十月七日

   関守も夜はふく島の鹿の宿

          (俳諧ケイ 二三)



 関所の役人も夜になると、昼間の旅人の取調べが一段落し、ひつそり猟師が鹿を呼び集めるあの鹿笛を吹いてさびしさをまぎらかすといつた句。「ふく」は「吹く」と「福島関所」に掛けている。
 木曽谷の福島関所は中仙道のほぼ中央にあつて重要な地位を占め、東海道・中仙道両街道の箱根・新居・碓氷と共に、四大関所のひとつとして知られたもの。
 殊に箱根の女改めとこの福島の鉄砲改めは特にきびしかつた。新しくできた国道の山手にその跡があり、うしろは山、前はがけ。