十月

▽私も関係してゐる松本ペンクラブ会員の北沢喜代治さんの小説集「日之島の女」出版記念会が十月十四日に開催された。北沢さんは宇野浩二氏と永い間親しくしてをられ、この日宇野さんも見える筈だつたが、急に身体の調子が悪くなつて来られなかつた。文学を愛好する人たちまた北沢さんが学校の先生だつたから教へ子の顔も見えて賑はつた。私も指名されるまゝお祝ひの言葉を述べた。
▽家へ帰つたら面識のある愛知県立女子短期大学の市橋鐸さんが訪ねて来られたことがわかり逢へないですまなかつたと思つた。この日、長野市で開かれた俳文学会全国大会の帰途だつたのだ。
▽翌十五日、予ねて打合せておいた東京女子大学の古川久さんが滋賀大学の宮田正道さんと伴れ立つて来て下さつた。宮田さんは本誌に執筆してくれたことのある方だが、初対面で、逢ひたいひとに逢へて嬉しかつた。教鞭を執つてをられる学校が嘗て私も学んだことのある学校なので一層話に身が入つた。
▽十六日は古川さんが再び来られ、私は松本天主会教会へ案内した。明治二十三年十月に宣教師として松本に赴任、二十五年一旦帰京し又復任し、二十九年八月まで居た仏人ノエル・ペリーといふ人の逸話などの調べを基礎づける為である。ノエル・ペリーは能楽について造詣が深く、なほ日本で始めてオペラ上演を指揮したといふことである。いづれ古川さんが詳しく研究発表することだらう。