四月

▽しなの川柳社句会では研究互選を一題出す。初めは席題だつたが、此頃では慎重を期すべく自信ある作品への過程を与へようと宿題として時間を呉れてやつてゐる。一句。番号をつけて全作品を張り出す。ゆつくり出句者は目を通す。佳句に選んだもの一句、平抜に選んだもの一句を番号をつけ記名して差出す。それは一応伏せて置く。
▽司会者がゐて番号順に一句々々を検討して意見を述べさせる。その意見をまた他の人が批判する。かうあつてほしいと句語の不完全さを指摘したりする。新傾向な匂ひがあるといふもの、いや飛躍し過ぎて作句以前の問題の句だといふもの、論議が展開して熱が入る。新人も先輩に負けられぬ。
▽全作品をそのやうに照明をあてゝ置いて記名した採点句を発表する。句の下に記されてゆくが、佳句に選んだ人はどういふ選句眼で佳句としたか、説明せねばならぬ。みんな耳を傾けて聴く。司会者のユーモアを含めた運びかたが、進行的になごやかなうちにも作品への批評眼を育てゝゆくことにもなる。
▽たつたひとつの傾向にだけ妥協するやうな危惧に陥入らぬために、広範な自由なおほらかな川柳としての場を享け入れるお互ひの度量がかもす雰囲気を上昇するに主催者の責任がある。
▽この方法をしなの川柳社では早くから実行してゐる。昭和廿三年に東京から三星子、伊太古、句六、佳宝、汐風、汐路、修平さんたちがわが句会に出席し研究互選の運営に関心を寄せた。