十一月

▼足元の暗くならないような時間で会合を閉じたいという希望が、ちょいちょい耳に入るので、思い切って昼間開会することに決めたし、またウイークデーの方が何かと好都合だという者もいて、或る日を選んで集まった。
▼土曜日とか日曜日とか、週末の休みを考えて、長くやってきたけれど、上役を仰付かった手前、講師を頼まれ他へ出張することになる身分の者もいて、週末には出席しかねる。
▼卒業当時とくらべて随分減ってしまった。見る見る名簿に黒星が増えてくる。言い合せたようにさびしがるが、これは時の流れにまかすより仕方がなさそうだ。
▼一人ずつ順繰りに自己紹介を兼ねた寸話が披露された。中学校の卒業記念に仲の良い友達と三人で写真を撮ってもらった。真ん中にいるものは人形をポケットに入れて、四人に見立てる気配りを、何だ、俺はそんなことにこだわらぬから、人形はいらないと頑張って撮った。両側になった二人の友は惜しくも三十そこそこでこの世を去ったのに、三人の真ん中が早死する迷信を吹っ飛ばした自分はいまこうして生きている、何と皮肉なものだと語った人がいた。
▼教職にあって数学を教えた友人は、職を退いて悠々自適とはいうものの、先ず二時間は数学の復習し、そのあと二時間は囲碁の勉強に打ち込み、そして昼寝をしばしむさぼるという。そして今まで終始、不平を言ったり、言い訳をくり返したが、今後は不平を言わない、言い訳をしないをモットーに暮らすよう心掛けてると結んだ。
▼締めくくりが近付いた頃、校歌を合唱することになり、テキストの有無を問う者が出たが、全部歌唱の覚束ないことはわかっていたので、歌い出すとみんな大声を発し何となく一節で終わった。二節の歌を知っている者も、自分だけやるのが億劫だったのだろう。
▼怒鳴ったり騒いだりする様子はない。誰もかも平静で、おちついて境涯にいそしむ日常のようだった。来年を期して会うべく今度は声を荒立てて励まし合うのだった。
▼まさしく、雀色時にまだ早いたたずまいが、明るく取り巻いていた。