1979-01-01から1年間の記事一覧

十二月

△駿河路に入っていた。車窓に流れて入る風景は、信濃路とどこが違うのだろうか。この道をテクテク歩いて来た大勢の旅びとの後姿がわが眼底をかすめる。 △三島駅に着いて行き先がわかっているが、道順を聞くにしかずと、売店のおばさんに訊いた。何も買わない…

十二月

重荷ともならずまっすぐみちをきめ 生き終えるまで地獄の図地獄の詩 おわらせてゆくなるそこでうなずくや 夢醒めて雪景色いまたしかなり 仕舞い風呂流れ星みたことにする 三島にて 冨士見たり何か遅れて来た道で 不意にあらわれたり冨士の真正直 あきらかに…

四四一号(昭和五十四年12月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 信濃雑俳書解題 矢羽勝幸 (十六)別府三十番神奉納雑俳集 (十七)東筑摩郡浅間会林雑俳集 雑詠 大空 石曽根民郎 選 二、上越編(十) (一)謡曲「山姥」の里 西原亮 かれいの風干 丸山太郎 切支…

十一月

△勝手知ったところならなるべく足をかばって、歩けるだけ歩いてゆく。少し足早といった加減で、気ぜわしい性質だからノロノロはどうも性に合わない。知った人に向うから挨拶されて恐縮する。 △知らない土地で、キチンと番地だけはメモして訪ねるとき、聞くに…

十一月

十月二十八日 木曽御岳異変 現象に黙す一服の地の唸り 天と地の声とも思う火を噴かせ 眠りから覚めしたたかにしたたかに噴く にごりゆく世に噴く怒りとも念じ 灰は上空を圧しなお炊ぐ村 わいせつと猥褻の差の純度感 美の極地絶頂にいて撮り直し 塗りつぶす手…

四四〇号(昭和五十四年11月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 川柳越後志(九) (八)越後の名力士 西原亮 島原の乱と八代 佐野卜占 もう一度食べたい魚ぞうめん 丸山太郎 関西の庚申塔覚書 山岸重利 雑詠 大空 石曽根民郎 選 おあいしたかった坂本篤老 東野大…

十月

△行くときめていたが、こんなに快晴になるとは運がいいのだろうと、朝起きたとき思った。木曽谷探勝ということなのだが、大型バス二台を駆って、行くとこまで行こうというわけである。 △みんな殊勝らしくあたりの風景を眺めているのだけれど、家を離れた満足…

十月

世を洗うかに列島の票の粒々 相合傘暮らしの票を購いに出て 頑なな信じる党を毀しにゆく 臥る票の珠玉きらめきいらだたせ 世論調査崩す示唆して静かな票 死に神の配る切符と空涙 福の神カラクジなしでひと休み 寿命神女に肩を持った破目 貧乏神誰がきめつけ…

四三九号(昭和五十四年10月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 続「夜明け前」より 多田光 河合曽良の墓 佐野卜占 宿直つれづれ 浜本千寿 味噌煎餅 丸山太郎 切支丹と長崎 池田可宵 川柳越後志(八) (七)越後と謡曲 西原亮 雑詠 大空 石曽根民郎 選 柳多留三…

九月

△飼い主の不注意で虎が檻から逃げ出しているのに驚き、大勢で虎さがしが始まった。自由になったせいか、なかなか見つからないので今度は虎狩りに変った。民家の人たちはどんなにこわかっただろう。わざと逃げたわけでなかったのに、虎もいい迷惑だった。 △山…

九月

友情はいまほどほどに識りながら 夢しぼむ涙は頬を濡らすとか 年波にふれる愛想がほんとらし 湧きあがる雲の素直さとは違い 悪玉に吹くしたたかな風となれ 時熟す晴れの舞台の挫折感 冷静をよそおいながら堕ちるだけ ねんごろにひと粒の声聞いてやる わが果…

四三八号(昭和五十四年9月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 佐藤冬児作品集川柳「冬のばら」評 或る冬のばらの証明 江端良三 「昏れて」から 八坂俊生 塩辛いなだまわり 丸山太郎 狂歌探訪余話(一) 松本の真顔碑と民郎さん 浅岡修一 川柳越後志(七) (六…

八月

△今年も蚊帳を吊らずに過ごせそうである。蚊がいなくなったせいだが、まるっきり飛んでいないでもない。チクリとやられて、こんなところにいたのかと、ちゃぶ台の下をのぞきこんで、いまいましく思うことがある。 △寝るとき戸を開けて風の入るあたりに、蚊遣…

八月

投げかける思わせ振りの眸を払い 人生のかげりかに触れはしたなく 顕われる道なりやがて歩まねば やがて佇つこのことがある胸さわぎ 身のほどを知るささやかなうなずきよ こだわっているのを叱る横坐り ふしぶしにどうにか越える気を持たせ 冠り直す面はさが…

四三七号(昭和五十四年8月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 諤庵柳話(二十六) 田畑伯史 川柳越後志(六) 越後の七不思議(一) 西原亮 長崎の句 池田可宵 田楽 丸山太郎 道産子 塩見一釜 雑詠 大空 石曽根民郎 選 柳多留三篇輪講(三十九)

