四月

   もうすんだ話に緩むわが枕


   おん身大切ぬくとくも小手かざし


   脱け出して生ま身にいつか気づくとき


   持ちかえしなおもこの世にかかずらう


   遠くない道ゆるやかに満ちくるか


   熱戦のドームを叩く雨の恣意


   髭を立て髪の手入れの意志は問う


   ステッキと杖との違い修羅を縫い


         (上海列車事故

   思いきり哭くしのび泣く早春の闇


   老いのいのち若きいのちの顔ならず