1956-03-25 三月 月々の句 近什 老父微恙の三月 八十二全きほどに横たはり 寝て叱咤する老来の気を許し 老いの手のなほ指揮するやみな負かし 子を随へ孫を並べて病んでゆく かばかりの老いのひがみの夜半の酒 酒欲しと言ふ老いの瞳と合せゐし 一升瓶眺め安堵の老いに落ち 老い呆けの見事にも人集らせ 感慨のもたつくばかり老いゆく日 隠嚢の無為もめでたく老いのうち しほらしき老いの願ひを聞きとらせ 早春に老樹の夢をつながせむ