2000-01-01から1年間の記事一覧

十一・十二月

重たげに首はいのらをまかせられ首をがつくり夜景はまつしぐらに酒が入つた首黙つて号令をする首を据え嘘の善意に動かせないシルクハット首に任務を強いてやる革命に火を噴かれ首だけ歩く花嫁さんの首重たしまかせた時間どこかで万歳首は堅きカラーにはまる…

六九〇号(平成十二年11・12月号)

題字 斎藤昌三 カット 丸山太郎 表紙 棟方志功 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 飯島花月の狂歌(六)【明治期を中心にして】 浅岡修一 川柳評明和八年万句合輪講(百十三) 誹風柳多留十四篇略解(八) 課題「見る」 猪爪公二選 「着く」 寺沢なお…

九・十月

朝起きると自分が生きていたかと、あたりを見渡す。そしていつも頭痛をしていることがうるさく思わん、がっかりして、またあたりを見渡している。 もう朝がすっかり明けたのだと感じているが、これが本当な朝かと疑って、少しでも冷やっこい枕の感覚が欲しく…

九・十月

老い支度なかに昔を置いてある自分より若い年寄り何度もし置手紙狭い世間を広くするひと通り風が止んだと鴉バッサー老い坂に並んで待つか真っ赤なれ重からぬ身の一生を近付かせ冷えて来て来た小さな微笑みや老人の夢はさもしくあちら向く冷えて来た小さな微…

六八九号(平成十二年9・10月号)

題字 斎藤昌三 表紙 中央線鉄道唱歌 昭和二十三年十一月 カット 丸山太郎 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 大空雑感 吉野圭介 川柳評明和八年万句合輪講(百十二) 誹風柳多留十四篇略解(七) 「川柳しなの」六八七号二〇〇〇年六月号 柳多留十四…

七月

誰でもひとつずつ年を取る癖に自分だけとった強さを見せてひと笑いする。年甲斐もなくということを心得て、きちんと礼儀よく座っているところを見ると、満更でもなさそうだとひやかし気味。 一方で、年はとりたくないものと言うが、年寄りの言うことは聞くも…

七月

放心の彼方ゆっくり灯のゆらぐ含蓄のまこと行末たなびくか美しく試案の扉かっとばせ強弱の涙自ら光らせるもろもろの下手か上手かまだ回る腫れものの強き怒りか黄の濃さか伏線の彼方巨悪のひと寝入りどっちみち下手か上手か顔まとも話せないつんと澄ませてか…

六八八号(平成十二年7月号)

題字 斎藤昌三 表紙 仙台ぶり 昭和三十一年四月 カット 丸山太郎 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 大空雑感 吉野圭介 飯島花月の狂歌(六)【明治期を中心にして】 浅岡修一 川柳評明和八年万句合輪講(百十一) 誹風柳多留十四篇略解(六) 課題「…

六月

あっちを向いても、こっちを向いても、本誌の遅刊の取り沙汰が行われているようである。ご心配をおかけして誠に恐縮の次第で、ご考慮のほど申し訳ない。 実は歳をとったせいか、低血圧の習慣が生活を脅かしているような気がしている。血圧を測る道具があるわ…

六月

老いを病むやさしい声が来てくれる卆で何かと自分に問いかけて俺のしたことかとまたも苦しいこっそりと年寄り夫婦の顔になる病い得て時の谺がまだ続く昔尽寝いまの憩いを何とする老化への道のまぶしさとも言える耳鼻科に内科にひとりとぼとぼの道雄弁の年寄…

六八七号(平成十二年6月号)

題字 斎藤昌三 表紙 歌舞伎狂言甘味揃 昭和三十一年四月 カット 丸山太郎 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 大空雑感 吉野圭介 中村幸彦先生の思い出 武藤禎夫 川柳評明和八年万句合輪講(百十) 誹風柳多留十四篇略解(五) 課題「向く」 赤木淑子…

五月

年賀状を貰った中に、来年はもう寄こさないように頼むという寸言を添えたものがあった。俺はいくら生きても、年賀状を一々返事にして書く力量がなくなるだろう返事はしないのはというよりも、その気持ちを失せるからと言わんばかりである。儀礼的で若いうち…

五月

頭痛しきり垣のあたりが苦になってほんとうは驚かないで水を呑む向こうでも眠る話を持っていて昵懇の間柄とはまた言うか先生と無頼の話どっちが消える尾行するその語らいかとまだ覚めずたちまちに齢をかばって腹這うか本当の辟言え私は並んでく何処にどうあ…

六八六号(平成十二年5月号)

