十二月
年の瀬に追われるようになると気忙しく、何かとあわただしさが増す。仕残したことが気にかかりながら、さてどれから始めようかと思う。
さしずめ年賀状書きから手をつけようと、ちょっとした時間に机に向かう。手書きの文章、住所氏名が何よりも大切だが、ついなおざりにして印刷する。
アイウ順に分類してあるから、それに合わせてしたためる。故人になった思い出にもつき当たってちょっと筆を休める。
ああこの友人は海近くに住んでいるのだなあ、こちらは山国で相手も懐かしく他郷を想起しているかな。
某日、年賀状展を二階で開催し古きよき時代を顧みつつ、一日のご清遊をと宣伝文句にした。
来年は未歳だから、蒐蔵してある年賀状の昭和十八年のもので並べて見た。羊の図柄の版画の関野準一郎さん、賀戦勝之春とあり時代相がうかがえる。
参考に昭和十四年をさがしたらさとうよねじろう(版画)・宮尾しげを(兎図)・武井武雄さんは喪中欠礼で寒中見舞の牝兎がかしこまる。
昭和三十年未歳では前川千帆、楠田匡介、重本光、小谷方明、岩佐東一郎、松下井知夫、林家正楽さんのみんな趣向を凝らしてある。
昭和四十二年にもお歴々あり、昭和五十四年では磯部鎮雄、茂野一郎、松本信孝、臼倉寿夫、今井柳堂さんとつづく。
番外で川上三太郎、富士野鞍馬、三條東洋樹、山根梟人、岸本水府、安藤笑洞さん川柳入りの嬉しさ。
そのほかに石井柏亭、木村辰彦、滝川太郎、関四郎五郎さんの画家。
棟方志功、川上澄生、小西英、山口源、平塚運一、武藤完一、板祐生、市橋鐸、森山太郎、今村秀太郎、斎藤昌三、丸山太郎さんらが顔合わせ。
とても楽しかったという感想をもらしてくれた人があって、また来年を目指したい。
年々歳々花相似たり、年々歳々人同じからず、また新しい年を迎えようとしている。
この次の未歳には何歳になるのかなと、指折りかぞえて見ようとも。