七月

△二段ベッドは孫たちの憩いの場所である。購入したしばらくは物珍しい気味もあって、昼間から上り下りをくりかえし、臥て見たり起きて見たりして遊んだ。すっかり馴れて、いまは姉が上、弟が下で夜だけ使っている。 △私は昼飯がすんだあと仕事が始まる前ほん…

七月

集まった愚直の澄んだ目を思う どこにでもころがる首で覚えられ 生まの身のほんとの勁さ顔を出し やっと触れてくるもどかしさわからせて 散り際の何故か落ち着く話する まとまってやる齢を持ちそれらしく 年寄りの思案のほかのうすぼんやり 黙らせに来たお粗…

四三六号(昭和五十四年7月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 信濃雑俳書解題 矢羽勝幸 (十五)金牛軒・一鳳舎・片玉斎評初大会雑俳集 俳諧川柳雑記帖・末摘花その他 東野大八 雑詠 大空 石曽根民郎 選 日本で一番うまい肉まん 丸山太郎 川柳越後志(五) (五…

六月

△精進料理というと至極しかつめらしく聞こえる。戒律にゆだねた精進情況のなかの食事を思わせるわけだが、これを毎日献立に合わせるほどでなくとも、一日一食だけ見本にいただけたらという、そんな機会に恵まれた。 △一人でなくて大勢にまぎれての会食となっ…

六月

坂本篤追悼特集のため掲出句なし

四三五号(昭和五十四年6月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 坂本篤氏追悼 まえがき 道楽的出版 小野常徳 坂本先生の思い出 魚沢白骨 一時代の終焉 小池章太郎 坂本篤さんを偲ぶ 坊野寿山 坂本篤氏を悼む 平岩米吉 一愛読者より 綱島照元 坂本さんに叱られた話…

五月

△ちょっと雨が降っていたので、雨傘持参で長野に出掛けた。長野青年会議所の市民スクール婦人講座に招かれて川柳の話をしに、五月から七月まで五回お邪魔することになった。第一回は「私を語る」がテーマだった。 △折角、長野に来たから御開帳の善光寺をお詣…

五月

ビルに棲み花鳥風月そらんじる 目に青葉ビル住人の遠い視野 屋上の一鉢の花 水をやる ビルの窓庭のない雨見て倦かず 自然保護よそごとならでビルを愛し 街路樹を育てビルに住み録画する 固からずビルにはだしの孫と和し ビルなごむ畳のうえの笑い声 核家族な…

四三四号(昭和五十四年5月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 漱石と古川柳雑俳 多田光 川柳越後志(三) (三)遊女 西原亮 川柳の新しい要望について 池田次郎 ショッツル鍋にキリタンポ 丸山太郎 びわ湖幸便 美濃部貞 Mちゃんの結婚式 今野空白 雑詠 大空 …

四月

△小学校六年生を卒業とすると中学校に入学した。ほんの二、三分ところにあったが、わざわざ寝坊することはせず、真面目に登校したものだ。いまもそうだが、やせっぽちで身体検査が一番嫌やだった思いが残る。体重は人より軽いのがつらく、その裸ン坊を見られ…

四月

どこを押しても出ぬ智恵で相手欲し 後味のよさに浮かばれてくわが身 ここにして乱れる老いを叱りながら 胸底のかく惧れあり寝に入るか 涙そこに置く人知れぬこそよけれ 静かな日やがて伝わるわがこころ ふと覚えあれば枕に乗せたケリ 残飯にありつくほどのそ…

四三三号(昭和五十四年4月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 時評二題 共通一次試験に川柳登場 俳人楠本憲吉氏の“よみうり時事川柳” 石原青竜刀 長崎の歌と句 池田可宵 佐渡の釣り 浜本千寿 ベロとは何か 丸山太郎 川柳越後志(三) 西原亮 雑詠 大空 石曽根民…

三月

△松本城を囲んだ堀が凍結するときになると、北アルプスの眺めも峻烈を極める。皚々とはよく言ったもので、ここに生まれ長くここに住む自分でさえ、さすがに壮大な景観であることに驚く。大袈裟な表現だが、驚くほかはない。 △ほどよい気候の凌ぎよさ、そんな…

三月

来るものを待つ素直さを思い知り けたのはずれた話して迂濶なり 一通りわかっている筈順を追う 身のほどと知る習いかな膝をつく みんな静かに聞いている早合点 底を見せてやるほんのちいさな雫 ど忘れのおかしさにふれ齢を交し お互いのためのところで息を継…

四三二号(昭和五十四年3月号)

題字・斎藤昌三 表紙・いしぞねまさかつ カット・丸山太郎 信濃雑俳書解題 (十三)はいかい相生 (十四)はいかい御代の恵 矢羽勝幸 穴熊ぐらし 塩見一釜 雑詠 大空 石曽根民郎 選 去年の表紙絵 節秀夫 ベコ餅・しおうに・焼がれい 丸山太郎 葛の松原片々記…