1984-01-01から1年間の記事一覧

十二月

▼お年寄りだけで十七文字を綴る集まりという触れ込み、兎に角指折りながらの手すさびと頭の体操の活用法の小見出しをつけて、肝入りが声を掛けたら多勢馳せ参じてくれ、世話役を兼ねて選者を仰せつかった私も、やっぱりお年寄り。 ▼いつの間にか会報がこの十…

十二月

男おんな尽きぬ小径を拾わねば 気遣ってくれる便りがいまの鞭 むしられる暦のうえの道草よ この世とのずれにうつろう風が吹く そう読めていた迂闊さに痛がって ほとぼりの覚めしを嫌う冬景色 常民の胸のバッジをいつも持つ 目覚め合う真夜のしじまの映し得て…

五〇一号(昭和五十九年12月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 カット・丸山太郎明治の新聞と松本・信州(1) 多田光 (1) 信濃の狂歌(七) 浅岡修一 (8) 4 土筆庵保鳥 江戸川柳研究小史(一四) 阿達義雄 (14) 【―育英版「川柳吉原志」をめぐって―】 雑詠 大空 石曽根民郎選 …

十一月

▽いまの大手三丁目五番十三号と新町名に変更されたのは、本誌を調べたら四十年九月号からとなっている。地方史を専攻する学者たちの命名と聞くが、県内でも割合早かったようである。年を経るに従って、旧町名を懐しむのあまり早計であったという批判が出たが…

十一月

よく眠りよく垂れ有為に近付かな さらでだに共々ならず別世界 占わるまでもなく闘老を灯し 為すべきに遭うその奮いこそ待たれ 飽食と飢えを率いる天の声 言い訳になお余りあるこすり方 旧紙幣強がりながら消えるのみ 五〇〇号わが師好き友しかと受く 五〇〇…

五〇〇号(昭和五十九年11月号)

題字・斎藤昌三 表紙・丸山太郎 カット・丸山太郎五〇〇号特集川柳と戯作者 中村幸彦 (1) 雑俳雑語 鈴木勝忠 (8) 宝暦の京橘枝堂板 宮田正信 (15) 四代目川柳―襲名と引退 濱田義一郎 (21) 世を問ううた 東明雅 (28) 当世戯屋留樽選 武藤禎…

第38回長野県川柳大会号

四九九号と同日の十月二十五日発刊第五回長野県民芸術祭参加 第三十八回長野県川柳大会開催日時・場所、参加者リストならびに句群を掲載

十月

▽例会には定刻前から来て下さる熱心さには恐縮しながら、少し遅れたりしてすまながる。家を出ようとするときに限って、思わぬ仕事上のお客に迫られ、時間を気にしつつ、つい句会に遅れてしまう。わざと延ばして来たのではないことを知っていてくれるのが有り…

十月

内遊のおもわくに散る紅葉たち 世界の眼くじらの小さき目にからみ 声紋の憎きがままに世のうめき 南北を結ぶアリラン流れ合う カラオケの自分ひとりを漉しにゆく 紙風船少し妬みがこめてある 季の花の滴り墓は待っていて コップに当てまっしぐらに落ちる輩 …

四九九号(昭和五十九年10月号)

題字・斎藤昌三 表紙・石曽根正勝 カット・丸山太郎江戸川柳研究小史(一二) 阿達義雄 (1) ―育英版「川柳吉原志」をめぐって― 信濃の狂歌(五) 浅岡修一 (6) 2 芝庵朝早 課題「無人駅」 牛山雲竹選 (10) 「幸福」 北原美津子選 (11) 句評 …

九月

▽伜が商用で上京したが、それを追うように、学校の授業が終るやいなや鞄をほっぽり出し、孫が新宿駅を目指した。土曜日である。いいことに学校の先生らしい人たちと乗り合わせ、一緒におともを頼むとせがむと引き受けてくれた。 ▽孫は落語に興味を持っていて…

九月

老いを病む雪崩はひたと待つほどに かりそめのさわりは老いのひと峠 いずれその日あれこそばゆき夢枕 長野県西部地震 襲うも瞬時決めつけ無口なり 爪跡のうえに炊出しひたすらな 学説が読みとり地震輪廻噴く 救援の爆音思いやる現地 人心に触れ学説の地に揺…

四九八号(昭和五十九年9月号)

題字・斎藤昌三 表紙・石曽根正勝 カット・丸山太郎「古今川柳一万集」より 多田光 (1) 課題「酒」 清水忠 (6) 「話題」 小口九五郎 (7) 川柳江戸研究小史(一一) 阿達義雄 (8) ―育英版「川柳吉原志」をめぐって― 信濃の狂歌(四) 浅岡修一 (…

八月

▽あちらの広場、こちらの空気で盆踊りが行われる。村は勿論のこと、町でも、市でも主催になって拡声器で賑やかだ。お城盆踊り大会のポスターが各戸に回り、八月十二日から十七日の午後七時三十分―九時三十分大勢集まり、浴衣掛けや登山者の飛び入りもあって…

八月

生きたがる凡夫の覚えまた濃くす 汗すれば凡夫匹夫の滴りよ 急ぐにあらねど処するにも疎や 快老に出合いがしらの蝸牛 山頂のカラフル神秘苦笑う 孕んでる中流一億の声のうねり いくさの熱い記憶から呼び出され 黙祷の熱砂みるみるいきどおり 殊更の呻き鞭打…

四九七号(昭和五十九年8月号)

