十一月

   遠く降るは雪か敗れし眸を読ませ


   イヤリングはづす空虚を嘗めて来た


   雲はひとつにならうとする誰も拒まず


   手袋の穴去つてゆく愛の雫よ


   冬木並ばせ暴言を救へない


   世に負けゆく肌か松すつくと立ち


     その後

   父の余命ふゆの流れにただよはせ


   父はこの世の夢として粥の味


   父の息付きのなかに自分をさらし


   父が歩んできた道ひとり谺す