十二月十二日


   馬士唄は雲の上まで引出され

            (柳のいとくち)



 逢坂の関の清水に影見えて
     今や引くらん望月の駒
          紀貫之拾遺集
 逢坂の関というのは近江国にある。毎年献上に馬を引いてくる人たちをここで迎えた。それを「駒迎い」というが、信濃国からも八十頭、そのうち一番多いのは望月の牧からであつた。
 望月の牧というのはいまの北佐久郡望月町の御牧ヶ原、周囲二十四キロにも及ぶ広大な地域で、このあたり信濃国十六牧の中では一番大きい牧野であつた。
 この句、雲居の宮に献げられるをいう。