題字・斎藤昌三 表紙・石曽根正勝 カット・丸山太郎江戸川柳研究小史(一〇) 阿達義雄 (1) ―育英版「川柳吉原志」をめぐって― 信濃の狂歌(三) 浅岡修一 (5) 依田亭川常(その2) 川柳・終戦直後 小島貞二 (12) 課題「技」 久保田素房選 (14…

七月

▽大きな仕事となると、特定に発注することは滅多にない。みんなを呼びつけてその場で値段を競じ合う。相手の肚をさぐったり、ものによっては避ける工夫をこらすのだが、店先にやって来て挨拶状を頼まれるときはちと違い、先方の原稿を見てやり、少しは仰せの…

七月

いつか寝に入るさてもあなどり難や 水面下ときに見せしは甘き首 とっぷりと昏れゆく老いの飾り付け 答えにはならぬ答えの驕り際 ほとぼりの冷めし世過ぎ横たわり たかが勝ち負けにじれ合うてれかくし 断末魔忝なきを抱かせてく なだからかなみどり昔の詮なき…

四九六号(昭和五十九年7月号)

題字・斎藤昌三 表紙・石曽根正勝 カット・丸山太郎盗作だんぎと著作権 東野大八 (1) 信濃の狂歌(二) 浅岡修一 (5) (二)佐久地方の狂歌 課題「つぶて」 岡宮みさお選 (10) 「実力」 丸山山彦選 (11) 江戸川柳研究小史(九) 阿達義雄 (1…

六月

▽発売にあたって、早朝から並んでまで執着はしないが、記念切手はその日、自由な時間に行って、求められたら求めてくる。写楽のときもそうだった。大谷鬼次の奴江戸兵衛の対の、四代目岩井半四郎の乳人重の井の版画は、昭和の初め、学友から夜店で買ったとい…

六月

マジックのほんとの札の息使い 探る手の愛にまだある冬景色 気づまりの仮設のうえにあぐらせよ ふがいなく宥す身のほど思い知り よんどころなく去る影のまっとうさ 見せかけの嚢のなかのいがみ合い 頭でっかちの図式の下の子羊よ でかい紙幣の貌で手形調子づ…

四九五号(昭和五十九年6月号)

題字・斎藤昌三 表紙・石曽根正勝 カット・丸山太郎信濃雑俳書解題(十九) 矢羽勝幸 (1) はいかいひな言葉(四) 輪講落ち穂拾い(五) 鈴木倉之助 (8) 課題「開く」 関静流選 (10) 「安心」 田多井公平選 (11) 信濃の狂歌(一) 浅岡修一 (…

五月

▽前以て大阪から電話があった。未知のお方で、宮坂勝画伯のことを聞きたいという。私は知らぬわけではないが、作品をいくつか持っているわけでもなく、お見せするほどの自信がないので、心もとなかった。 ▽五月連休はいい機会だからと申され、時間通り三日に…

五月

めぐすりの冷たき覚え朝がある 父祖の地に背かぬとしを相覚え 健やかに老いのポスターにじり寄る 年寄りの膝こそばゆき相手欲し 来生そこそこ消えやすき夢ゆする 悠久のなかのまたたき火花せよ 高見山さてもまるごと目を肥やし オリンピックさびしがりやの背…

四九四号(昭和五十九年5月号)

題字・斎藤昌三 表紙・石曽根正勝 カット・丸山太郎信濃雑俳書解題 矢羽勝幸 (1) (十九)はいかい ひな言葉(三) 川柳越後志拾遺(十) 西原亮 (9) 【南蒲原郡中之島村】渡りをうった池大納言 江戸川柳研究小史(七) 阿達義雄 (12) 西原柳雨を…

四月

▽街路拡幅十周記念祝賀が町内で行われることになった。どこの家でも建て直したり、少し引き削ったり、町の発展のため協力し合って今日を迎えた。あれからもう十年になるかと振り返る。 ▽うちでは建て直すことにして、保管物の整備の必要を感じ、各地からいた…

四月

目覚めれば素直にいのち温かく 好奇心老いのみちのり少しある 暁闇のしずけきいのち打ち返し 燃えよ燃えよ老いの願いのさらでだに 遅い春身につまされて齢もまた 信号の青の生きの間馴染み合い 現実にもたれては大味な証 無精髭地蔵にはない春が来て ひと押…

四九三号(昭和五十九年4月号)

題字・斎藤昌三 表紙・石曽根正勝 カット・丸山太郎信濃雑俳書解題 矢羽勝幸 (1) (十九)はいかい ひな言葉(二) 川柳越後志拾遺(九) 西原亮 (8) 【新発田市】平家地蔵 川柳人過去帳(三十六) 奥津啓一朗 (10) 江戸川柳研究小史(六) 阿達義…

三月

▽いま少しずつ雪が降っている。積もるほどではないが、北信地方は多いところで三十センチになる見込みと報道されていた。 ▽雪が降る割りに気温はそれほど低くはないが、松本は雪のない代り、軽井沢や諏訪と同じように寒気はきびしい。零下以下が百日つづいた…

三月

億万の倒産を聞く隔て過ぎ 倒産の下の生ま身の群がり束 弱小をあざけるごとく派手な落ち 飛ぶ鳥をおとせず小さき身の上よ 見限らずせつなきまでに流れゆく おどろおどろこの世を享けて問ううたぞ 老熟のはやき目覚めの律儀よな いつか別れの日は疎み老夫婦 …