十一月

   ちちははの齢に思いつき朝の寝覚め


   ハンケチのくしやくしやひと知れぬ賭


   掛軸にこころの隅を見せてしまう


   犬が仔を生む夜のしじま自分に来る


   犬の鼻湿つてやすらぎをととのえ


   人のとが見過ごし小鳥籠明るく


   酒にがく氷雨は罪をあかしゆけ


   みにくさの向うに吹雪せよと思う


   生きてこの峠に立つ遠きはじらい


   人を許すあざやかさ雪あてある如く