十二月二十二日

   水おけへ斧を切つこむ木曽の冬

            (田舎樽)



 正岡子規の『かけはしの記』に「やうやう五六里を行きて須原に宿る。名物なればと強ひられて花漬二箱を購ふ。余りのうつくしさにあすの山路に肩の痛さを増さんことを忘れたるもおぞまし」とある。小箱の中に桃や桜杏や李、いろいろの花を塩漬にして詰め合わせたもので茶碗に入れて熱い湯をそそぐとパツと花が開いてそこはかとなく花の匂いが春を思わせる郷愁をにじみ出させてくれるのである。木曽の冬に旅の記憶をたどるこよなき花漬のいとけなさよ。
 きようは冬至。一年で一番日が短い日である。そんなとき春の日永を逆にこがれる。この日、南瓜を食べる。珍しい野菜を供物とする習わしにあやかる。