九月

     旅とわれは

   縋る身がみちのくの夜の秋にしずめ


   津軽と下北の間の海を渡る星


   果てと思い来てなつかしや顔並ぶ


   石中先生と会いたし旅は気散じな


   ねぶた幻想土のぬめりの人くさし


   雨ぞ降る十和田湖の名を求めゆく


   せせらぎの名札目に入る旅愁なり


   裸婦像のほどほどに濡れわれも濡れ


   ひたすらに旅の想いを湖で聞く


   遠く来て湖の別れの灯が点いた