四月

   もろく美しと触れ得ぬものの前に立ち


   わが齢をかぞえいて山いかめしき


   雨しずかに時流すすべ覚えてか


   共に生きるこの溝を埋め並び給え


   中年に救いの言葉散らかるよ


   山ぐにに山あるたしかさと生きる


   腹を減らすかたくなにこのわざに組し


   黒髪は濃く遠き倖せありとする


   陽にふとん干す平凡のたがわざる


   裸像に降る雨の素直さ返るなり