十月六日

   更級の蕎麦も久しい願ひにて

           (武玉川 一〇)




    信州信濃の 新ソバよりも
      わたしや あなたの そばがよい
 この俗謡と共に、昔から蕎麦といえば、すぐに信州を連想するほどに世にもてはやされている。
 交通の不便であつた頃、そのなかでも更級地方でとれるものが中央への移出にキツカケをつくり、またこの更級という地名が、古くより月の名所としてよく世に知られていたので、その産地名で聞こえるようになつたもので、精白した一番粉を「更科」と呼んでいる。