六月

 梅雨期に何も合同句会を開催することはあるまいと思っていたが冬から覚めた四、五月は入学だの連休日だとせかせかする月だから六月あたりが差し当たりよさそうだ、みんな言い合って決まった。
 昨年の第一回も六月、運良く雨に会わなかった。ことしの天気予報で九日の雨は一週間前から決定的、もうあきらめていたのに、当日はからりと晴れ上がっていい天気だった。たまには外れることがあると見える。
 その翌日も快晴、二、三日は続いた朝、郵便小包が届いた。開けたら朴葉巻きのお土産である。木曽の実家に帰ったら朴葉巻きが懐かしくお菓子屋さんから買って下さった。木曽谷の端午の節句には若い頃、母が朴葉、いぐさなどを揃え、多量にこしらえたとき、よく手伝ったとのこと。
 饀の入ったお餅を葉でくるみ、この葉が見事に大きいもので、蒸し上がる朴の葉の香りがよく、またいただくときも残んの香があっておいしい。今では家庭でつくることが珍しいようである。
 或る突然珍しく友人が見え、いま松本図書館へ行って見て来たが、君が寄贈した川柳雑誌を幾回かに分けて自宅に持ち込みたい、いずれ図書館から要請があると思うが諒解してくれと言うのである。
 諸誌に掲載された古川柳記事をまとめるために、松本に滞在は大変だから、遠方でも借りて行って調査するのである。
 この紀要を本誌創刊号からしたい申し込みはあったが、丁度「本誌主要記事摘録」を二月号から連載しているので、それを参考にして貰うことは諒解ずみだった。
 一週間ほどしたら東京からこちらに回ったという友人が久し振りに訪ねてくれた。昭和初期からの既知、私より一つ上の兄貴分。
 民具、民俗に造詣深く、それに関連する著を持つ。この人が執筆し、私のところで印刷した「蔵書印の話」はまだ残っていたから、四十数年前だがと言いお渡しした。
 対談している部屋にあった食満南北の屏風、助六の絵を見て、興味深げに、この作者の逸話を明かして下さった。
 朋友に巡り合う深緑また好し。