1956-09-25 九月 月々の句 老い父よ長かれ おしめ代へて老いの好日めぐるなり かばかりの寝酒の満てる五体あり 人欲しき部屋にて老いは孤独とも 遠き記憶かへらぬ舌の短かしや 呆けて寝よ口開けて寝よ老樹たり 憎しみを越えたるぞ老いは全し 臥して手を眺むる歴史ちさきよし ひとときは昂ぶりて後の寝顔見よ 死はさびしやと老いの口言はしむる 入歯を忘れひとの世は花咲くばかり