七月二十四日

   ぼたもちをこわ〲上戸一つ食ひ

              (柳多留 一六)




 北佐久地方の民話。
 明神さまの縁の下に寝ていると、山の神さまや八幡さまがやつて来て、いろ〱打ち合わせてゆくのが夢うつつに聞える。「いま子供が生れたが、寿命は七つで可哀相だ」耳を疑う不吉な話である。それから長い年月がたつて、ふと気がつくと神さまのあの会話の日がきようとわかつた。スワ大変とその子供の家に行つて一部始終を語ると親たちも心配。そこへ子供が帰つて来て「魚を釣りに行つたら小僧がぶく〱出て来て相撲をとろうという。腹が減つていたときだつたので持つていたぼた餅を一緒に仲よく食べた。その小僧がいうのには「おれは人間ではない。河童だ。いつも相撲をしかけては川へ引込むのだが、ぼた餅を腹いつぱい御馳走になつたからお前は許してやる」おれはこわくなつてあわてて逃げて来た」「よかつた、よかつた、そのぼた餅のせいで命が助かつたのだ」とみんなで喜びあつた。
 河童といえば画家の小川芋銭と、小説家の芥川龍之介を思い出す。龍之介は河童の絵も画いたが、冒頭に上高地が出て来る小説「河童」がある。河童の国を通して暗鬱な心象風景の戯画とされている。
 きようは芥川龍之介忌。