五月

     近什

   ベレー帽智恵の孤独の暗き部屋


   白壁の梅雨のしめりに置く別れ


   うすい鞄税吏は出世へと急ぐ


   ネクタイが首を巻く風そんな恋


   のがれゆく紙幣の羽くろずむばかり


   下手な横好きへな〱と坐らされ


   習性に甘へる花もこちを向く


   健やかである退屈さ雨が漏り


   こそばゆき不倫の足の裏を拭く


   去るものは追はず小高き山が見え