題字 斎藤昌三 カット 丸山太郎 表紙 蔵書票の話 民郎・荷風庵 昭和十七年十一月 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 大空雑感 吉野圭介 古川柳研究会の思い出 異色の三翁 武藤禎夫 川柳評明和八年万句合輪講(百九) 誹風柳多留十四篇略解(四) 課題…

四月

上伊那郡高遠町は国鉄バスに乗って、伊那市、茅野市と結ばれ、城跡は小彼岸桜が殊にすぐれて観客が多い。武田信玄の軍師山本勘助が築いたという由緒がある。 中信地方は松本市も含むが、鬼角狡知に長けた評判が強く、南信地方の温和に比べられる。いやはや以…

四月

出藍の誉れ蟻ども群がるか忙然に立たんとはする水たまり誰か教わったでもない道を拾い長老の溜息ひとくちでは言わぬ界隈を泣かせて見せるほんの芸億円のにらみ返しがさびしけれ代々の呪縛は何故か労らず冒険の由緒深さかユーモラス鼈甲がぶら下がるとき皮肉…

六八五号(平成十二年4月号)

題字 斎藤昌三 カット 丸山太郎 表紙 相模おんな考 斎藤昌三 昭和四十年刊 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 大空雑感 吉野圭介 会員名簿と万句合刊行のこと 武藤禎夫 川柳評明和八年万句合輪講(百八) 誹風柳多留十四篇略解(三) 課題「闇」 吉江…

三月

無論、私は画も字も下手で中学校のとき、作品に画いて提出することと指示があった。誰に画いて貰おうかと思案していたら、俺が代理で引き受けたと良い友が見つかり、早速画用紙を持って行き、麗々しく間に合わせていただいた。 下手だなんて陰口を言いながら…

三月

ばらばらの道に別れのひとつあるどこにでもある話してまるくなり老人の思い出ながら瑞々し根っからの頑固ひとつを持ちながら誰のためとてもないうつけもの一生の衒い静かな街を得て気位の高さそこでは黙ってる月の掌が静かにのびる軽はずみしんみりと残り少…

六八四号(平成十二年3月号)

題字 斎藤昌三 カット 丸山太郎 表紙 神国愚童随筆 豆本 吉野秀政遺稿 昭和四十年刊 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 大空雑感 吉野圭介 【おとしぶみ】 室山源三郎 川柳評明和八年万句合輪講(百七) 誹風柳多留十四篇略解(二) 課題「宛る」 浅…

二月

北陸道地方では日本海に面するせいで大雪が降る。鳥取地方あたりでも同様な報道が広がる。この地方を旅したとき、青空を見ることは稀だと異口同音だった。出雲大社を参詣に旅したとき、同然の声を聴いて、雪をいただいた出雲神社の光景はきっと素晴らしいだ…

二月

この世との別れの送りみんなにもいくつかの奈辺よろしく穴がある机上から達意の順を返せたか妄念を刺す闘いが始まった誰が聞くというのだ何を言っとる下手なら下手でよい月の喜び真っ直の鼻と思えどさりながら縮まった想いをそこに置いてあるいみじくも齢は…

六八三号(平成十二年2月号)

題字 斎藤昌三 カット 丸山太郎 表紙 浦塩詩集 豆本 井上多喜三郎 昭和三十二年刊 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 大空雑感 吉野圭介 親ゆゑに迷うて出たるわらべたち 室山源三郎 川柳評明和八年万句合輪講(百六) 誹風柳多留十四篇略解(一) 課…

一月

ことし年賀状を差し出すとき、松本市大手三ノ五ノ十三とし、仰々しく別邸の名を飾るに驕ったような感じで、松本市横田四ノ十八ノ三を挿入したかたちであった。電話はあるぞとばかり、両方を並べて入れてある。 決して偉そうなつもりは毛頭なく、自分ながら少…

一月

かがなべてひとつの道があったとさ弔いの掌にまといつく同い年難しい話でほんの芸のうち大勢の道を私というものがそこここの鳴らざる鐘を拾い合い貰ってる言葉ひとつの底つこぬけかくしごと自分らしさを縛りつけぼろぼろになりたいだけで眠くなるコンマ以下…

六八二号(平成十二年1月号)

題字 斎藤昌三 カット 丸山太郎 表紙 正岡容 雑詠「大空」 石曽根民郎選 山彦集 同人吟 大空雑感 吉野圭介 飯島花月の狂歌(五)【明治期を中心にして】 浅岡修一 川柳評明和八年万句合輪講(百五) 誹風柳多留十三篇略解(二十六) 課題「明日」 一ノ瀬春雄…