ長崎柳秀、大阪大教授の色紙。 何んと今言はれやうとも 差し向ひ 画賛は彩つたかんざし…

四月

哀悼に耐えず手紙が風に舞うくせ球とおぼしき余白返事する棒グラフタレント知事とお早ようさん老境無題たつたひとつの太陽よさがすまでもない分身の一揆振り拉致遁走落暉が何かものを言う信仰と苦い薬品加え算自由とのかね合いに佇つ居丈高松本サリン寝惚け…

六二五号(平成七年4月号)

題字 斎藤昌三 表紙絵・カット 丸山太郎 虚子の柳風俳句 石川一郎 誹風柳樽拾壱編略註(二十) 川柳評明和八年万句合輪講(四十八) 【民俗雑記】涅槃会のヤショウマ 胡桃沢友男 雪のいで湯で 遠藤雪子 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 課題「鶴」 …

三月

松本城はほど近く、二三分のところに在るが、、堀に添って正面入口あたり松本中学校が建てられた頃、学生の便を図り靴屋さんが数軒、それに本屋さんも数軒並んでいた。洋服屋さんも仲間入り。 年が経って随分変ったが、同じ商社が割と多い私の町である。いま…

三月

願わくば枯淡の砦との調和漏らしなくベッドトイレのひそやかに頻尿にいそしむ真夜中の魔物腕のリング貰った義理を果たすべく神経痛の初顔か須叟をたしかめこなれゆく腹の動きの真の闇それとなく微恙に尽くす歳の馴れ年よりの権化へ待ちの大手ひろげ物心の篤…

六二四号(平成七年3月号)

題字 斎藤昌三 表紙絵・カット 丸山太郎 雑詠「大空」 石曽根民郎選 【山彦集 同人吟】 【民俗雑記】初午と蚕玉祭り 胡桃沢友男 女と蟹 室山三柳 川柳評明和八年万句合輪講(四十七) 誹風柳樽拾壱編略註(十九) 信濃の狂歌(一一三)【六、更級・埴科地方…