十月

   この胸の底のあはれを知る酒よ


   おしやべりの酔ひのちからはお人好し


   盃にこもれる深さただならず


   友ありがたや座を立たず酔ひ給ふ


   さかしらに言葉の花火散る酒で


   親一人ありそのゆゑの酒のしみ


   たましひの抜けゆく安堵あつて酒


   わが齢にふれ合ふ酔ひのめでたかり


   子を並べ妻一人あり酒を倒す


   酔眼に灯がまばたけば人生か